第4話

フィアナは門を叩くと、近くの木の窓が開き門番が顔を出した。

新一は門番の男性を見ると、彼もまたネコミミがあった。


「オウ…何だフィアナか、随分遅い帰りだったな…」

「ちょっと…べルマに襲われちゃって、何とか助かったのよ。申し訳ないけど開けてくれるかしら…?」

「それは大変だったな…無事に戻れて良かった」

「ええ…まあ…」

「今開けるから待ってくれ」


門番が窓からいなくなり、しばらくして目の前の門が音を立てながら開き始める。


ゴゴゴ…


大きな扉が開くと2人は門を潜る。分厚い扉の中を新一が通る時…門番が新一を見て声を掛ける。


「ちょっと、そこの異国の衣装を纏った方…通行許可証は、お持ちかな?」

「え…有りませんが…」

「じゃあ…ここを通す訳にはいかないな、今直ぐに帰って貰おうか」


そう言って門番の男性が槍を持って近付く。


「やめて、彼はウチの恋人なのよ!」


それを聞いた門番が目を丸くしてフィアナを見る。


「ほ…本当に?」

「ええ…本当よ」


そう言ってフィアナは新一の腕を掴む。


「彼がウチの尾を触った感触が、ウチを無心にさせてしまう程の物だったのよ。だから彼はウチと一緒にこの村で暮らすのよ」


フィアナは、新一を側に寄せて顔を彼の肩に乗せる。


「し…信じられない、まさか異国の者が貴女の恋人になるなんて…」


門番は少し呆れた声で言う。


「フフ…もう彼とウチの心は繋がっているのよ」


そう言いながらフィアナは、自分の家に新一を連れて行く。

家に向かう途中、新一は周囲を見渡した。村人達は皆…フィアナや門番と同じ格好で頭に猫耳で尻尾が生えている。

村人達は皆、新一を見ていた。


「皆…同じ仲間なんだね」

「そうよ、ここの村人は全員ウチと同じ姿なのよ」

「この世界で違う姿の人とかはいるの?」

「ええ…勿論居るわ、テルト族と言われる種族とビオラス族と言われる種族に、アルティム族が…この大陸に居るわ。彼等は皆…容姿が違うわ」

「どんな種族なの?」


「テルト族は、暗闇を好む種族で、昼間は顔を隠して居るのよ、姿は新一見たいな感じだけど…耳が尖っていて、目が細く釣り上がって居るのが特徴で、体が細く背が高いのが一般的で、細長いシッポが生えているわ。ビオラス族は、土や岩が好きな一族で、肌が茶色なのが一般的ね。丸い耳が頭の上にあって、小さく短いシッポが生えているわ…背が低いのが特徴ね。アルティム族に付いては…」


フィアナがそこまで話して…急に言葉を止めて前を見る。

そこには美しい姿の女性が立っていた。


「フィアナ…何しに戻って来たのよ」

「恋人を見つけたから、家に戻って来たのよ…お母さん」


(お母さん?)


新一は目の前の女性を見るが…まだ若い感じがした。彼女もネコミミがあり、シッポが生えている。


「ふうん…」


そう言って女性は新一を見る。


「恋人って、彼は異国の人間じゃない。まるでアルティム族の人間のようね…まさか、貴女アイツらの素性を知らない訳では無いでしょうね?」

「知っているわよ、アイツらの事くらい、でも…彼は別の種族よ、ウチは彼に心を奪われたのよ、彼は最高の人なの!」


フィアナの真剣さに少し母もたじろいだ。


「貴方…一体どんな魔法で、この子の心を掴んだのよ…」


母は新一を見て言う。


「え…と、シッポを触った感触が良かったとか…言って」

「まさか…本当なの?」


母が、震えながら新一を見て言う。


「本当よ、彼がシッポを触ってくれる感触は最高よ」


母は何か考え込む様な表情で、その場に立ち尽くす。

しばらくして口を開いた。


「分かった…とにかく今日は家に入りなさい。そちらの人も一緒にどうぞ…」


そう言って母は、少し先にある小さな家に向かう。


「行きましょう」

「あ…ああ」


新一は気になった…母とフィアナの話し合い、何か自分には知られ無い何かがあるよう思えた。

フィアナ家族が住む家は、木造の家だった。小さな作りではあるが…家族が住む上では十分な広さはあった。家に入る前の見た目は洋風かと思ったが…家の中に入った感じは独創的だと感じた…。少なくとも地球との暮らし方は、それほど変わらない…。

新一は来客者として、家の1番上に空いている部屋を用意してもらい、そこで休む事になった。


新一は部屋を見渡すとベッドが無く、変わったクローゼットや箱や壺が置いてある。毛布の塊みたいな物があり、そこに腰を乗せる。ボヨン…と、柔らかく不思議な感覚を感じた。


新一は身に付けている探検用の装備を外して少し身軽になると、周囲を眺めていた。

これまで地球では幾つかの国に行った経歴のある彼は、異世界の住居に立ち入って感じた事は、それほど地球上の建物とは変わらないものだな…と、言う事だった。

人間…と言うか、人間に属した者…と言うべきかは迷うが…生活する上では、それほど大差は無いのだな…と考えられる。


毛布の塊の上で休んでいると母親が現れる。


「夕食にしますけど…食べますか?」

「あ…はい、頂きます」


そう言って、母親に連れられて小さな食堂へと行くと、食堂には体格の良い男性が席に座っていた。多分…フィアナの父親だと思えた。

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