第29話 「エンシェントリッチとの決着」

 そう言って――クリエイティスは存在を消した。すると、ティアの旗にドンドン光が集まり、最終的に大きな光の剣となってそれを掲げるティア。

 ティアはボロボロになったエンシェントリッチを見る。

 そう言うとティアは旗は光の大剣ではなく、空へ伸びた光の巨剣と変わり、エンシェントリッチに振り下ろした。


「ハァアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 と叫び、光の巨剣はエンシェントリッチに降り下ろされ、エンシェントリッチはそれを見て、


「この様な所でくたばるかぁああああああああああああああッ!!!!」


 エンシェントリッチは黒いオーラを手元から発生させ、空に向けると黒いモヤが収束して闇の巨剣が完成される。

 闇の巨剣をエンシェントリッチは振り下ろし、ティアの光の巨剣にぶつけた。

 火花が発生し、お互いにぶつけあう。だが、少しづつティアの方が押されていく。


「は、ハハ……ハッーハッハッハッハッ!!!!」


 何を思ったのかエンシェントリッチが大笑いしだす。

 それからこちらを見てきた。


「どうだ!! 八神将!! 私の勝ちだ!」

「ふーん」

「助けなくていいのか? まぁ、今助ければお前はこの私が切り捨ててやろう!! 助けないとし――」

「――勇者は1人じゃないぞ?」


 するとエンシェントリッチはティアの方を見ると、


「支える」

「負けないでよね!」

「腰を落とせティア! 負けるぞ!」

「雑魚どもがぁあああああああああああ!!!!」

 

 抵抗している勇者を見て怒号を放つエンシェントリッチ。

 ティアを支える様に押さえている勇者達。

 だが、4人掛かりでも勢いは止まらず、押されていく。

 押されていき、少しづつ後退していく勇者御一行。

 そこで俺は指を弾く、外の様子を結界内に流す。


「勇者たちが見えなくなったぞ!」

「大丈夫か!?」


 と不安になっていく街の人たちだが、


「がんばれーッ!!」


 1人の男の子が声援を送った。


「お姉ちゃんたち……頑張れぇーッ!!」


 不安になる大人たちの中、唯一声援を送った男の子。


「勇者のお姉さん……頑張れぇーッ!!」


 希望は勇者御一行に託されている。それが分かり、泣きながらも声援を送った。


「そ、そうだ!! 頑張れぇーッ!!」

「あんな骸骨なんかに負けるなぁー!!」

「薬師さんの仇を取るんだろーッ!!」

「生きて帰ってこーいッ!!」


 そして、街中の人達が勇者御一行に声援を送る。


「「「頑張れぇーッ!!!!」」」

「騒がしいッ!! 勇者どもを片付けたら次は貴様らだぁああああああああああ!!!!」


 結界内で調子に乗るなよ、クソ骸骨が……。

 思ってから俺は手を加えようとした瞬間、


「黙れぇえええええええええええええええええッ!!!!」


 声を上げたのはティア。まさかの叫びに目を丸くしている俺。


「お前はここで倒します! みんなが、私達の帰りを待っているんですッ!!!!」

「だぁからどうしたぁああああああああああああああああ!!!!」

 

 エンシェントリッチは避けび更に力を加える。

 だが、押されることは無く耐えている勇者御一行。


「伝わる……みんなの思いが……気持ちが……!」


 すると、ティアの光の巨剣が闇の巨剣を超えた大きさへ変わり、


「力に変わるッ!!」


 ティア達の魔力が大きく上昇した。それが分かったのか勇者御一行は驚いている。


「みんな、力を貸して」

「任せて!」

「やってやろうじゃないの!」

「決着をつけるぞ!」


 そして、全員で光の巨剣で闇の巨剣を押し返して行く。

 あまりの強大な力にエンシェントリッチは勢いよく押されていった。


「グゥウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!」


 耐えるエンシェントリッチ。


「なぜだ……なぜ、勝てんッ!!」


そりゃお前――


「――人は強い!」

「どんな困難にも立ち向かうッ」

「時には人を助ける!」

「それを知っているから人は強いッ!!」

「お前の敗因は――」


 勇者御一行は力を込め、


「「「「――人を甘く見ていたことだァアアアアアアアアアッ!!!!」」」」


 4人同時に声を揃えて押し返した。


「「「「ハァアアアアアアアアアアアッ!!!!」」」」


 そして、エンシェントリッチの闇の巨剣が砕かれ、そのまま光の巨剣がエンシェントリッチに迫る。


『魔王様ッ!! 申し訳ございませんッ!! 私は、私はここで消えますッ! しかし、魔王様は永遠に私の主ですッ!! 魔王軍バンザァアアアアアアアアアアアアアアアイッ!!』


