第18話 「ラビリンスケイブ~その4」
俺はボスのいる部屋の門に手を付けて開けた。
部屋は広く、隅には砂の山が出来ていてボスの姿はないが、
「ラビリンスキーパーさ、話で解決出来るならそうはしないか? ミノタウロスの角さえ欲しければなにも無いんだ」
俺はラビリンスキーパーに言う。すると、黒いモヤが部屋の中心に集まり赤い光が2つこちらをみている。
『貴様は敵、貴様とは話すことは無い』
そういうと、このラビリンスケイブを守護するモンスター。
ラビリンスキーパーがアヌビスの姿で現れた。
クノペシュと言う剣を黒いモヤから生成してから、俺に向けて言うラビリンスキーパー。
ラビリンスキーパーが黒いオーラを纏った瞬間、俺の目の前に出現してクノペシュを振り下ろした。
クノペシュは俺を斬る事が出来ず、俺のすぐ目の前で止まる。
俺は俯きながらクノペシュを掴む。
「……ラビリンスキーパー。次が最後だ。俺は話で解決出来るならそうしたい。お前はどうする?」
『こしゃくな! 障壁なんぞ私の力があれば……!!』
ラビリンスキーパーは全力で俺の障壁を破ろうとしていたが、
『バ、バカな……!! ここまで硬い障壁は知らんぞ!!』
「当たり前だろ? 誰と相手して――」
「――薬師さんッ!!」
ラビリンスキーパーに言おうとした所でまさかのティアの声が聞こえ、そちらに視線を向ける。
そこには勇者御一行が少しボロボロだが、ここまでたどり着いていた。
予想以上にこの部屋まで来るのが早かったな。意外と成長はしていたんだ。
『余所見をし過ぎだッ!!』
「――!」
ラビリンスキーパーの横薙ぎに俺は吹き飛ばされて壁に激突する。
激突と同時に、俺は床にある砂を振り払い砂ぼこりを発生させてから倒れこむ。
その後すぐに幽体離脱をして頭上から勇者御一行を見る。
「薬師さんッ!!」
「よくも、勇軌を!」
リンが抜刀しながらラビリンスキーパーに突っ込む。
「ハァッ!!」
横に一閃。リンの刀がラビリンスキーパーへ傷つける。
はずだが、
「――!? これは……!」
違和感に気づいたリンはすぐにその場から後退して距離を取る。
ラビリンスキーパーは勇者御一行を見ている。
「いい一撃だな。そこで倒れている者も強いが、貴様らも強い……」
呟くラビリンスキーパー……呼びづらい、見た目がアヌビスなんで、アヌビスと呼ぼう。
「フィー攻撃が届かない……」
「障壁ね、かなり厄介だけど……限度はあるから」
リンは刀を構え直し、アヌビスを見据えている。
そして、刀をアヌビスに向けた。
「なら、攻撃しつづければ良いのだな?」
「そうね」
「私も行きます」
ティアとリンが武器を構えてから、アヌビスへ突っ込む。
アヌビスはクノペシュを振り下ろす。それをティアがブロッキングを使い防ぐ。
その隙にリンがティアの横を駆け抜け、構えてから、
「アサヒ
刀を振り払うと、風の刃が6つ発生してリンの周りに展開された。
「
刀でアヌビスへ刀を振り下ろすと同時に風の刃がアヌビスへ飛んで行った。
アヌビスは風の刃を切り落として行くが、3つ程落とせずに障壁に当たる。
そして、着地をした瞬間にアヌビスはクノペシュに魔力を乗せたリンへ振り下ろした。
「死ねッ!」
「アサヒ玄人流……」
読んでいたのか、リンは既に構えていた。
振り下ろされたクノシュを刀の刃の部分で受けて流してから、体を反らしてアヌビスを切り抜けた。
「……燕返しッ」
鋭いカウンターが入り、障壁にほんの少しヒビが入る。
そこにリンは手を休めず、刀を取り回してから、
「アサヒ玄人流……花鳥風月……!」
刀を切り上げると鈴の音が鳴り響き、刀身に薄い桃色の光が宿った。
光が宿ったままリンはアヌビスへ攻撃を仕掛ける。
「ぬぅ!!」
まずいと思ったのだろうか、障壁で受けずにアヌビスはクノペシュでリンの攻撃を受け止めた。
そこへ、
「ハァアアアアアッ!!!!」
ティアがシールドバッシュでアヌビスに攻撃して、リンから離れた所でパワースラッシュを放った。
