第22話 「魔王幹部エンシェントリッチ」


 俺は急いで冒険者と受付のお姉さんと共に外へ出て、人が集まっている所へ俺は行く。

 そこで目に映った光景に俺は驚いた。


「……モンスターが何故この街の近くまで来ているんですか?」


 とティアが装飾と鎧を着た骸骨に向かっていう。


『フフフ、私は! 魔王軍幹部の一人、エンシェントリッチだ! この街は私の拠点とさせて貰う! だから、家畜同然の人間よ……死ぬか、この街から消えろ』


 エンシェントリッチが俺等に向かって言う。


「……それを決めるのは私達であって貴方ではないッ!!」


 とティアが強く言うと同時に持っていた旗を伸ばし地面に立てると、布の部分が風になびかれ動いている。


「私は魔王軍幹部を許さない! 私の村を焼き、私の家を奪った貴方たちを私は許さないッ!」

『ほぅ……言うでは無いか、小娘。貴様はなんだ?』

「私は『勇者ブレイブ』の可能性を秘めた者の一人、ユリティア・フィン・ソイネ!」


 ティアの言葉に少し驚いたエンシェントリッチ。


『ほう、小娘。貴様は勇者か……』

「私も勇者よ!」

「私も……!」

「私もだッ!」


 ティアに続いてフィーとルキナ、リンがエンシェントリッチに答えた。それを聞いたエンシェントリッチは大笑いし始めた。


『フハハハハハハハ!! これは面白いッ! ここまで勇者がいるとはな! で? その勇者様がどうするって言うんだ? この私を倒すとでも? 無理だッ! 止めておけ! 貴様らでは相手にならんわ! フハハハハハハ!!』


 大笑いするエンシェントリッチにティアは旗の尖った先端の部分を向ける。


「やってみなければ……分かりませんッ!」


 無謀にもティアがエンシェントリッチに突っ込んだ。突っ込んだ瞬間に俺はティアの前に立ち、ティアを止める。


「ティアさんッ!! 無茶ですッ!!」

「や、薬師さん!? ど、退いてください!」

「退きませんッ! それに他の皆さんも突っ込んだりしないで下さいよ! 既に王都には連絡済みで近衛騎士団と上級冒険者達がこちらへ向かっていますッ! ここで変に血を流す必要は無いのです!!」


