第1話

ドサッ…


竜神は落下時のショックで、一時意識を失ったが…目を覚まして、自分が無事だと気付くと少し安堵して胸を撫で下ろした。


彼は学者である為、天国などは信じていなかった…。今いる自分が生きているのか、死んでいるのかは…分からない、もしかしたら…黄泉の国かもしれない。ただ…一つ分かる事は、今の自分に意識がある事だけは確かであった。


ふと…目を見開いて周囲を見渡す…。シンクホールの穴の中に落ちた筈なのに、彼は、自分が青空の下に寝転がっている事に気付く。

周囲は木々が生い茂った森林の中だった。


(何処だ此処は?まさかジュール・ヴェルヌ作の地底旅行の世界が現実に起きているのか?)


そう思って彼は体を起き上がらせる。自分の周囲には落ち葉が生い茂り、目の前には蔓状に覆われた草木が伸びていた。草木の一角に大きな穴が開いているのが見えた。

自分がいる位置から確認して、その穴から竜神は、自分が落ちて来た…のだと推測出来た。そして現在、自分が現在何処にいるのか確認をしようと、そう思った時だった…。


ガサッ…


後方から何かが動く音がして竜神は振り返った。

振り返った時、彼は驚いた。


目の前にいるのが人の姿をした、年端もいかない少女の姿をした者に驚いた…が、彼の知っている少女とは、何処か違って見えた。

見た目からして、中性的な少女であるが…長く伸ばした赤茶色のストレートヘアの頭の上に、猫の様な三角の耳が2つ左右に並んで立っている。


着ている衣服は、現代人が着ている洋服では無く、日本で言うところの幕末から明治初期の庶民が着ていた童服に近いものがあった。その為…スラリと伸びた白い足が露出されている。足には木で作られたサンダルの様な物を穿いていた。


更に少女(?)の足に目を向けると、細く伸びた尻尾が生えている。

この辺からの事を考えて少女(?)が人間では無い事は伺えた。


竜神が少女(?)を見て驚いていたが…相手も竜神を見て驚いて怯えている様子であった。

竜神は少女(?)を見て近付こうとすると少女(?)は、両手を広げながら悲鳴の様な声を出して逃げ去って行った。


竜神は、顔にマスクを着けている事を思い出して、マスクを外した。


「どうやら、怖い思いをさせてしまったな…」


そう思って自分が落ちて来た穴を見ると徐々に穴は小さくなり、やがて消えてしまった。


「これじゃあ、帰れないな…」


元の世界に戻る為の機会をフイにしてしまった竜神は、少し呆れた様子で地面に座り込む。

しばらく考え込んでいると、何処から助けを求める様な黄色い悲鳴が聞こえて来た。

竜神が起き上がり声の方へと向かうと、そこにはさっきの少女(?)が木の蔓状の様な触手に捕まって身動きが取れない状態になっていた。


「★○▼▽▲△■□◆◇◎●〜!」


何か叫んでいるが、全く言葉が分からない。竜神は元の世界なら言語は10ヶ国語は話せるが…彼女の言葉は、少なくとも地球上の言語とは異なる様だった。

竜神は、あらかじめ用意して置いたサバイバルナイフを腰から取り出して彼女を救おうと思った…が、少し立ち止まった。


少女(?)は両手を縛られていて、腰を曲げた状態で立っているのだが…妙に震えが止まらない状態でいる。彼女のシッポが、まるで何かに逃げようとして左右に動いている。その瞬間…シッポを狙って後方から伸びて来た触手が口の様に開き、彼女のシッポを掴んだ。


「〜〜〜〜!」


少女(?)は、竜神には分からない悲鳴を上げた。


「ーーー!」


少女(?)は悲痛な叫び声を漏らす。

竜神からの角度からでは分からないが、それまでの喘ぎとは異なり、かなりの刺激を喰らっている様であるのは感じた。さっきまで元気そうだったシッポも、力が無くなった様に垂れ下がっている。


性感帯のシッポへの刺激も続いている状態で女性器も攻められるとなると…相当堪え難い刺激を受けていると…竜神は予想した。

竜神が助けに行こうとする時、彼女が股に穿いていたと思われる白い布が、股から落ちるのが見えた。


(これ以上は危険かもしれない…)


そう思って竜神はサバイバルナイフを手に触手を切りに掛かる。


ヒュンッ!ズバッ!


風切音と共に、蔓状の触手を切り裂く。

竜神は触手を切り裂いて驚いた。触手は白い体液を巻き散らしながら…生き絶える、しかも頭部の様なモノがあった。頭部には鼻と口があり、口には二枚の舌があった。その頭部が呻き声を漏らしながら絶命した。

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