第13話

 ー数日後…


 新一は村のパーティに誘われた。村中の様々な獣人達が集い、楽しくお喋りしたり和気藹々と食事や酒等を飲んだりしていた。フィアナよりも年下の子供獣人達も沢山見られた。


 彼等の面倒や躾は、フィアナ位の年代の少女や少年達が行って居た。


 楽しそうにパーティをしている傍ら、新一も同じ様に彼等の列席に並んでいると「失礼」と、彼に声を掛けて来る人物がいた。


 ふと新一は声を掛けて来た者を見る…。フード付きのマントを被り、フードの切れ目からネコミミがはみ出ている。顔は口元を布で隠していて、素顔が見えない。マントの下から尻尾を垂らしていた。


 風変わりな人物に気付いた新一は、不思議な表情で彼を見た。


 相手は新一の耳元で囁く様に声を掛ける。


 「アルティム族に付いて少しお話をしたい事があるので、御同行を…」


 その言葉を聞いた彼は黙って頷き、席を立った。それに気付いた母が「どうしたの?」と、声を掛ける。


 「ちょっと、向こうの景色を見てきます」


 新一はその場しのぎで適当な事を呟いて、風変わりなマント姿の人物を追い掛ける。

パーティ会場から少し離れた場所まで二人は歩いた。森の茂みの中へと入ると、彼は既に半壊状態の古い建物を見つけると「こちらへ」と、手を差し伸べて、新一を建物の中へと誘い込む。


 古い建物は埃塗れで、湿気が酷かった。


 彼はマントの中から、不思議な珠を出した。珠に軽く手をかざすと球が光出す。眩い光が室内を照らす。それと同時に室内は、整然とした神秘的な美しい空間へと移り変わった。


 「これは一体…?」

 「改めまして竜神新一様」


 軽く一礼した彼はフードと口元の布を取る。ネコミミは飾り物で、その下から現れた顔は、自分と同じ人間の男性の姿だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る