第12話
少女と向き合った新一は少し緊張した様子を見せていた。
それを見ていた少女は少し笑みを浮かべながら話す。
「まず先に自己紹介をしなければな・・・私はこの寺院の主ラルムと申します」
「初めまして・・・自分は竜神新一と言います」
そう言って新一は頭を下げ、それを見たラルムも軽く頭を下げた。
「時に新一さん・・・貴方は、この世界に付いてどの程度理解しましたか・・・?」
「ほとんど解らない事ばかりですね・・・気候も、環境も・・・自分の知識の領域を超えて居ます」
「そうですか・・・では、私が知っている範囲を少し説明しましょう・・・」
「はい」
「まず・・・この世界には太陽が二つあります。主星と伴星が存在するが・・・交互に日が昇る様な事は無く。同じように日の出と日没を繰り返しています。その太陽ですが・・・主星が遠くにあり、伴星の公転にに会わせて、私達が住む星が回っている。その為・・・1年の公転周期は約400日で1日の自転周期は25時間となっているのです、この世界は1年の暦を14月に合わせて活動を行っているのです・・・」
「なるほど・・・」
新一は感心しながら話を聞く。
「さて…アルゴンの月に付いて説明します…この星では、月が二つあり…交互に月が現れてます。一つの月は満月の夜を青く照らし…もう一つは満月の夜を赤く照らすのです…。その二つの月が数十年に一度同じ晩に夜を照らす時…紫色の闇になる現象を、昔から我が村ではアルゴンの月と呼んでいるのです。その月の晩に生まれた者や、若しくは生まれた者に導かれた者は、村を救済する者と…古くから伝えられています」
ラルムの話を聞いて新一は少し身震いした。
「ぼ…僕が村を救う…と言うのですか?」
「古くからの習わしなら、そう言う任を行える者になるでしょう…」
「そんな、人助けすら…した事は無いのに…」
「伝記書に書かれている英雄等も、世に名を残す前は普通の人だったのが大半は普通の人です。まあ…村の住人達も貴方に期待等はして居ないでしょう。ただ、いずれ事が起きる時には、御主が…この村を救う何かを起こすかもしれない…と、覚えて置いて欲しいですね」
それを聞いて新一は複雑な気分になった。
「さて、私もする事があるので…ここらで、お開きにさせて貰いたい」
「あ…はい、分かりました」
二人は立ち上がり寺院を出て行く。新一は(また…この階段を歩くのか…)と、思った時に、「新一さん…」と、ラルムが声を掛ける。
「階段を登って来たのですか?」
「ええ…そうですが…」
「次からはコレを使うと良いですよ」
それは文様が刻まれた石で、先端に穴が開いて紐が通してあった。
「これは?」
「移動用の部屋で使う物です、ホラ…向こうにある箱形の建物」
そう言われて、見ると…役所に行く時に使った箱の様な物が寺院にもあった。
「使い方を説明しましょう」
ラルムが一緒に箱の中に入る。そして盤の所に小さな穴が開いていて、そこに石を差し込み、横にあるレバーの様な物を手前に引く。
ガチャンと、音がすると…ラルムが新一を見る。
「到着しました」
そう言われて新一が扉を開くと、役所に行く前の場所に着いていた。
「うわぁ…一瞬で下まで着いた…」
「これからは、これを使って来ない」
「あ…はい、でも…貴女の分は?」
「私のは、あります…」
そう言ってラルムは、自分用の石を繋げた物を見せる。
「それよりも貴方…あまり私と一緒で無い方が良いかも…」
「え…?」
新一が返事した時だった。
「ねえ新一…」
後ろから聞き覚えのある艶やかな声に気付き、振り返るとフィアナの姿があった。
「あ…やあフィアナ、お帰り…」
「ただいま…貴方、ラルム様と一緒だったの?」
「まあ…ちょっとね」
ラルムは二人を見ながら
「では…」
と、言い残して箱の中へと入って行く。
「あの方に何か言われたの?」
「いや…特に何も…」
「あの方は、未来を預言する能力があるのよ…」
「へえ…そうなんだ、それにしても…君よりも若いね」
「そうかしら…あの方は、ああ見えて既に年齢は百歳を越えているのよ…」
「はい?」
新一は、この世界に来て…また新しい謎が増えた…と感じた。
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