第13話 「マンドラゴラ採取~その2」
次の日。
俺達は火が出る前の早朝から起きて、森に向かい、朝には森に着いていた。
森に入る時に俺は予め最短ルートを作っていた、と言うより、最短ルートを知っているので問題は無い。
ただ、ウェアウルフ、食神虫、アラクネには出会いたくはないのは本心。
森に入ってから10分位が経った。
「薬師さん、こんなルート知ってたんですね……」
「凄い」
「モンスターと今のところでくわしてない」
「ここはモンスター自体がそこまで通る道では無い感じか」
勇者御一行が各々に言い、俺は先頭に立っているので全員の顔は見えないが、驚いているんだろうな。と思う俺。
こんな道を知っているのは俺と師匠ぐらいだっただろうな。
そんな事を思ってはいたが、俺は何処か違和感を感じていた。
静か過ぎる……鳥の鳴き声も、ウェアウルフの遠吠え、草木の音などが一切聞こえない……なんでだ? って、あぁ……そうだったな。
そう思いながら俺は歩いた瞬間に気付き、立ち止まる。立ち止まると、後ろにいた勇者御一行も止まる。
「どうしたんですか? 薬――」
「しッ」
俺は話していたティアに黙ってもらい、俺はナイフを取り出し、縦にナイフを振り下ろした。
「やっぱり……ここにもアラクネの罠があったのか、だからか、ここまで静かなのは」
「えっと、どういう?」
ティアが小さい声で俺に言う。
「この道は私が普段使う道で、モンスターの遭遇率が低いんですよ。この道を知ってるのはここを縄張りとしているモンスターか、私しかいないんです。あとティアさん、もう普通のトーンで良いですよ」
「あ、はい。でも、何故ここに?」
「……たまに冒険者、密猟をする者がこの道を見つけて通っている所で罠に引っかかる。的な感じでしょうね。因みに罠は外しましたから話したり進んでも平気です」
「なんで薬師さんは罠があるって分かったの?」
今まで黙っていたルキナが突然俺に話を掛けてきた。
「いつも通っているんですが、鳴き声とかが一切聞こえなかったのと違和感があったので、もしかしたらと思ってよく見たらあったんですよ」
俺が言うと、ルキナは解除された罠の糸を掴んだ。
「……これ私でも見落とすくらい細い」
「はい、そうですね」
「薬師さん、罠発見スキルとか罠解除スキル持ってなかった」
ルキナの一言に勇者四人組が俺を見る。
「どういう事ですか? 薬師さん」
ティアが驚き半分、疑い半分な感じで俺を見る。俺は一つ息を付いてからステータスカードを取り出して全員に見せた。
「スキル欄には確かに入っていない。どういう事だ?」
リンが俺のカードを見てから俺を見て言う。
「実は項目が多いと、この様に」
俺は最上級闇魔法の項目に人差し指を押し当てながら横に移動させると項目が消えた。
「え!? 消えた!?」
「どういう事だ?」
フィーとリンが驚いて俺に言う。
「カードから項目だけを映さなくしただけですよ」
「そんな機能があったんですね。このカード……」
「うん、ビックリ」
「まぁ、あまり知られてないのは仕方ないですね。冒険者の方はそこまで多くはなりませんから、多くなって魔法使いですね」
俺はカードの機能を全員に教えた。全員が納得した所で俺はカードをしまう。
「さて、行きましょうか」
俺が先導しながら森を抜けて行く、途中途中でアラクネの罠があるが俺はそれら全てを除去して、マンドラゴラ採取近くまで来た。
近くまで来たところで俺は少しだけ足を止める。
「どうしたんですか?」
後ろにいたティアが俺に聞く。
「いえ、なんでも無いですよ」
微笑みながら俺は先に進む。
そして、マンドラゴラ採取場所に着き、俺は早速マンドラゴラの採取に取り掛かる。
マンドラゴラは抜いた瞬間に強い毒素を放つ、それを吸うと幻覚、幻聴を引き起こし、神経毒で抜いた者を殺す。と言う草。
だが、これはあくまで抜き方を間違えた者の末路である。
本来は引き抜きのでは無く、
「周りを掘るんだ」
採取を行なっている俺に近づいてきたフィーとティア。
「ええ、これは引き抜くと根っこから毒素を放つので、この様に周りから掘るんですよ」
言いながら俺はマンドラゴラの周りの土を掘っていく。
「掘ったあとはどうするんですか?」
「掘り終えたら、根っこを……」
俺はナイフを取り出し、マンドラゴラの根を突き刺して切っていった。
「この様にして切れば毒素が出ずに、安全にマンドラゴラが採取出来ます」
そう言って俺はティアにマンドラゴラを一本渡す。
「え?」
「貴方がマンドラゴラを採取した場合、命に関わるので代わりに私が掘っただけですよ。そして、貴方の欲しかったものの一部です」
「あ、ありがとうございます……!!」
ティアは俺からマンドラゴラを受け取ると満面の笑みで俺に応えた。
俺はその笑顔が見れただけでも、十分な報酬だと思うぐらいだ。
「――!!」
俺は何かを感じ、勢い良く振り返る。そして、感じた。
そのすぐあとにルキナも俺の背後を見た。
「どうした?」
リンがルキナに聞くと、
「来る……なにか大きなのが……」
「――!! アラクネかッ!!」
直ぐに察したリンは戦闘態勢を取ろうとした。
「いえ! 戦闘は避けましょう! 私達のレベルはバラバラです、ここは隠れましょう!」
「でも、どこに!」
「皆さんこちらへ!」
