第15話 「ラビリンスケイブ~その1」


 そして、ラビリンスケイブ近くの村に着いた俺達はそこで宿泊を決め、俺と勇者御一行は村の近くで稽古を始める。

 俺はティアに新たなスキルのブレイドスラッシュとクリティカルブレイドの二つを教え、ブロッキングとパリィのスキルランクが二日でパリィがBからSまで上がり、ブロッキングがAからSS、近接戦闘能力がAからSになり、シールドバッシュがCからB上がった。

 因みにブレイドスラッシュは真空刃を飛ばすスキルで、クリティカルブレイドは相手が態勢を崩したり、隙が出来た時にのみ、強力な一撃を放つ事の出来るスキル。しかし、ランクが低ければ威力、発動と次の発動へのリチャージが遅い。


 ルキナは近接戦闘能力CからA、剣術がCからB、短剣がBからAに、弓術がAからSになり、投擲は(仮)からD上がり、パワースラッシュCからBになり、パワーショットAからS、エアリアルショットBからAに上がった。

 フィーは上がることは無かったが、「誰かに見てもらえば、ダメな部分を教えて貰えるから」と言う事でかなりの修練は積めたと思う。


 それと同じリンも上がることは無かったが、「十分に稽古をつけれた。また、頼む」とお願いされ、俺としては勘弁してもらいたい。

 と言うが、上々の稽古の結果に俺は少し嬉しかったのもある。

 そして、稽古が終わると夕方になっていた。俺は村長の家に向かい、薬を渡す。

 すると、村長が、


「いやぁ、薬師さんにとうとう花嫁さんが来ましたか、それも四人とこりゃあ夜は大変ですな!」


 とホッホッホと笑いながら言う村長。ハハハ! このエロジジィめ、何を想像しているんだい? ん?

 と心の中ではそう思い、


「いえ、そんな事は無いですよ。彼女達はそういうのではありませんから」


 とアハハハと笑いながら流す。すると、村長の奥さんが「薬師さんを困らせるんじゃないの!」と一喝された村長である。ハハハハッ!! ザマァ!! そもそも、そんな関係になる。と言うより、なれる筈がないんだよねッ!!!!

