第10話 「勇者が多いパーティー」


 そして次の日。俺等は11時ぐらいにはギルドに来ていた。


「薬師さん、昨日は申し訳ございませんでした」


 深々と頭を下げながら謝るティアと、何故か頭を下げているルキナ。

 実際俺は実害も受けていないので何故二人が、特にルキナが謝っているのか全く分からない。


「私は昨日薬師さんに、舐めた態度を取ったと思います。記憶が少し曖昧で……」

「いえ、別にそんな事は」

「ごめんなさい。私は薬師さんのご飯を食べて、薬師さんよりお酒も飲みました。ごめんなさい」

「全然気にしなくて良いんですよ。二人共」


 二人が謝っている所に、


「勇軌」


 フィーがやってきた。俺はフィーの顔を見る。


「私も参加させて下さいッ!」

「ええ、良いですよ」


 俺は笑顔で応えると、フィーの周りにティアとルキナが近付いた。

 三人は楽しそうに会話をしている。そこに受付のお姉さんがやってきた。


「昨日の夜、お酒を持ってフィーさんのいたパーティーの方に会っていましたね?」

「さぁ? なんのことでしょう?」


 座って三人を見ながら言う俺に、後ろに立ってテーブルを拭きながら言う受付のお姉さん。


「フィーさんが迷っている事を話したんですよね?」

「……」

「そうしたら、むしろ「あれは俺達の実力不足だった。彼女のせいでは無いです。彼女を任せても、良いですか?」って相談もされたんですよね?」

「彼女は優しいんです。ですけど、受け止められて無いんです。だからこそ、誰かが手を差し伸べないとダメなんですよ」

「それは、行った。と言うことをお認めになると言う事ですか?」

「さぁ? どうでしょう? でも、なにか言われたら困るので、薬液リンス代を二回分タダって事にしておきましょう」

「では、仕事に戻りますね」

「はい」


 受付のお姉さんが離れると同時にティアとルキナ、フィーが俺に近付いて来る。


「フィーは良いパーティーに恵まれてましたッ!」

「うん、それは私も思う」

「うん、本当に……良かった」

「そうですか。では、フィーこれからよろしくお願いしますね」

「はいッ!」


 満面の笑で言うフィーに俺は笑顔で応えるように言った。そして、予定の13時になり、俺含めた4人は窓際の席に座っていた。


「お前達が採取クエストのパーティーか?」


 座っていた俺達に話を掛けられ、俺はっその方向を見るとそこには、黒髪を後ろで一つにまとめた黒髪ポニーテールの女性が立っていた。


「「あー!!」」

「あ」


 勇者三人組が黒髪女性を指を差しながら言う。あ、この展開……まさか。


「ん!? 『勇者ブレイブ』の可能性を秘めた者達の訓練を一緒にしたみんなか!」


 だよねー、知ってたもーん。と思いながら俺はアハハハと笑う。


「えーっと……ってことは、貴方も?」

「あぁ、私も彼女らと同じ勇者だ」


 うん、そうだもんねー。もう、三人の反応見ただけで分かるよ、うん。と思う俺。


「おっと、紹介が遅れてすまない。私の名前はリン・アサヒだ。よろしく頼む」

「私は真藤勇軌です。薬師をやっている者で、一応冒険者でもやっています」

「ふむ、なら私は其方そなたを何と呼べば良いのだ?」

「お好きにどうぞ」

「ふむ……では、勇軌。で良いか?」

「ええ、構いません」

「では、私の事はリンと呼んでくれ」

「では、リンさんよろ――」

「さん、はいらない。呼び捨てで頼む」


 リンの一言に遮られた俺は驚く、だが直ぐに、


「改めて、リン。よろしくお願いします」

「ああ!」


 自己紹介が終えると、勇者三人組がリンに近づく。


「久しぶりですね、リン」

「久しいな、ティア」

「久しぶり」

「うん、ルキナも久しいな」

「確かに久しぶりね」

「……誰だ?」

「フィーよッ!! フィシリアッ!!」

「冗談だ。覚えているさ、フィー」


 ティア、ルキナ、フィーがリンに話を掛け、それを見ている俺。

 本当に仲が良いんだな、と思う俺である。しかし、確認しておくことが一つ。


「リン、申し訳無いのですが、参加って事で良いんですね?」

「ああ、そうだ」

「では、ステータスカードを見させて貰っても良いですか? あと、フィーも」

「もちろんだ」

「分かった」


 そう言うと自身の胸に手を当てると、手が光り手の平にはカードがあった。

 俺はそのカードの内容を確認した。

 リン・アサヒ。21才。レベル43。筋力S、知力A+、俊敏力SS、器用さA+、魔力B、運B。職業、上級職の剣聖。スキルポイント8。

 【スキル】勇者の可能性、心眼、近接戦闘能力A、アサヒ玄人ばいにん流、剣術SS+、刀SS+、片手剣S、両手剣S、双剣S、受け流しA。

 【アーツ】燕返しS、風花雪月ふうかせつげつA、花鳥風月かちょうふうげつA、連開花れんかいほうB、絶・九蓮宝燈ぜつ・ちゅうれんぽうとうC

 俺はリンのステータスを見て驚く、この歳で剣聖になり刀のスキルランクがSS+とは。

 この人は本当に努力をしてきた人であり、刀使いの申し子だ。そもそもこの世界で刀はあまり使われない。刀は両刃で扱いづらく、片手剣と比べると軽い。その為、扱える者が少ない。