俺に言われ、全員が戦闘態勢を解き俺の後を走って着いくる。
俺は慣れた道を使い、走って行くと家の跡地の様な場所に出る。そのまま俺は家の跡地に入り、隠し床を開けて全員を誘導させる。
「こちらへどうぞ!」
そういうと、一人一人飛び降りて地下に着地していく。最後に俺が降りようとした所で俺はアラクネを目視した。
目視したが、俺は目が良く、鷹の目の御陰でアラクネからは見つかっておらずに俺は地下に隠れる。俺が地下に行き、床を閉めて隙間から確認しながら警戒した。
その数秒後、ダダダダと足音を立てて現れたアラクネ。
アラクネは辺りをキョロキョロし、俺たちを探す。アラクネは俺達の真上で足を止めた。
流石はアラクネだ。気配と匂いのみでここまできたとは……俺達が少しでも何かをしようとすれば見つかるだろう。と思う俺。
『ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
と叫ぶアラクネ。
『逃げられた、逃げられた……!! 言い付けを……守らないと、守らないと……ッ!!』
そう言ってからアラクネは何処かへ走り去った。
俺は辺りに気配が無いか確認をし、居ないことが分かり俺は床を開けた。
「もう大丈夫ですよ」
俺は先に出て、周辺の警戒をしながら勇者御一行に言う。
全員が出ると、服に付いたホコリと土をはたき落とす。
「それにしてもここはあれがアラクネか、厄介だな……」
リンが周りの森を見てから言った。
「そうですね」
それを聞いたティアが応えた。
「てか、
ホコリをはたきながら言うフィー。
「そもそも八神将様っているの? 神様でしょ? いないと思うし、いたら魔王とか本当にヤバいモンスターとか駆除してると思うし、それよりアラクネをどうにかして。って事とで、いないと思う」
とヤレヤレと言う様にしていた。
「フィー」
「なに?」
「八神将様は頑張ってると思う」
とティアがフィーに聞く。フィーはズッコケル様に動く。
「アンタ、マジで言ってんの!?」
「は、はい……だって、神様はいつだって働いてると思うし、多忙だと私は思ったから」
ティアの言い分にフィーは「あー……」と言いながら頬を少し掻いてから、
「まぁ
「うーん……そう言われてしまうとそうなのですが……。あ、因みに守護って何の役割があるんですか?」
「守護している所で災いが起きれば直ぐに駆け付けて、その災の元を断ってくれるらしいの。まぁ、本当か嘘かは分からないけど」
少し呆れた様に言うフィーに何処か府に落ちないのか「うーん」と悩んでいるティアであった。
しかし、これ以上ここに滞在してまたアラクネが来たらお話にならないので、俺は二人に言おうとした。
「お前たち、ここで話してまたアラクネが着たら話にならないから行くぞ」
言おうとした所でリンが二人に言った。なんだかんだリンはリーダーシップがあるから助かる。
「勇軌、帰り道は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。これで街に――」
『――見つけたぁあああああ!!!』
突然声のする方へ俺達は振り向き、その存在を認識する。
『排除排除排除排除……! 排除ッ!!』
と言いながら空中からこちらに跳んできたアラクネを目視した俺達は、
「走れッ!!」
全力疾走で逃げる。先に気付いた俺は先頭に立ち、案内役として先導する。
まだ、アラクネとの距離がある俺達は急いで逃げる。
「クソッ! 私がもう少し早めに言っておけばこうなる事には……!」
リンが悔やんでいるが、リンも悪くは無い。ティアもフィーもだ。いや、もちろんルキナもだよ?
むしろ、勘の良いアラクネが怖い。
そう思った俺は少し後ろを見ると、アラクネが手から糸を出して木に引っ付けてからそれを引いた勢いでこちらに向かって来ていた。
「皆さん! 私の後に付いてこれる自身はありますか!」
「はい!」
「ん!」
「う、うん!」
「ああ!」
「じゃあ、少し危ないですけど……! 私を信じて付いてきて下さい、ねッ!!」
俺は激臭のする袋を上に投げてから、
「ファイア」
魔法で爆散させる。爆散させると激臭がアラクネを襲う。
『ギャアアアアアアアア!!!!』
あまりの激臭にアラクネは鼻を手で押さえると、糸を出していた手を押さえると糸は出ない。
と言うことは、糸で引っ張った時に乗る慣性のみで移動しているアラクネは、
『――!!』
地面に叩きつけられ、地面が少しえぐられた。その間に俺達は走ってアラクネから逃げる。
俺達は近道を使い、森を出てアラクネから逃げる事が出来た。森を出ると、全員が息を着く。
「ハァ……ハァ、何とか逃げれましたね」
疲れてはいないが、みんなに声を掛けた。
「そ、そうですね……さ、流石に……疲れ、ました……」
息を整えながら言うティアに他の勇者三人組もゼェゼェと息を荒くしている。
俺はみんなにマンドラゴラを見せる。
「ク、クエスト達成です」
俺達はクエストを達成し、街へ戻り俺はみんなに報酬を払った。
そして、その後日にまた集まり今度はミノタウロスの角を手に入れる為、ラビリンスケイブと言う洞窟に向かう事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます