第28話 「勝利への確信」
それを元気良く応えた勇者御一行。
『クソッ! 固有結界も乗っ取られて転移が出来ないッ!!』
エンシェントリッチは立ち上がってから言う。それを聞いた俺はフッと鼻で笑う。
「逃げんのか? まぁ、逃げても帰る場所はねーだろうよ。だってぇ? 3000の兵を無くし、ボコボコされているんだからな。帰れる筈が無いんだ。お前が唯一帰れる方法は、ここにいる勇者御一行を冥界に送る以外存在しない」
俺は挑発するようにエンシェントリッチに言うが、何も言わないエンシェントリッチ。
「俺はお前倒してはいけないんだよ。そんなことをすれば大変な事が起きる。だから、俺はお前と勇者御一行の戦いに参加することは不可能だ」
『そんなの誰が信用出来るッ!』
「なら、逃げろよ。逃げられるもんならな。俺はこのままお前を固有結界内に封じたまま、近衛騎士団を待っても良いんだ。さぁ……決めろ」
エンシェントリッチは俺の話を聞いてから勇者御一行を見る。
『フハハハ……フハッハッハッハッハッハッ!!!! よかろう、ならばそこの勇者共を殺してこの場から出る。それで良いんだな?』
掛かった……と思った俺はニッと笑う。
「あぁ、そうだ。俺はここから、この戦いに一切手は出さない」
俺はエンシェントリッチに言うと、エンシェントリッチは魔方陣を展開し始めた。
『なら、死ね勇者共! ダーク・エンド・ノーチェエエエエエエエエエエ!!!!』
エンシェントリッチは最上級闇魔法を勇者御一行放つ。俺は障壁を展開して、ダーク・エンド・ノーチェを回避する。
フィーは障壁を周りに展開してダーク・エンド・ノーチェを回避しようとした。
『フハハハハッ!! 無駄だッ! 貴様らではこの魔法に耐える事は出来ないッ!!』
エンシェントリッチは笑いながら勇者御一行言う。だが、フィーの展開した障壁は一向に壊れる事は無い。
『何故だ……! 何故壊れぬッ!!』
と言ってからエンシェントリッチは俺の方を見るが、俺は一切なにもしてはいない。
俺は黙って膝を曲げて膝の皿に手を乗せて座って見ている。
『ま、まさかッ!!』
エンシェントリッチは障壁を張っている勇者御一行を見て気付く。
『あの旗かぁあああああああああッ!!!!』
ティアは旗を地面に差して結界を張っていた。それだけで無く、旗の力でフィーを強化して障壁の強度を底上げしている。
二人の力を合わせた結果でエンシェントリッチの魔法は完全に防がれていた。
そして、ダーク・エンド・ノーチェの魔法が切れ、真っ黒の影が消えた。
その瞬間に、リンとティアはエンシェントリッチに突っ込む。
『馬鹿めッ! 私に近接戦で勝てるとでも!』
リンは今まで実戦で使って居なかった小太刀を抜き、ティアは旗を持って走る。
「アサヒ玄人流……奥義ッ!!」
リンは走りながら弓を引くように刀を構えて言う。
エンシェントリッチは魔法で構成した刃を出してリンに振り下ろす。
「国士無双ッ……!!」
リンはアサヒ玄人流奥義を放つと、目にも止まらぬ怒涛の斬撃をエンシェントリッチに放ち、エンシェントリッチの後ろに切り抜け、刀を鞘に収めると同時にエンシェントリッチの身体は無数に切り裂かれる。
『ぐうぅおあああああああああッ!!!! なぜだ……なぜ、障壁が……展開でき、ぬ……!』
エンシェントリッチが膝を着いてから俺の方を見てきた。それを見た俺はフッと笑い、エンシェントリッチを見ると、
『あの時か! 殴った時かぁあああああああ!!!!』
エンシェントリッチが俺に怒鳴る。
「どこを見ているんですかッ!!」
言いながらティアは剣を抜いて、パワースラッシュを放つ。エンシェントリッチは俺に意識を向けていたため、ティアの事を忘れていた。
『グゥオオ!! おのれッ!!』
エンシェントリッチは魔法で構成した刃をティアに振り下ろす。だが、ティアをそれを見てニッと笑う。
『――ッ!? ヌゥオオオオ!!』
振り下ろした瞬間、エンシェントリッチは膝を着き、ティアは降りおろされた刃をブロッキングした。