 と心の中で言ってから俺は村長の家を出ようとした。


「あ、薬師さん」

「はい、なんでしょう?」


 まーた、くだらない事だったら俺はニコッと笑って無言でこの家を出るからな。と思うと、


「最近、魔王軍の幹部がこちらの方に来ていると噂がありまして……魔王軍に見つからぬ様に帰りをお気を付け下さい」

「……貴重な情報をありがとうございます。助かりました、では」


 そう言ってから俺は村長の家を出て、宿屋に向かった。宿屋に着き、俺は借りた部屋に向かう。

 因みに値段はご飯抜きで一拍2000Gである。俺は部屋の前に立ち、扉に手を掛けようとするところで、なにか気配を感じ後ろを振り向く。


「……」

「……どうしたんですか? ルキナさん?」


 どこか不満そうな表情を浮べながら黙って俺を睨む寝巻き姿のルキナ。

 いったい全体どういうことだってばよ……。そんな事を思っていると、ルキナが俺の服の袖丈を引っ張って「ん」と言う。


「付いてきて欲しい……と言うことですか?」

「ん」

「……分かりました」


 俺は何も言われぬまま、連れられ着いたのは、


「ここは、ティアさんとルキナさんが使っているお部屋ではないですか。何故ここに?」

「入る」

「いや、それは……」

「入る」

「その私は男な――」

「入る」


 もはや言わせてもらない。俺ははぁ……と息をついてから、


「分かりました……」


 そういうと、ルキナはどこか嬉しそうな表情を浮べながら扉を開けた。


「薬師さん、きた」


 扉を開けてから言うルキナ。


「あ、薬師さん! どうぞ、この椅子をお使いください」

「勇軌遅かったじゃない」

「どうしたのかと思ったぞ」


 部屋には勇者三人組が既にいて、ベッドを椅子変わりに座っていた。

 そして全員寝巻き姿で言う。


「今日は薬師さんに稽古に付き合ってもらったお礼で私達の女子会に参加ですッ」


 と元気に言うティア。いや、そこは俺、参加しなくても良いだろ……。

 思うと、服の袖丈を引っ張るルキナ。


「迷惑だった?」


 どこか悲しそうに言うルキナに俺は、微笑んでルキナの頭を撫でる。


「いえ、そういう事ではないので安心してください」


 優しく頭を撫でるとルキナは気持ちよさそうな表情を浮かべて俺に撫でられる。


「薬師さん、わ、私も撫でて貰って良いですかッ」


 目をキラキラさせながら言うティア、


「あ、ズルイ! 勇軌、私も撫でて!」


 と対抗心と本当はしてもらいたいのかフィーが言って、


「そういう事なら、私もしてもらおうかね」


 どこか楽しそうに言うリンである。

 俺ははぁ……と溜め息を付いてから、ティアの頭を撫でる。


「お、おぉ……これは、いいですね……」


 ノホホーンと言う感じで気持ちよさそうにしているティア。その次にフィーの頭を撫でる。


「あッ……」


 撫でられた瞬間、あッ……(察し)と気持ちよかったのかそんな感じで言うフィー。

 最後にフフフと言う笑みを浮かべているリンの頭を撫でると、


「……お、あ、んッ……こ、これは……く、癖にな、なるな……」


 最初は余裕の笑みを浮かべていたリンだが、俺に撫でられると気持ちよさそうにしながら俺に撫でられた。

 そして、全員を撫で終わる俺は用意された椅子にやっと座る事が出来た。

 俺に撫でられた勇者御一行は何故か少し顔を赤くしていた。

 オッホン! と咳払いを一つしたリン。


「勇軌、稽古は本当にありがとう。助かった、そして女子会と言うのは冗談で、本当は明日のラビリンスケイブの事での話をしようと思ってな。それで呼んで貰った。と言う事だ」


