第5話
彼もまたネコミミがあり、シッポが生えている。それに付け加えてヒゲも生やしていた。見方を変えると…まるでライオンの様にも思えた。
彼は、食堂に用意されている干し肉や果実類などをムシャムシャ…と食べながら新一の方をチラッと見ると、木製のジョッキを新一に差し出す。
「お前…飲めるか?」
「は…はい」
新一が答えると、食堂の横に置いてある壺の2人を開けてシャクを入れ、ジョッキに注ぎ込み、新一に差し出す。
「飲め、遠慮はいらん…」
渡された物を一口飲むと、新一は驚いた。差し出された飲みもんは果実酒だった。それもかなりアルコールの強い果実酒である。
「もう…食事前から、お酒は辞めてよね」
「フン、酒が無けりゃメシは食えんのさ」
「ツマミもほどほどにして欲しいわ、全く…」
「ああ…分かった、控えるよ」
そう言いながら父親は新一を見る。
「お前さん、なかなか良い飲みっぷりだな」
少しニヤけた表情で父親は新一を見る。
「結構美味しい酒ですね」
「そりゃあ、そうだ…俺様が作った酒出しな」
父親は笑いながら答える。
「気にいったぞ、お前さん…今度一緒に美味い酒を作ろうか!」
父親は新一を隣に招き彼の肩を叩きながら言う。
「あら…まあ、貴方…主人にも気に入られてしまったわね」
母親が苦笑しながら言う。
母親がテーブルに食事を並び終えると3人で食事を始める、その時…フィアナの姿が見えない事に気付いた新一が母親に話し掛ける。
「そういえば…フィアナは、何処に行ったのですか?」
「あの娘は、今身体を洗いに行ったわ。先に食事していて…と言ってたわ」
「食後に身体を洗えば良いのでは?」
「乙女は見出しなみが大切なのよ。あまり変な事言うと娘に嫌われるわよ」
そう言いながら母親は新一の向かい側で食事を始める。
「ところでよ…お前さんは娘の何処が気に良ったのだ?あまり言いたくは無いが…我が家の娘は母に似て偏屈者で、更に良い年してペッタンコだしな…悪い事は言わねえ、もっと他の可愛い娘を探した方がイイぞ。何なら俺が若い娘が集まる場所を教えてやってもイイぞ…」
父親が小声で言うと、母親が拳でテーブルをドンッと叩く。
「ちょっとアナタ、せっかくフィアナが連れて来た未来の旦那に変な事を吹き込まないでくれるかしら?」
「イヤァ、俺は単に彼に世間の常識と男性社会のマナーを教えようとー」
言葉を続けようとした父親に対して、母親が木製の皿を投げ飛ばし、ガンッと音を立てて見事に父親の顔面に直撃する。
新一は変わった夫婦生活の一場面を見て少し呆気に取られていた。
フィアナは乙女達が使う温泉に入り、身体を洗っていた。フィアナと同じ年齢の若い少女達も楽しそうに身体を洗い流していた。
フフ…とか、キャッキャッ…と、愛らしい笑い声が響く。
大きく膨らんだ胸をした可憐な乙女達が、温泉に集まり微笑ましい顔をして体を洗いに来ていた。
その中の1人がフィアナに話し掛ける。
「アナタ…随分変わった殿方を連れて戻って来たわね」
「あ…気付いた」
「ええ…今、村中のウワサのなっているわよ」
「アタシも聞いたわ…アルティム族じゃないかって…言われているよ。大丈夫なの?」
「彼は、アルティム族じゃ無いわよ」
フィアナは真剣な表情で言う。
「でも…不思議ね、アナタって中々恋人が現れなかったのに、いきなり男性が現れるなんて…」
「本当、そうよね…村の娘は大体早い時期には相手が見つかるのに、フィアナだけは相手が居ないままだったからね…」
「まあ…今まで見つからなかったのは、彼がウチの前に現れなかったからよ」
「そうなんだ…」
少女の1人が微笑みながら答える。
フィアナは身体を洗い流すと温泉から出て、衣服に身を包むと「じゃあね」と、言って皆と別れる。
それを見ていた少女の1人が真剣な眼差しでフィアナを見ていた。
「でも…大丈夫かな…」
「どうしたの?」
「あの子って…確か、アルゴンの月の子でしょう…」
それを聞いた、もう1人の少女が「アッ!」と、声を出して驚く。
「そう言えば、そうだったわね…」
「何か…預言が、本当に起こりそうで…アタシは怖いわ」
少女は顔を半分湯に潜らせて、困った表情をする。
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