 勇者御一行を止める為、俺はこれから起きる事を説明した。


『ほう、そうか。やはり来るか。だが、着くまでに後二日は必要だろうな……それでは私もつまらない。なら、勇者達よ。そこの男は大事か?』


 突然エンシェントリッチが勇者御一行に変な事を聞き始めた。なにを聞いているんだ、あの骸骨は……。と思う。


「大事です。凄く大事な仲間です!」

「大事ッ」

「大事よ」

「ああ、大事だ」


 勇者御一行が真顔でエンシェントリッチの質問に答えた。


『フハハハハハ!! そうかそうか、良かったな。人間よ、大事にされていて』


 とエンシェントリッチが俺に言うと、俺に指を差し、


『デーモンカウント』


 エンシェントリッチは俺に闇魔法のデーモンカウントを俺に放った。

 それを受けた俺は苦しくなり、心臓の辺りの胸を抑える様にして倒れる。

 デーモンカウント、デスカウントの上位互換で禁忌の魔法とされている。理由は相手に一定以上の苦しみを与えながら相手を確実に殺す魔法であるからだ。

 倒れた俺に勇者御一行が駆け付けて着た。


「薬師さんッ!!」

「薬師さん!」

「勇軌!」

「勇軌ッ!!」


 俺は過呼吸の状態でティアに状態を起こされながら言われる。


『フハハハハハハ!!! さぁ、勇者達よ、どうする? この私を倒さねばそいつは死ぬ。どうする』


 笑いながらエンシェントリッチは勇者御一行達に挑発するように言う。

 すると、リンとフィー、ルキナが武器を強く握りエンシェントリッチの方を睨みながら突っ込んだ。


「アサヒ玄人流……」


 リンが刀を抜き、弓を引く様に刀を持ってエンシェントリッチに突っ込み、


「連開花ッ!!」


 リンのスキル、連開花の三段突きをエンシェントリッチに放つ。エンシェントリッチは避ける事が出来ず、それを受ける。


『これは、危ない。物理障壁が無ければ私はとんでもない事になっていただろう。そして、この技の弱点は――』


 無傷でエンシェントリッチがリンに向かっていう。その後、エンシェントリッチが魔法で刃を構成し、リンを横なぎした。

 リンはそれを刀で受け止め、なんとか直撃を避けたが吹き飛ばされる。

 攻撃後の行動の僅かな隙をルキナが突こうと、アームガードから出された魔力ブレードでエンシェントリッチに攻撃しようとした。だが、


『見えているぞ』


 ルキナの攻撃をエンシェントリッチは受け止め、ルキナの片手を掴み上げてから地面に叩きつけた。


「カッ……ハッ!」


 ルキナは地面に一回だけバウンドしてから、息が出来ないのかうずくまっている。


「エクスプロードッ!!」


 フィーが詠唱諸略して最速で最上級火魔法をリッチ系の弱点である火属性魔法で攻撃する。

 しかし、エンシェントは片手をエクスプロードを向けて魔法障壁を展開して、最上級火魔法を防いだ。


『良い動きをする。そして、良い魔法だ。ぜひ、殺して私の屍兵にして手元に置きたい』


 言いながらフハハハハハ!! と笑うエンシェントリッチ。その後、勇者三人は立ち上がるが、ボロボロで戦う事さ難しい。

 それを悟ったエンシェントリッチは片手を横に払うと、強風が起き勇者三人が吹き飛ばされ俺の近くへ来た。


『まぁ、この程度だろうな。勇者共』

「待ちなさい! 薬師さんを、薬師さんに掛けた魔法を解きなさいッ!!」


 ティアが怒りながら声を上げてエンシェントリッチに言う。それを聞いたエンシェントリッチは帰ろうとしていて、振り返り俺たちを見てからフン、と鼻で笑った。


『その救えなかった家畜は貴様らの実力不足だ。この私を倒すことが出来なかったからなッ! フハハハハハ!!』


 そしてエンシェントリッチは黒いゲートを開き、その場から離れようとしていた。


『いいか、家畜共。明日、またここに来る。その時に私に抵抗するようであれば、私の持っている戦力と私で貴様らを滅ぼし、その家畜の様に殺す』


 そう言い残し、エンシェントリッチは黒いゲートに入りながらフハハハハハ!! と笑って消えようとした。


「待ちなさいッ!! 待ちなさいよッ!!!!」


 だが、ティアの声は届かずエンシェントリッチはその場から姿を消した。

 そして、エンシェントリッチが消えた瞬間俺の周りに人が集まる。


「どなたか! ディスペルを! ディスペルをお願いしますッ!!」


 ティアが周りにいた人達に言う。すると、ディスペルを扱える魔法使いが三人現れた。

 三人は俺にディスペルを掛けるが、俺に掛けられたデーモンカウントの魔法を解くことが出来なかった。

 俺は街の人達に病院に運ばれた。そこで、少しでも延命をしようと様々なディスペルを行う三人の魔法使いとフィー。


「ブレイクスペルッ! ディスペル! ホーリーディスペル!!」


 最後の最後、フィーが消費の大きいディスペルを俺に掛けたが、デーモンカウントを解くことは出来なかった。それが分かったフィーは糸が切れた人形の様にペタンと床にお尻を着き、涙を流している。


「嘘、フィー。まだ、出来るよね?」


 ルキナは今起きた事が信じられず、フィーの肩を揺らしながら言う。フィーはルキナに肩を揺らされ、ルキナを見てから左右に首を振った。


「う、そ。だ、だって、薬師さん、や、優しい……よ?」


 我慢できなかったのかルキナは涙を流して俺のベッドの横に顔を隠すようにうつ伏せた。


「薬師さん……! ごめん、なさい……本当に、ごめんなさい……ッ!!」


 ティアが涙を流しながら俺の手を取って言う。


「違う、ティア。私があの時、三段突きを確実に決めていればこうはならなかった……。私の責任だ……ッ!!」


 そういうとリンは壁を殴った。その後、壁に頭を付けて、涙を流した。


「や、薬師さん……私、私――」

「ポー……ション……作、らないと……いけ、ません、ね……」


 物凄く苦しいが、これだけは言っておかねばならないと思い、俺は口を開く。


「そんなことは良いんですッ!! 薬師さんが、薬師さんがッ……!!」

「みな、さん……私は、大丈、夫……です。あと、にげ、て……下さい……これ以……上、血を流、す必要は、あり……ません」


 勇者御一行は涙を流しながら俯いていて、聞いているのか分からないが言って置かないとと思う俺。


「で、すので……皆さん、に……げ、て……く、ださい……」


 そこで俺は手の力を抜き、死んだ。俺は自分を見下ろす。


「……薬師さん? 嘘ですよね? 薬師さん……? 薬師さんッ!!」


 ティアが俺の手をギュッと握るが俺は反応することない。俺は魂だけで移動しているからだ。

 今、俺の体は死んでいる。だからこそ、動きようがない。

 それを見たティアは、


「ぁああ……うあぁあああああああ……!」


 悲痛な叫びが病室を響かせた。

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