異世界の獣人たち
じゅんとく
序
考古地質学者の竜神新一(たつがみ しんいち)は、ロシア、シベリアのヤマル半島に新たに出現したシンクホールの謎解明をしに単身でロシアへと渡った。
※シンクホール=石灰岩・地下に空洞が発達し表層が崩落して生ずる陥没孔の現象である。ウィキペディアより。
大学を出て国立の研究所に就職した彼は、理解ある博士の元で働き、輝かしい成果を見せていた。…が、今年30歳を迎える彼は最近思う様な結果を得られずに、苦悩していた。考古地質学である彼は、シンクホールの地質を調べて古代の研究にヒントが得られないか…と思い、シンクホールの穴の中を調べる事にした。
突然出来た巨大な穴は、地下の融解が主な原因である事が判明しているが…それ以上に気になるのが…その奥深くに眠る地質であった。彼は、その地質を調べる事で、周辺の気候や歴史を紐解こうと考えていた。
トルコにあるカッパドキアの様にガラス化した遺跡の様な事は期待してはいないが…調査で、何か面白い物が見つかれば…と囁かな期待はしていた。
現地の人達の協力でシンクホールに着く事が出来た竜神は、研究仲間達の協力の元、自らシンクホールの穴の中に降りて行く事を決意した。頑丈なワイヤーを体に巻き付けて、メタンガスが流出している可能性も考えて保護マスクを着用して、ゆっくりと穴の中に入って行く。
ライト付きのヘルメットを被り、灯を着けて周囲を調べ回す。周囲を見渡して石炭が侵食して出来た陥没の空洞以外に、特に珍しそうな物は見つけられそうになかった竜神は、少し諦め気味だったが…ふと、何気無く穴の底に目を向けると…何やら青白く光る物が目に入る。
(アレは一体…?)
気になった竜神は、ワイヤーを降ろして穴の底に向かおうとした。しかし…穴の底は深く、ワイヤーが届きそうに無く…近くまで行く事しか出来なかった。
(く…もう、これ以上は無理か…)
そう思って諦めかけていた時だった。穴の底から突然強風が吹き出して来た。
ゴオォー
「うわ、何だこれは一体!」
強風に煽られる竜神は、ワイヤーを留めていた金具が壁から離れてしまい、命綱が繋がっているにも関わらず、強い風力で体が空洞内を回ってしまう。やがて地上へと繋がっていたワイヤーが切断されてしまう。
竜神を巻き込んだ突風は、次の瞬間には何事も無かったかの様に静かになる。それと同時に穴の中央部まで巻き上げられた竜神も、穴の底へと向かって真っ逆さまに落ちて行く。
シンクホールの奥底にある青い光の中に、竜神は吸い込まれる様に消えて行った…。
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