第10話
来た道を戻って行き、電話ボックスの様な建物から出た新一は外に出て、日差しの眩しさを感じた。たまたま空に雲が掛かっていたので、空をもう一度見上げると…雲の中には太陽が二つある事に気付いた。
(連星…?)
学生時代、天文学者の教授から聞いた話しを新一は思い出した…。ほとんどの恒星は誕生する過程で、主星と伴星として誕生すると聞いた事があった。逆に太陽系の様に恒星が単独である方が珍しい…と、教授は言っていたのを思い出した。
(恒星が二つあると…夜が来ないのでは?)と…新一は思ったが、昨夜は普通に夜を迎えたし、現在も外気温は暑く無いので…生活する過程で問題は無いと感じた。
太陽が二つあると知った事で…。改めて自分が現在居る場所が何処なのか全く分からなくなって来た。未来の地球なのか…それとも、天の川銀河の何処かなのか…?もしくは…他の銀河系の何処?
ひょっとしたら…別次元のとの空間が貫通して、その空間から別次元の世界に抜け出たのかもしれない…。
いくら考えても現時点で分かる事は限られていた。それよりも先に寺院に向かおうと考える。
新一は寺院がある山に向かって歩き始める。田舎らしい穏やかな雰囲気の中、一人歩き続ける新一…。途中、獣人達とすれ違ったりもした。
しばらく歩き続けて、ようやく寺院がある山の麓まで辿り着いた。新一は山の手前にある石階段を見て絶句した。石階段は山の山頂まで伸びて居る様で…相当な数の階段があると思われた…。
「一体…何段あるんだ…?」
新一は過去に熊本県の釈迦院や…、スイスにあるニーゼン鉄道というケーブルカーに併設されている階段を上った経験はあるが…体育系では無い彼は、運動があまり得意では無かった。
階段を登り始めて…約三〇分程で新一は息切れし始めて来た。
(こんなに階段があるなんて聞いて無かったぞ…)
ヘトヘトなりながら、新一は階段を登り続けて行く。
数時間程して、やっと山頂付近に辿り着いた…。
山頂には大きな門が聳え立っていた。古風の形をした立派な門で、木材で無く砂岩で作られた大きな門だった。
相当な歳月が経過している様で、門に年季が感じられる…。門には扉が無く常に開いた状態であった。新一が目を入口に目を向けると…寺院の前庭を清掃している獣人の娘がいた。
娘は新一がヘトヘトになって寺院に現れて来た事に気付いた。見慣れぬ人物が門の前で座り込んでしまっている姿を見て驚き、釈に水を入れて新一の元へと届ける。
「お疲れ様です、どうぞお飲み下さい…」
「ありがとうございます…」
釈に入った水を新一は飲み干す、その水は不思議な味がして…。階段を登ってヘトヘトだった体から疲れが癒えた。
「アレ…?体が急に元気になった…!」
新一は、起き上がり自分の体が急に元気になった事に驚いた。
それを見た獣人の娘は微笑みながら話す。
「この山の湧き水です。天然の水で疲労を回復させてくれるのです…」
「へえ…凄いね」
新一は目の前にいる獣人の娘を見た。可愛いらしい容姿で、黒色の髪をしていて…ネコミミとシッポも黒色だった。フィアナの様な童服で無く…袴姿を着込んでいた。見た目からして…まだ幼い感じがした。
「ところで…貴方様は、我がレグルス寺院に何か御用ですか?」
「あ…えっと、アルゴンの月に付いて、話しを聞きたくて来ました…」
新一は少し戸惑いながら答える。それを聞いた娘はクスッと笑みを浮かべながる。
「そうですか…では、寺院の中へどうぞ」
「あ…はい」
娘に連れられて新一は寺院の中へと入って行く。
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