 そして光の巨剣に呑まれ、今度こそ浄化したエンシェントリッチ。それを見た俺はフッと笑って立ち上がる。


「勝ちました……本当に、これで……勝ったんですねッ!!」

「うん!」

「ええ!」

「あぁ!」


 と勇者御一行が言うと、


「「「「勝ったぁああああああああああああ!!!!」」」」


 と勇者御一行は四人で円陣を組んで喜んだ。俺をそれを見て微笑む。

 すると、ティアが俺を見つけて走ってくる。


「薬師さんッ!」

「ん?」

「ありがとうございました! 本当に……本当にッ!!」


 ティアは俺の手を取ってギュッと握って微笑む。それを見た俺は微笑んでティアを見る。


「あいつを倒したのはティア達だ。俺は少し手伝っただけ、それに聞きたい事があるなら俺は病室にいる。そこに来れば詳しい事を話そう」


 そう話すと、ルキナ、フィー、リンがこちらへ走ってくる。


「薬師さんッ 私頑張ったッ」


 目をキラキラさせながら言うルキナに俺は優しく微笑んでから頭を優しく撫でる。

 撫でられているルキナは嬉しそうな顔をしていると、


「わ、私も頑張ったんだけど……?」


 と上目使いで俺を見ながら言うフィーに俺はフィーを抱き寄せ、耳元で、


「よく頑張ったね」


 優しく言うと、フィーはボンッと音がなる様に顔を真っ赤にして、硬直する。

 硬直したフィーを見たティア、ルキナ、リンを笑う。俺はリンに近付く。


「お疲れリン」

「あぁ、本当に……生きているのだな?」

「あぁ、生きてるさ」

「そうか……」


 リンはどこか嬉しそうな表情を浮かべて頬を少しだけ赤くしている。


「流石はアサヒ玄人流の後継者だ。でも、良いのか? 奥義をだして」


 俺が言うと、ふぅ……と息をついて、少し困った表情を受けべたリン。


「あの場面で出すのが最善だ。それに私刀は誰かを守る物の為にある。奥義は確かにあまり見せてはいけないが、それを見せずに誰かを失うなら、私は奥義を出す。そのつもりだ」


 凛とした表情で言うリンに俺は優しく微笑んでリンの頭を撫でる。


「お、おい……一応私は勇軌より年上なんだが?」

「それでもリンは女の子だ。お疲れ、心配かけてゴメン」


 と言うと、リンはバッと俺から離れ顔を真っ赤にしている。


「お、おんにゃのこ!? わ、わたしゅは! け、剣士ダッ!」


 噛みまくって言うリンを見た俺は笑う。


「さて、みんなそろそろこの空間から出よう」

「で、でも」


 俺が言うとティアが心配そうに俺に言う。


「言っただろ? この空間は俺が既に支配していると、だから直ぐに解除出来る」

「はい!」

「俺はここにいてはマズイ。だから、俺は病室で待っている。また、後でな勇者御一行」


 そう言ってから俺は指パッチンを行うと結界を解除すると同時に病室に転位した。

 俺は窓枠に座り、外の歓声を聞く。


「勇者だッ!!」

「勇者達が勝ったぞぉおおおおおお!!」

「宴だ!! 宴の始まりだ!!」


 と冒険者が声を上げて辺りを賑やかにしていった。すると、階段を上がる音が聞こえた俺はそのまま待機して外を見ていると、扉が開かれた。

 扉を開けたのはギルドの受付のお姉さんと病院の先生。俺が生きて座っているのを見ると、受付のお姉さんは持っていた花を手放して口元に手を押さえ、病院の先生はビン酒を床に落として少し跳ねた。

 受付のお姉さんはその場に膝を着いて泣き出し、先生はゆっくりと俺に近付いて俺の手首を触る。


「生きてますよ、先生」


 事実を確認している病院の先生を見て微笑みながら言う。


「生きている……! 奇跡だッ! あぁ……八神将様。本当にこのお方を救って下さり誠に感謝しておりますッ……!」


 その後俺はギルドへ先生と受付のお姉さんと向かい、そこで勇者御一行と合流した。

 冒険者達は俺を見た瞬間、持っていたコップを落とす者とその場で静止する者が数秒の静かになり、


「「「奇跡だぁあああああああああああ!!!!」」」


 ギルド内、街中は大騒ぎになり俺と勇者御一行は夜遅くまで宴の主役になった

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