しかし、攻撃は障壁によって防がれる。
「ナイスティア……!」
そういってティアの横を駆け抜け、
「アサヒ玄人流……!」
リンは刀を弓を引くように構えながら突っ込む。
1歩踏み込んだ瞬間に、床が凹み。
2歩踏み込んだ瞬間に、音が消え。
3歩踏み込んだ瞬間にはリンの姿が消える。
「――!!!!」
「……
姿を現すと同時に神速の3段突きがアヌビスへ炸裂した。
だが、障壁によって防がれるが、
「おのれぇえええええええええ!!」
今の攻撃でアヌビスの障壁はボロボロになる。
人間を下に見ていたアヌビスはここまで押されると思わず、声を上げた。
しかし、リンは今のアヌビスへ攻撃を仕掛ければ有効なのに攻めない。
なぜだ? と思った瞬間に気づく。なるほど……。
「人間が! 私と対等に戦うなど、万死に値する!」
クノペシュをリン達へ向けた瞬間、
「――ッ!! グァアアアアアアア!!」
「隙だらけ」
ルキナがハイドを使い、気配を完全に消してアヌビスの背後へ回りアームガードから発生している魔力の刃でアヌビスへ攻撃した。
それからルキナはアヌビスからバク転しながら距離を取る。
アヌビスは思わず、膝を床に着けた。
ティアが膝を付けたアヌビスに一気に近づき、
「ヤァアアアアアアアアアッ!!!!」
クリティカルブレイドを使いアヌビスを切り上げた。
パリーンっとガラスの割れる音が鳴り、薄紫色の障壁が砕け散る。
アヌビスから黒いモヤ出ていた。
ルキナはそれを見てから駆け足で俺の元まで来てから、体を揺する。
「薬師さん……! 薬師さん……!」
意識のない俺を確認したルキナは俺の腕をルキナの肩に回して、勇者御一行の近くへ持っていった。
それからゆっくり俺を下してからアヌビスへ視線を戻した。
アヌビスは黒いモヤを出しつつ立ち上がり、目が赤く光る。
「人間よ、我を本気にさせるか……なら、良かろう……! 本気を見せよう!」
黒いモヤが周囲からアヌビスへ集まり、浮いてから黒い球体へと変わる。
黒い球体の周りに黒い雷が走り、辺りに当たっていく。
当たると岩が砕け、床が凹む。勇者御一行は一旦距離を置いた。
雷が収まると、黒い球体が床に降りてそこから黒い影が現れる。
黒い影から形になっていき、最後には5m程の黒いアヌビスが現れた。
「これが私の真の姿だ……!」
強化されたアヌビスはクノペシュからアウス杖に変わっており、杖を勇者御一行に向ける。
アウス杖を上にかざしながら手回ししたアヌビス。
すると、勇者御一行の周りに魔法陣が展開される。
展開された瞬間、黒い電撃が発生して勇者御一行を襲う。
「い、一旦離れましょう!」
ティアが指示を出すと、4人はすぐに魔法陣から出る。
出ようとしたフィーにアヌビスは手をかざす。
「グッ!? な、なに……!? 体が……重いッ……!」
フィーに体の重くなる魔法でもかけて魔法陣から出られずにいた。
そして、黒い電撃がフィーへ当たる。
「キャアアアア!!!!」
悲痛な叫びをあげるフィー。あの電気は魔法である為、当てれば即死と言う事では無いが当たり続ければ話は別だ。
……そろそろ、動くべきか?
思うが、その時にはルキナがフィーを抱きかかえて魔法陣から脱出していた。
その間にリンとティアがアヌビスへ突っ込む。
ティアが盾を構えながら突っ込み、その後ろで刀を抜刀しているリン。
「舐めるなよ?」
アヌビスがアウス杖に魔力を込め、ティアへ振り下ろす。
ティアはそれをブロッキングして受け止めるが、
「ぐぅッ!!」
床が凹み、ティアの表情が変わり刃歯を食いしばっている。
しかし、ダメージは受けたが何とか受け止めきれたティア。
「行ってください!」
「任されたッ!」
リンが刀を構え、
「アサヒ玄人流……」
リンの周りに風の刃が発生し、
「風花雪月ッ!!」
風の刃がアヌビスへ襲い掛かった。
つづく
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