第23話 「エンシェントリッチ討伐~その1」


 俺は上から勇者御一行を見守った。そして30分後、全員が泣き止み俺の周りを囲む様にしている。


「薬師さん、今は葬式とか出来ませんが後で必ずします」

「絶対に」

「そうね」

「あのエンシェントリッチを倒した後にしよう」

「「「はいッ!!」」」


 全員が声を揃えて答えた。答えると俺のいる部屋から出て、何処かへ向かう勇者御一行。

 何処に行くんだ? 俺は思いながら壁をすり抜けて勇者御一行を追う。

 勇者御一行はギルドへ向かっていた。俺は勇者御一行について行き、勇者御一行はギルド内へ入る。

 ギルド内に入るとティアがクエストカウンターへ向かう。


「すみません、魔王幹部のエンシェントリッチの討伐、撃退のクエストの参加の申請をお願いします」


 ティアが言うと受付のお姉さんは驚く。


「貴方達、薬師さんが居なくなって気が動転してはいませんか?」


 と受付のお姉さんが勇者御一行に心配しながら言っている。

 テイアは首を左右に振り、真剣な表情で受付のお姉さんを見る。


「本気です。仮にも私達は勇者です。ここで立ち上がらないで何処で立ち上がるのか、です」

「しかし……貴方たちは……」


 受付のお姉さんの言いたいことは俺は分かる。

 貴方たちは先程、負けた。それに薬師さんが止めなければ、まず殺されていただろう。と。

 それを察した勇者御一行は目を瞑り、深呼吸を一度してからもう一度受付のお姉さんを見る。


「負けません。秘策があるんです。いえ、この旗の使い方が私は分かったのです」


 ティアは旗を大きくし、木造の床にタンッと着けた。


「……それで勝てるんですか?」

「勝てます。でも、私一人の力では勝てません」


 ティアが受付のお姉さんに言ってからティアはギルド内にいる冒険者達の方を向く。


「皆さんの力が必要です。皆さん、私達に力をお貸し下さい、お願いしますッ!」


 ティアが頭を下げながら言う。だが、エンシェントリッチに負けた勇者御一行の言葉に冒険者達は乾いた笑を浮かべる者、なんとも言えぬ顔をしている者もいた。

 ティアは一度顔を上げ、全員の表情を伺うと信用仕切れてない視線を感じたティアは、胸をギュッと握り、苦しそうな表情を浮かべた。


「……薬師さんは、この街にとってかけがえのない人でした。そのお方がッ!! あの

エンシェントリッチに殺されたのですよ!! 私はギルドの人に聞きました。エンシェントリッチは街にブラックレインを降らせ、外壁も壊したモンスターです。しかし、死人は奇跡的に一人も出ては居なかった」

 冒険者達はティアの言葉に耳を傾け、ティアを見る。


「でも、奴は! エンシェントリッチは薬師さんの命を奪ったッ!! 皆さんは、悔しくないのですか!? お世話になった方だっている筈です! そのお世話になった人の命を奪われ、指を加えて貴方たちは逃げるのですか!! 私は逃げない! 薬師さんにはお世話になっでは、ないです。なりっぱなしなんです!!」


 ティアの言葉に冒険者達は次々に立ち上がって行く。


「そうだ……俺は弟の病気を薬師さんに治して貰った……!」

「俺は、足腰のわるい母親が治った……!」

「俺は酷い怪我をしたとき、最後まで見てくれた……!!」


 冒険者達は俺に世話になった事を口にだしながら立ち上がる。


「今はもう居ないけど……薬師さんに恩返しをしませんか! そして、仇を取りませんか!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