エンシェントリッチは脇腹の辺りを押さえ、背後を見る。
『盗賊勇者ァアアアアアアアアア!!!!』
背後に気配を完全に消していたルキナが持っていたダガーを手の上で回し、エンシェントリッチを見下ろす。
『このダメージ……クソッ!! 気のせいではない、……光エンチャントだなッ!!』
ルキナは空を見てからその場から急いで後退し始める。一緒にティアもルキナと後退した。
『なにもかも全て……・八神将ォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!! 貴様のせいだッ!! 手は出さないと言ったのは嘘ではないかッ!!』
エンシェントリッチは俺に向けて言うのを見ると、笑いが込み上げて来る。
「アッハッハッハ! なにもしてねーよ、俺は。お前が勇者に負けてんだよ」
『そんな訳あるかッ! 貴様ッ戦いに手は出さないと言ったではないかッ!!』
「話はちゃんと聞いとけよ。俺は〝ここから〟この戦いに一切手出しはしない。と言ったんだ」
エンシェントリッチは口を開けて驚いている。その後、歯を食いしばり俺を睨み、
『ハァアアアア神将ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』
「吠えるな。俺は実は物凄く怒っている。お前が魔王軍幹部じゃなければ、この世の全て以上の絶望と恐怖を植え付けてなぶり殺す所だったんだぞ」
俺はエンシェントリッチを睨みながら言う。エンシェントリッチはビクッと少し怯えて黙る。
「お前がこっちに侵攻したことで、その地方でしか生息しないモンスターがこっちに流れてきたんだ。そのせいでかなりの被害が出たんだ。その原因を突き詰めたら、なんだ? お前がこっちに侵攻して、森を破壊したことでこっちに逃げてきた。じゃねぇか……ふざけるなよ? テメェのしてきた事だ、テメェでけりつけろよッ……!!」
俺が言い終わると同時に空が明るくなり、エンシェントリッチは空を見上げた。
『なッ……これは、光魔法……だとッ……!!』
と言ってからエンシェントリッチフィーを探す。フィーは杖を地面に着け、周りに魔方陣が展開し、そこだけが光っている。
エンシェントリッチはフィーを見て驚愕している。
『なぜだ……! 奴は普通の魔法使いだろう……! 光魔法は聖職者に教えて貰わなければ習得は……――ッ!! まさか!! 貴様、あの魔法使いに』
気付いたエンシェントリッチは俺を見てきた。俺はフッと笑い、
「正解」
と答える。
『おのれぇええええええ!!!! 八神将ォオオオオオオオオオオオオ!!!!』
「それしかいえねーのかよ」
言うと、フィーの詠唱が終了し、
「スターダストレイッ!!」
大きな光の柱がエンシェントリッチに降り、エンシェントリッチを光で呑み込んだ。
『グアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』
数秒しか中級光魔法のスターダストレイ発動させられなかったが、十分であった。
普通の魔法使いでは、そもそも光魔法自体の習得が難しい。だが、フィーは直ぐに習得し、初級を飛ばして中級からスタートさせた。
フィーは地面に膝を着いて、杖に体重を預ける。
『わ、私は……ま、まだ、だッ!!』
後少しで完全にエンシェントリッチを葬る事が出来たが、発動が短かった為、生き残ったエンシェントリッチ。
「流石、魔法軍幹部と言った所だな。だが、終わりだ」
そう言って俺は勇者御一行の方を見ると、旗空に掲げているティアがいた。
『おう、ダンナ。今まで黙っていたが、あれで決まりだな』
「なんだ? 忘れてるとでも思ったのか? クリエイティス」
『いんや、報告だ』
「お?」
『周りに影響無しだ』
「あんがと」
『んじゃ、おやすみ』
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