第16話 「ラビリンスケイブ~その2」

 

 部屋に入り、俺はテーブルに調合用のポーション棚と薬研やげんの置いてあるテーブルの前の椅子に座る。

 椅子に座った俺は、テーブルの脇の俺の鞄の中から薬草を取り出し、薬研に入れてすり潰していく。ある程度すり潰した後に別の薬草を入れてまたすり潰す。


 二種類の薬草をすり潰した後、ポーション棚に置いてあるポーションビンの内にある調合用ポーション液をすり潰した薬草に混ぜる。

 その後、またすり潰し最後は調合用ポーションビンに入れて癒やしのポーションを完成させた。

 完成させ、時間を確認すると既に0時を回っていた。


「やべ、寝ないと」

『集中しすぎじゃねーか? ダンナ』


 突然――が俺に話を掛けて来た。


「明日使う可能性があるので、多く持っていても問題は無いからな」

『ハァーッ! それは大変なこったぁ、因みにそれ何本目だ? ダンナ』

「八本目だ」

『多いぜ? ダンナ……』

「……まぁ、使わなかったら売る予定だったから良いさ。とりあえず、俺は寝る」

『あいよ、俺も寝るかな』

「いつだって寝てんだろーが、お前は」

『暇なんだよ。、まぁ、必要なら起こせば起きるし、何かあったら起きっから呼んでくれダンナ。んじゃ、おやすみ』


 と言ってから――が存在を消した。不意にあくびが出た俺は、流石に寝ないとマズイと思い、ベットに寝転がり明日に備える為に寝ることにした。

 朝勇者御一行と会った俺は荷物の確認をした後に、ラビリンスケイブに向かう。

 村からラビリンスケイブはそこまで遠くは無く、15分ぐらいで目的地のラビリンスケイブに到着した。ラビリンスケイブと言う洞窟の前で俺は後ろに付いてきている勇者御一行の方へ振り向く。


「皆さん、ラビリンスケイブに入った場合、分断される可能性があります。どのように分断、もしくはある程度固まって動くかが大事です」


 俺が言うと、勇者御一行は頷く。


「では、行きましょう」

「はいッ」

「ん」

「ええ!」

「ああ!」


 俺の言葉に反応した勇者御一行がそれぞれ返事をした。

 そして、俺達はラビリンスケイブへ踏み込んだ。踏み込んである程度進むと岩と岩がくっつき、小さいゴーレム。スモールゴーレムが出現した。

 俺は後ろに少し下がる。すると、俺の横をティアとリンが駆け抜けスモールゴーレムに向かった。

 ゴーレムは二人を叩き潰そうと腕であろう岩を振り下ろす。それをティアはブロッキングを使い、ゴーレムの攻撃に耐える。

 ゴーレムの攻撃を受け止めたティアの横をリンが駆け抜け刀を抜いた。


 リンはゴーレムの片足を斬り、バランス崩させた。バランスが崩れると、ティアはゴーレムの腕を払い、クリティカルブレイドを発動させて胴を斜めに切り裂いた。

 それを俺は何もせずに見ていて思う。本当に、ティアは強くなった……俺の想像以上に。これも、『勇者ブレイブ』の可能性があるからか?

 と思う俺である。と思うと俺は背後に気配を感じ振り向くとそこには三体のグールがいた。

 俺と振り向くと同時にルキナも振り向いていて、ルキナは直ぐにグールに走って向かう。

 ルキナはグールにパワースラッシュを放ち、もう一体に最速で取り出したボウガンでゼロ距離パワーショットは放った。


 最後の一体がルキナに攻撃しようとした所でルキナの目の色が変わった。魔眼の発動か。と思う俺。

 魔眼を発動させたルキナはグールの攻撃を素早く避けてから背後を取り、グールの首裏にダガーを突き刺した。

 突き刺した後はダガーを抜くと、グールはそのまま倒れた。

 と思うと、ズシンと大きな足音を立てて背後から何かがこちらに向かってくるのを感じる。

 暗闇から姿を表したのはスモールゴーレムより、大きいゴーレムが俺達の前に現れた。

 ティアとリンが構えると同時に、


「ハイドロショット」


 フィーが最上級水魔法をゴーレムに放ち、ゴーレムは成すすべも無く砕け散った。

 俺はここまでモンスターの湧き具合に少し驚くと、勇者御一行はそれぞれハイタッチしている。

 何より、このパーティー超強いんだけど。まぁ、これからがヤバいんだけどね。

 と思った瞬間である、地面に穴が空き俺達は落とされた。

 あぁ、うん。だと思ったよ。言わなかった俺も俺だけど、上手く離されたもんな。俺と勇者御一行様が。

 俺は床に上手く着地をしてから辺りを見る。


「……俺一人か」


 ラッキーと言えばラッキーだ。誰にも見られる心配はほぼ無いからな。

 と思っていると、背後からドンッ! と大きな足音を立てて立ち止まるのを感じた。


「あー、ハイハイ。ミノさんね、ハイハイ」


 と言いながら振り向き、ミノタウロスと対面する俺。ミノタウロスは俺を見てから、持っている大鉈の柄の部分を握ってから、


「ヴモォオオオオオオオオッ!!」


 と吠えた。俺はそれに全く動じずる事も無く、ミノタウロスを見ていた。


「……誰に吠えてんだ? 牛野郎が……」


 殺気と気迫を放ち脅す様にミノタウロスに放つと、ミノタウロスが後ろに少し下がる。

 だが、ミノタウロスはそれ以上下がることは無く、大鉈を強く握ってから、


「ヴモォオオオオオオオオオオ!!」


 少し甲高く吠えてから俺に突っ込んできた。そして大鉈を振り上げてから俺に振り下ろした。

 俺はそれを手で受け止める事なく、障壁で止めてミノタウロスを拘束魔法を放つ。


「……攻撃したな?」

「――!!」


 俺の言葉にミノタウロスは震え出し、暴れだす。だが、俺の魔法は暴れれば暴れる程、きつくしまっていく。


「おら、どうした? ご自慢の馬鹿力でどうにかしてみろよ」


 ミノタウロスが何とか振りほどこうとするが、きつくしまっていく魔法はミノタウロスを焦らせて行く。

 俺はミノタウロスを見下ろしている所で、不意にミノタウロスが俺を見た。

 俺の目を見たミノタウロスはガタガタと震え出し、


「ヴオオオオオオオオ!!!!」


 何かに怯える様に甲高い悲鳴の様なのを俺に吠え、拘束魔法はミノタウロスを締め上げてミノタウロスはその場で倒れた。

 俺はそれを見てからミノタウロスの角を切り落とし、持っていた革袋に角を入れた。


「さて、これでミノさんは俺に近寄らなくなった。と、こうなるとヤバイからな。早くボス部屋に向かおう」

 

 俺は呟いてからボス部屋へ駆け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る