 ギルド内にいた冒険者達全員が立ち上がり声を上げた。


「もう一度言います。皆さんの力が必要です。皆さん、私達に力をお貸し下さい、お願いします」


 とティアが頭を下げず、全員の顔を見ながら言う。


「ああ! 貸すぜ!」

「任せろ!」

「俺は頑丈なのが取り柄だが、それ以外になにかあるならそれに使ってくれ!」


 冒険者達はティア達に言う。それを見た受付のお姉さんははぁ……とため息を一つ着き。

 一枚の紙を取り出し、文字を書いていく。


「皆さん! 新しいクエストを貼り付けましたから! 参加する人は私に言ってください!」


 ティア達はクエストボードに向かい貼られたクエストを見ると、


「お姉さん!」


 ティアは受付のお姉さんの方を振り向く。


「無理はしない、これは絶対です」


 はぁ……とため息を付いてからヤレヤレと言う感じで受付のお姉さんがティア達に言う。


「はい!」


 ティアは元気に答え、そして作戦をギルド内で練ることにした。ギルド内の奥のテーブルを勇者御一行が使って作戦を練っていた。


「てか、その旗どういうことなの?」


 フィーが旗に指を差して疑いながら言う。ティアは後ろに立てかけている旗を見る。


「あれは人の気持ちを力にするの」

「は?」

「私が薬師さんが無くなって泣いていたら、布の部分が何重にも巻かれていたの」

「……」

「次に私がエンシェントリッチに怒りを感じると、棒の部分が異常な程硬くなっていたんです」

「それで、人の気持ちに左右される旗って分かったと?」

「はい」

「それでなんで他の冒険者の力が必要なの?」

「実は旗が教えてくれたんです」

「は?」


 まさかの発言にフィーは言う。言葉には出さなかったが目を丸くしてティアを見るルキナとリン。


「急に頭の中に私の声で『旗を象徴だ。その象徴を支援する者が多ければ多い程、力は増す』といってきたんです」

「ふむ、それだけか?」


 黙っていたリンがティアに聞く。


「いえ、それだけでなく『旗は力を与える。選ばれし者に力の支援を行う。旗は先導者が持つ者、兵の士気を上げるものであり、それゆえ人がいなければ意味はなさない』と教えてくれました」

「……古代魔法武器に込められたメッセージって事ね。疑う事もないわね。で、どうするの?」

「私達が勝つとこの街の皆さんが思えば、多分ですが。旗の本来の力が使えると思います」


 フィーがティアに聞くと、ティアは旗の本来の力を発揮させられる可能性を言う。


「そうなると、皆に私達が倒すから応援してくれ。って言うしかない」


 ルキナがティアに言うと、ティアは微笑みながらルキナの頭を撫でる。


「そうなります。早速皆さんに言いましょう。そして、明日……あいつを倒しましょう」

「うん」

「そうね」

「ああ」


 それぞれが意を決したように言う。その後、ティア達はギルドの二階に上がる。


「皆さん! 明日は私達がエンシェントリッチと戦います!」

「俺たちも戦うぞ!」

「そうだ!」

「薬師さんの仇だッ!」


 と冒険者達が声を上げてティア達に言う。


「いえ! それではこの前の二の前になります。どうか、私の言葉を聞いてください」


 ティアが言うと冒険者達は黙って二階にいるティアの方を見る。


「私達はこの前、ラビリンスケイブを攻略してきました」


 ラビリンスケイブと聞いた瞬間、冒険者達が少し騒ぎ始める。


「ラビリンスケイブだと!?」

「あの、ミノタウロスの巣窟か!」

「よく生きて帰ってこれたな……!」


 と賞賛と驚きで辺りが騒ぐ、


「皆さん、聞いてください」


 ティアが言うと全員が黙り、ティアの方を見直す。


「そこで私達はこの旗を手に入れました。この旗は古代魔法武器で、旗の効果は支援をしてくれる人が多ければ多い程、私達が強くなれる。と言う物です。ですので、皆さん私たちを信じて、私達を応援してくれませんか?」

「……お安い御用だぜ!」

「ああ! 任せな!」

「応援部隊だ! 応援部隊を作れッ!」


 一瞬の間があったが、すぐに冒険者達が言うと次々に行動を起こす冒険者達。


「ティア凄い」

「そうね、カリスマ性ってやつね」

「これなら勇軌も文句は言わないだろうな」


 この光景を見たティアは感動で涙をながしそうになる。そこにリンが近づきティアの肩に手を置いた。


「まだだ、まだ泣くのは早い。泣くのは奴を倒してからだ……!」


 ティアは涙を手で拭い、


「はいッ!」


 と真剣な眼差しでリンに答えた。

 その後、冒険者達は外壁を早急に直せる限界まで直そう動き、外壁だけでなく木で出来たバリケードを作った。


 勇者御一行は街の人達からポーションなどを貰い、次の日に備える。

 ルキナは的当てにて、全て急所を捉え、フィーは少しでも火力をあげる為、最上級魔法を使い修練し、リンは次こそは確実に仕留める為か、絶刀スキルを使い、修練している。


 決戦に備え、勇者御一行はそれぞれ努力した。

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