 ステータスを見ていると勇者三人組がリンのステータスを見た。


「凄いですね! リン!」

「すごい」

「これは凄いわね」


 三人が答えると、リンは何処か恥ずかしそうにしている。

 俺はリンの習得しているアサヒ玄人流を見て驚きを隠せない。

 アサヒ玄人流はチートスキルとして扱われていた。その技を習得させて貰おうと多くの冒険者が習いに言ったと聞いている。

 だが、アサヒ玄人流は特殊スキルで自身のスキルと修練が一定以上を超えていなければ、習得が不可と言うスキル。そのせいで最初は多くの者が習いにいったが、すぐに少なくなり、今では刀使いが珍しく、その中でもアサヒ玄人流の保持者は希少である。

 俺は驚きすぎて絶句をしていると、リンがこちらを見た。


「どうした? 勇軌」

「あ、いえ……。まさか、アサヒ家のご令嬢が勇者であり、アサヒ玄人流をそこまで習得しているとは……本当貴方は素晴らしい剣士です」

「――!!」


 俺の一言に驚きを隠せず、戸惑い左右をキョロキョロし始めるリン。

 そしてもう一度俺の顔を見るとハワワ……と言うように口を開けながら顔を真っ赤にしていく。


「しょッ! しょういう事はじょ、冗談でもや、やめないかぁーい!」


 と、言いながらアハハハ!! と笑っている。それを見ていた勇者三人組は笑う。


「そ、それよりも次はフィーだろッ!?」


 フィーに指を差しながら言うリンにフィーはフフフと笑いながら前に出る。

 リンと同じようにフィーもステータスカードを取り出し、俺に見せる。

 フィシリア・ネルソン。17才。レベル32。 筋力B、知力S、俊敏力B、器用さA、魔力SS+、運C。職業、中級職のウィザード。スキルポイント1。

 【スキル】勇者の可能性、ダブルマジック、詠唱省略化SS、魔力回復向上A、第6魔法A(第6魔法は火、水、風、土、氷、雷の魔法スキルがA以上の時に統一される)、杖S、魔本A、魔法文字S(杖、本を持たない時のスキル)、妨害魔法耐性A+。

 【アーツ】ファイアA、ファイアアローA、バーニングオーラB、ファイアボールA、エクスプロードB アクアランスA、アクアガードA、バブルボムB、、ハイドロショットA、タイダルウェーブB、ウインドカッターA、エリアルゲイルA、エアレイドB、テンペストカッターA、トルネードB、ロックランスA、グランドクエイクA、クレイドールB、ロックブラストA、グランドクラッシュB、アイシクルA、アイスロックA、フロストバインドB、ブリザードランスA、ヘイルストームBライトニングA、スパークA、インパルスエッジB、サンダーボルトA、マグナティックボムB。

 流石は中級魔法使いのウィザードだ。大半の魔法を覚えているだけでなく、最上級魔法を二つづつ習得済み。それにダブルマジックが固有スキルか、これは強い。と思うと、


「フィー、ダブルマジックって何ですか?」


 ティアがフィーにダブルマジックの事について聞いている。


「ダブルマジックっていうのは、同時に二つの魔法を使うことが出来るのよ。だから、右手には火、左は雷みたいな事をね」

「なるほど、それを魔法は余り詳しく無いんで申し訳ないのですが、魔法文字って何ですか?」

「杖とか本を持たないで詠唱とか、普通に魔法使う人いるでしょ? それよ」

「なるほど……じゃあ杖と本を使う、使わないは何か違いがあるんですか?」


 俺は違いを知っているが、本職のフィーが説明出来るか気になり黙る。リンとルキナは違いが何なのか分からないのか、黙ってフィーを見ていた。

 コホン、と咳払いを一つ付いてからティアを見るフィー。


「はっきり言えば詠唱のしやすさと、魔法の発動のしやすさよ」

「ふむ、なるほど」

「杖は魔法発動がしやすくなるだけでなく、魔力を通しやすい。魔本は詠唱がしやすくなる、頭に文字が入ってきてそれをただ言うだけだからね。だから、魔法文字の場合は脳内に魔法の文字を記憶させてそれを詠唱する。けど、これは自身が詠唱を覚えていないと発動は難しいの、でも杖や魔本を使うより強力。この違いかな」


 俺は完璧に説明したフィーに拍手を送る。フィー以外の四人は「おぉ……」と驚きながら拍手を送る。そこでティアは気付く。


「あれ、そういえばルキナってスキルに魔眼ってあったけど何あれ?」

「私の魔眼はスロー状態を見せてくれる魔眼」


 言葉足らずなルキナに勇者四人が首を傾げる。それ聞いた俺は、


「要は、行動が遅く見えてそれに反応して攻撃とか反撃をするって事ですか?」

「そう、そういう事」


 俺が説明すると、勇者四人が納得をしてからティアがルキナの目を見る。


「じゃあ、いつでも使えて便利なんですね」

「ううん、魔眼を使うと視力が落ちていくの。だから、使いたくない」

「……大きな力には代償が付き物って事か……」


 黙っていたリンがルキナに向かって険しい顔で言う。


「そういうこと、私も少しだけ視力が落ちたから、だから使いたくない」

「ルキナさん、今度目を私に見せて下さい。目様の薬があるので」

「うん、分かった」


 ルキナはいつもと変わらぬ表情で言うが、声のトーンが少しだけ上がった。

 これは少し嬉しいと言う事か、最近ルキナの事が分かってた俺である。

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