 なんだそういうことか、なら何故茶番なんかした……。俺は心の中で言ってから、


「なるほど、そういう事ですか。では打ち合わせをしましょう」


 俺が言うと、勇者御一行は俺に撫でられだらけていたが、直ぐに起きる。あ、リンは既に起きていたので、ノーカン。


「ラビリンスケイブ。魔法によって迷路の様に作られている洞窟だ。毎回違う迷路で、迷えば脱出は困難の危険な所だ。そこは大丈夫か?」

「はい、大丈夫ですよ」


 俺と勇者三人組に確認したリン。俺は返事をし、勇者三人組は頷く。


「それだけで無く、ミノタウロスが徘徊している。それも複数だ。コイツらが厄介なんだが、遭遇したらどうする?」


 リンが俺を見てから言うので、俺は、


「逃げ、ですね」

「……それが得策なんだが……今回のクエストは」


 そう、今受けているクエストはミノタウロスの角が必要であった。最低でも一体は倒さなければならない。それも、いつ出られるか分からない場所で。


「だから、明日は団体行動が重要だ。言い忘れたが、フィーの上級魔法に期待しないように」

「え? 何でですか?」


 リンが俺達に言うと、ティアが分かっていないのかリンに聞く。


「あんねぇ……ティア、狭い場所で威力が高くて広範囲の最上級魔法を撃ったら洞窟が崩壊か、私達がただではすまない可能性があるのよ? 分かってる?」

「あ、確かに。そうですね……すみません」

「と、言う訳だ。ミノタウロスと遭遇した場合、一体ならば即戦闘に入り、ミノタウロスを討伐しよう」


 リンがまとめると全員が「はい」と答えた。さて、終わった事で俺は立ち上がって部屋を出ようと動いた。


「薬師さん、どこに行くんですか?」

「いえ、お話は終わったので自室に戻ろうかと」


 今の時間は20時で明日は早いので少し早めに寝ようと思う。


「今から少し薬師さんと交えながらお話をしようかと」


 ティアが言う。勇者三人もそのつもりらしく、こちらを見ている。

 おいおい、マジか……明日早いんだぞ……? と思うと、


「大丈夫です、21時には全員寝ることにしていますので。なので、お話しましょ!」


 と言いながら目をキラキラさせて言うティアに俺ははぁ……と一つ溜め息を付いてから、


「……21時までですよ」


 俺は椅子に座り直して、全員と向き合う。


「薬師さん、私どんな職が待っているんでしょうか」


 この世界はレベルが上がって行けば職、クラスチェンジが可能となっている。職が上がればステータスなどが大幅に変わり、戦況を有利に運ぶ事だって可能だ。

 だが、これは一方通行で職は上がれるが下がる事は出来ない。しかし、同じレベルでそこでなれる職が複数ある場合のみ、クラスチェンジが可能。

 ティアに聞かれた俺は少し考える。


「なんでしょうね? カリスマ性があるので面白い職になれるかもしれませんね」

「なるほど……」


 俺が言うと、少し考えこむティア。すると、俺の袖下をクイクイと引っ張るルキナ。


「私は?」

「ルキナさんは……盗賊とアサシン、ハンターの素質があるのでそれの複合でかと思いますよ」


 俺に言われたルキナは「……」と、黙り込んでいたが一人で納得していた。


「わた――」

「フィーは魔法使いなので、最高職のマジックマスターかと。光魔法と闇魔法、最高難易度の無属性魔法を覚えれば魔法使いのが目指す賢者になれますよ」

「私って言う前に私の事言われた!?」

「この流れだと思いましたので」


 俺はフィーに言ってからリンの方を見る俺。ぶっちゃけ、リンの方は見たくはない。だって絶対余裕の笑みを浮かべて肘を肘おきに付いて足を組んでると思うんだ。

 と思ってから俺はリンの方を見た。


「面白いな、私も聞いてみようか、勇軌」


 と言いながら余裕の笑みを浮かべて肘を肘おきに付いて足を組んでいた。ほら、やっぱり。

 はぁ……と溜め息を付いてから俺はリンを見る。


「リンは刀を扱うので、侍かと思いますが?」

「正解だ」


 ニコッと笑いながら言うリンである。


「でも、少し不正解でもある。私は、魔剣士も目指してるからだ」

「なるほど。では、魔法適正も高くなければいけませんね」

「ああ。それなんだが、魔法は面倒だ」


 はぁ……と溜め息を付きながら言うリン。


「なんでよ? 覚えれば簡単じゃない」

「覚えるまでが面倒ではないか」

「ある程度コツさへ掴めばあんなの直ぐに覚えられるわ」

「そのコツって掴みづらい人と、掴みやすい人がいるので結構難しいところですよ。フィー」


 俺が助け船を出して、会話をある程度終わらせる。


「ん、まぁ……確かにいると言えばいるわね」


 と納得するように言うフィー。


「そういえば、薬師さんって色々覚えてますよね?」


 すると、そこにティアが絶対に絡まれる内容を言う。


「確かに」


 すかさず相打ちを打つようにルキナが言う。

 おいおい、やめたまえ。それは絶対に聞いてくる奴や……ッ!!


「ほう、そうなのか。で、それは何処で覚えたんだ? 勇軌」


 ほらぁ!! めっちゃ絡んで来たじゃん!! と心の中で思い、


「師匠に教わったり、自分で習得したりとか様々ですよ」


 と笑いながら言う俺。


「お師匠さんって事はあれですか? 薬師を教えて下さいった人ですか?」


 ティアが俺に聞いてきた。


「そうですね。私に薬師としての事を教えてくれた人です。本当に色々ありましたからね」


 と俺は当時の事を思い出すと、鳥肌が立つ。あぁ……あまり思い出したくない記憶だ。

 と思っていると、勇者御一行は何かを察したのか何も聞かなくなった。


「さて、そろそろいいお時間でしょう。そろそろ私は退散しますね」


 と俺は言ってから立ち上がり、部屋を出ようとした。あれ、何だろうこのデジャブ感……と思う。


「そうですね、皆さん寝ましょう」


 ティアが全員に言うと、フィーとリンが立ち上がって扉の近くにいる俺の元へきた。


「では、ティアさん、ルキナさん。おやすみなさい」


 俺は先に出て扉を開ける。そのまま後の二人も出るはずなので、扉を開けておく様に支える。


「んじゃ、ティアとルキナ。明日」

「明日な」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


 フィーとリンがティアとルキナに言うと、それを返したティアとルキナであった。

 その後二人は扉を出て、俺は扉を閉めて隣の俺が借りている部屋に向かう。

 扉のドアノブに手を掛けた所で、


「勇軌、おやすみ」

「明日は頼む」


 フィーとリンに言われた俺は、微笑んでから、


「はい、宜しくお願いします」


 と言って俺は部屋に入った。

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