第3話

放課後

学校の屋上

藤野さんに呼び出されて、待っていると、時間通りにくる。

やはり、真面目な人なのだろう。


「呼び出したのは他でもないわ、私の秘密の事と頼みたいことがあるの」

「秘密?あのリアルで人間離れした力のこと?」

「そうね、それを含めてだけど。私はなかなか面白い、ことになっているの」

「面白い?」 

「ま、皮肉だけどね」


そういうと、ナイフを取り出し自分の左手を切り裂く。


「え」 


しかし、切れ目から見えたのは血ではなく七色に光学模様だった。


「これは?」

「私、リアルでも体がデータとして扱われているみたいなの」

「データ?」 

「そうデータとして。それから、こうなる前の記憶が無いの。ある日起きると見知らぬ部屋、知らない、両親、知らない、学校に、友達。向こうが知っているのに、こちらは分からない。それが嫌で転校してきたのよ。そして、部屋に有った『レオナルド』の体感ゴーグル。試しにインしてみたら、公式クエスト一覧の『運命の選択』がクリアになっていたわ」

「たしか、あのクエストは誰もクリアした人が居ないと有名な物で何人もクリアしようと大苦労しても、出来なかったから。実装されてないか、ただのお飾り、とされているクエストだったよね」

「そう、これからクエストについてはゲームないで話しましょう」


 そして俺は家に帰り『レオナルド』にインする。レオナルドの首都『ベネチアノ』名前の通り、ベネチアをモデルに作られた都市だ。


待ち合わせは『ベネチアノ』の近郊の大樹のフィールド。

ここは人も少なく良くプレイヤー同士の密会に使われるエリアだ。

そして、やはり時間きっかりに来る藤野さん。


「こんばんは『ルシファー』さん」

「ややこしいから『藤野』で良いわ」

「そう?なら、藤野さん」

「さっそくだけど、さっきの続きね。ます、クエスト一覧を見て」


 俺はゲーム内に存在するクエスト一覧を表示する。確かにクエスト『運命の選択』はクリア表示されている。


「そう、そしてこれが、アイテム『ブルーバイブル』」


藤野は右手を上にかざすと、ボンと音がして青い本が現れる。


「実在したのか伝説のアイテム『ブルーバイブル』」 

 

藤野さんは本を手にして開いてみる。そこには、白紙のページしかなく、何も書かれていない。

藤野は空を見上げ寂しげに言う。


「これが本物なのか、アイテムとして、使った後なのかさえ分からない」


 伝説のアイテムが白紙の本。

 そして、クエスト『運命の選択』、色々噂のあるクエストだ。

 不老不死になれるとか……でも、藤野さんのリアルは不老不死と言える状態……。

 色んな意味で真実だったか。


「お願い、手伝って、私の記憶とリアルのあの状態を何とかして欲しいの」


 『運命の選択』のクリア、このゲームをやっていれば一度は試したくなるクエスト。


 いや、それ以上に藤野さんを何とかしてあげたかった。

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