第6話
フィアナは家に戻ろうと足早に歩いて行く。その途中…物陰から家の中を除く人影に気付く、フィアナはその後ろ姿を見て溜め息混じり相手に声を掛ける。
「何をしているのよルミラン?」
その言葉にビクッとしながら驚いたルミランと言う男性は振り返りながらフィアナを見る。
小柄なフィアナと比べて背丈が大きくいルミランは、黒色のネコミミとシッポを生やしていた。
「お…お前、何でアルティム族の人間なんかを家に連れ込むのだよ!」
「そう言う理由で、他人の家を除くの?」
「そうじゃ無いけど…もしヤツ等が村を襲ったらどうするのだ!大体…アイツ等は魔術を使って、オレ達を苦しめるのだぞ!」
「心配しなくても大丈夫、新一は貴方が考えている人間では無いので…」
「お…お前、アルティム族の人間と名前で呼び合う程の仲なのか、オレがいるのに…!」
「貴方とウチが何時恋人になったのよ?」
「ウウゥ…」
ルミランは何も言えずに困った顔をする。
「言う事が無ければ、これで失礼するわね」
「お…オレは、まだお前との関係を諦めたワケでは無いからな!」
それを聞いたフィアナが振り返りルミランを見て言う。
「悪いけど…ウチは、貴方だけにはシッポを触られたく無いのよ」
「ウウゥ〜…」
フィアナは、気落ちしたルミランの姿を見ずに家へと向かう。
家に入ると父親と新一が酒に酔った状態で話に盛り上がっていた。
「オウ…我が娘、良く帰って来たな」
父親が酒を飲みながら言う。
「ちょっと…お父さん彼に酒を飲ませたの?」
新一が大分酔った状態でいるのをフィアナは見た。
せっかくの初夜を迎えようとしていた少女は、相手が酒に酔った勢いで抱かれるのは、少しばかり抵抗があった。
「聞け娘よ、彼はチキューと言う星から来たのだぞ!」
「お父さん、チキューじゃ無くてチキュウですよ」
笑いながら新一は言う。
「何が違うのだ?」
「呼び方のアクセントがちょっと…」
2人が話をしてる中、フィアナはテーブルに着き1人食事を始める。
「で…何だっけ、二本と言う国にいたらしい…」
「二本じゃ無くて…日本です」
「なんか解りにくい説明だな?」
軽く食事を済ませたフィアナは、無言で立ち上がると新一の手を掴む。
「おい、彼を何処へ連れて行くのだ?」
「彼はウチと大事な用があるので…これで、おしまいよ」
「なんだよ、じゃあ…ワシも一緒に行こうか?」
「お父さんは、絶対入って来ちゃダメ!」
「え〜…何で?」
それを見た母親が、父の頭を小突く。
「アンタね、少しは娘の気持ちを考えなさいよ」
「はい…」
空き部屋に行った2人、フィアナは出入り口の戸を閉める。
「そう言えば…この部屋ベッドが無いよね」
新一は酔った口調でフィアナに言う。
ベッドなら…そこにあるわよ、フィアナが部屋の片隅を指して言う。
「え…どれ?」
「これよ」
フィアナは白い布の塊に手を掛ける。フィアナが塊を転がすと…塊はクルクルと回転して、目の前に大きなベッドが現れた。
「スゴいね」
新一は驚きながら言う。
「そうかしら?」
新一は出来上がったベッドに横たわる。フィアナは出入り口に鍵を掛けて衣服に手を掛けながら新一に向かって声を掛ける。
「ねえ新一…ずっとウチの側に居てくれる?」
その時、後ろから「グ〜ッ」と、寝息が聞こえる。
振り返ると…新一が酒に酔った勢いで眠ってしまっていた。
「もう…すぐに寝れないでよね!」
フィアナは、不機嫌そうにベッドに潜り込み新一の隣で眠った。
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