第11話
熱帯フィールドからの帰り道に……。
この気配は―――陣である。
どうやら待ち伏せを食らったか。
「よう、アズラエル、さっき熱帯フィールドに居たプレイヤーだが、少し気にくわなかたのでPKしといた」
なに?リンをか―――落ち着け、これは嘘だ。
時間的に不可能、それにリンはアルバイトとはいえGM。
そうそう簡単にPK出来るはずがない。
相変わらず、嫌なやつだ。
「どうした?怒らないのか?」
「お前が嘘で揺さぶりをかけているのは分かっている」
「あれ、ばれた、相変わらず頭の方はきれるね」
「でも、あのプレイヤーはかなりムカつくね。年下の女子とてしては」
???陣が幼い女子?嘘か?違う嘘を言う必要がない。
しかし、ありえない、普通この手のキャラは心理学的に決まってくるはず。
「ふふふ、やはりその反応、面白いね。俺のことかってに推理してその予想が外れて困っている。本当だぜ、俺が幼い少女だって事は――親が離婚して放置されて育ったらいつの間にか『レオナルド』でPKが趣味になっていたぜ」
どうする―――陣が手の内を明かしてきた、奴の目的は俺のPKその為なら、自分のリアルも明かすか―――ほんとに何でもありだな。
だがこれでいくつかの謎は解けた。
陣にとって『レオナルド』がすべてでありそこで一番目立つのがPKの通り名。
仮想ゲーム特有の現象か、
いっそこの機会に決着をつかるか?
「その表情、もう俺のことを推理したか?今日はそのだらしない顔が見られたから満足した」
相変わらず陰険な奴だ。
「またな」
そして、陣は素早く去って行った。
***
首都ベネチアノの情報屋
今日も情報収集
「これは旦那、最近はいろんなクエストをクリアしているみたいですね」
「あぁ、興味のあるやつを優先的にね。それで爺さん、何だね?」
「そうだね、ベネチアノの墓地の墓石に花を飾ると、何かおこるとか、あまり信用できる情報でないからただで良いよ」
「ありがと」
早速く花を摘みに行くか。
待てよ、ベネチアノの裏通りに売っていたはず、行ってみるか。
ベネチアノの裏通り、ここはプレイヤー同士の市場になっている。
「たしか、この辺で……」
ないね。
少し聞いてみるか。近くに居た少女に聞いてみる。
「あの、すいませんが、このあたりで花屋はないですかね?」
「私が花屋です。残念ですが売り切れです」
「そうか、仕方ない摘みに行くか」
「私の名前は『ナナ』もし、よろしければ、私も連れて行って下さいませんか?」
「良いよ、あの辺はまれに強いモンスターが出るからね」
「ありがとうございます」
しかし、この『レオナルド』で花は何の役にも立たないお飾りアイテム。
こんな非力な商人が何故そんな無理をして商売をするのか?
訳ありかな。
俺たち3人は『ベネチアノ』歩いて出発し目的のフィールドに着く。
そこは一面の花畑、赤色、黄色、白色……。
形も様々、リアルでは有りえない組み合わせがあり、風に揺れていた。
「綺麗―――これで当分、花に困りません」
「うん?」
地面が裂け突然、熱帯系花型の巨大モンスターが現れる。
このフィールドで一番遭遇してはいけないモンスターである。
「運が悪かった。藤野、行くぞ」
「はい」
闘い方はいつも通り、二人で攻撃し、定期的に藤野が下がり、回復魔法をかける。
「この程度なら余裕で……」
と、気を抜くと遠距離攻撃がナナにヒットする。
「しまった。急ぐぞ、藤野」
「分かっている」
俺は少し多めに補助アイテムを使い一刻も早く倒しにかかる。
そして、モンスターを倒すと急いでナナに近すくと、様子がおかしい。
ただダメージによる気絶状態ではなく。
そう、リアルの藤野の様な状態で、傷口の色がおかしい。
やがて、俺たちが戸惑っていると傷口が回復しナナは目を覚ます。
「どうやら、ばれてしまいましたね。そう私はNPCです」
「バカな!!こんな高度の事が出来るノンプレイヤーキャラクターが存在するはずがない」
「私は感情と自由な行動が出来るNPCのプロトタイプ。この『レオナルド』の管理システム『マナ』によって作られた存在」
「『マナ』???この『レオナルド』の管理システム???落ち着け、この情報は一般プレイヤーでは知りえないこと、ナナが嘘を言っているとも思えないやはり、ナナはNPCなのか」
「私は花売りという簡単な任務を受け、ただ花を売る毎日―――私には分からない―――あなたたちの世界には墓地に墓石があり。そして花を手向ける。ねえ、教えてプロトタイプの私はもうすぐ消える―――その時、誰か私を覚えているの?悲しんでくれるの?私には感情がある―――でも、誰にも悲しまれることなく消えていく」
確かにナナは感情的になっていた、自分が消えるという現実に悲しむとも怒りともとれる、感情を俺たちにぶつけてきた。俺たちは戸惑うしかなかった。ナナの背負った運命に―――
すると、ナナの姿が消えていく。
「どうやら『マナ』に見つかったみたい―――私の存在は極秘、少し消えるのが早くなったみたい……」
「教えてくれ『マナ』とうやらの目的は何なのだ?」
「『マナ』ある事情から人間の感情に興味を持ち、私の様な存在を作り出し、人間の感情を理解しようしているのです」
ナナはさらに透けて行き、消えてしまった。
そして、綺麗な花畑が広がり何事もなかった様に風に揺れていた。
私たちは『ベネチアノ』帰り、裏通りに向かった。
そして、ナナの居たところに花を置くことにした、短い時間とはいえパーティーを組んだ仲間に……
そして、この『レオナルド』が『マナ』と呼ばれるシステムに支配されている現実。
そして、それに逆らえないNPCの存在。
GMのマミに連絡するか?
しかし、管理システムとなると部外秘のはず、やめておこう。
この行場のない怒りはどこへ向ければ良い。
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