第14話

俺は『闇の迷宮』の中で苦しんでいる。次々と現れるモンスター、藤野の様なソロ向きのジョブではない聖騎士は基本前衛として後衛を守るのが本来の役目……。

クエスト『闇の迷宮』は最も困難と言われるダンジョン、俺は精神力だけで続けていた。

何度も敗れ去り、最初からやり直しの繰り返し……最近は藤野とパーティーを組んでいたから余計に苦痛を感じる。

しかし、ぬるくなったものだな、ただソロの最強を目指していたころならこの程度のこと何とも感じなかたはず。

最初は気まぐれで始めたことなのにいつの間にか本気で藤野を救ってやろうと思っていた。

……多分、ここで諦めたらこのゲームを引退して藤野とも連絡を取るのを止めるだろう。

俺は少し昔のことを思い出す……そう、このゲームを始めたきかっけは死んだ妹に誘われたからだった。

妹と共に普通にパーティーを組みゲームを楽しんでいた。しかし、妹は交通事故で突然いなくなった。

妹と苦労して手に入れた『英雄の剣』今はこれが形見になってしまった。それ以来ソロで最強を目指してきた。

そして、藤野と出会い俺は変わったのかもしれな。

少し、この『運命の選択』を考えた人の事を考えてみた。パーティーを組むのが当たり前のダンジョンなのに、ひたすらソロで戦う……

ひょっとしたら! 

俺はマミから貰ったレイピアを納め、いつもの『英雄の剣』を取り出す。

「やはり、そうか……」

出現するモンスターのレベルが下がる、この『レオナルド』には謎の武器パラメーターに愛着度がある、この『剣』は妹が居た頃からの武器……予想通りだ。

このクエストただ強いだけでなくいかに『信念』を持っているかを問うクエストなのだと。

そして、ボスが居るフロアーには、一面に地底湖が広がり湖のほとりに祭壇がありその上に青い本が置かれている。

どうやら、本命にたどりついたようだ。

俺は本を開いてみる、それは日記帳だった。


【X月X日】

妻の容態はいつもどおり、妻は窓の外を眺めている。

医者の話ではもう長くはないらしい。

最近、妻と出会った頃の事を思い出す。

妻との会話はあの頃に近い気がする。

何気ない会話が新鮮だったあの頃……。

【X月X日】

私は『レオナルド』のプロジェクトマネージャーに志願する。

この『レオナルド』を妻の生きている内に完成されば仮想空間でなら自由になれる。

ただ、妻と二人で歩きたい、そんなささやかな願い。

【X月X日】

妻の葬儀の後、『レオナルド』開発に戻る。

仮想空間の代わりの誕生日プレゼントのネックレスまで無駄になってしまった。

私は少し疲れているのかもしれない……

『システム零』なるモノを思いつく。

【X月X日】

『システム零』でリアルの世界にデータとして具現化する事に成功。これで死した妻をリアルの世界で再会できる。

【X月X日】

『システム零』の効果をこれに書き込むことは出来ない……余りにも……

これを読む者に同じ間違えをおかして欲しくない。『レオナルド』人工知能を持たせ、私はこの業界から引退することを決め、遠い外国で暮らすこと選んだ。

【X月X日】

『レオナルド』完成

人工知能と『システム零』はリアル世界にも影響を及ぼす恐ろしいモノになってまった。

人工知能はすでに私にも制御できない状態となるが、人の感情を学習できるように変更し、私はこの人工知能に対抗できる『信念』を持った者に託そうと思う。

クエスト『運命の選択』を書き換え、人工知能と交渉で来る道を残す。

【X月X日】

クエスト『運命の選択』の修正が終了。このクエストは人工知能を『マナ』と名付け、勇気ある者に挑んでもらい『マナ』と交渉して暴走しないようにしてもらうこととした。

日記はここで終わっていた。

俺は外に出て、待っていた藤野に全て……

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