第7話 「勇者はズルイ」
準備に取り掛かろうと背を向けた瞬間、
「あ、勇軌さん!」
「はい? なんでしょう?」
「不在中にパーティーに参加したい、と言う方が来ましたら、先程座っていた席に居るように言っておきます。もしくは、メモなどもしておきますね」
「助かります。では」
すでに扉近くで待っているティアとルキナの元へ行く俺。
「薬師さんは本当に信頼されているんですね」
「うん、私もそう思った」
「自覚は無いんですけどね。とりあえず二人のレベルとステータスを見せて貰えませんか?」
「分かりました」
「ん」
そういうと二人の胸の辺りからステータスカードが出てきた。それを手に取ってから俺に見せる。
ユリティア・フィン・ソイネ。17才。レベル15。筋力A、知力A、俊敏力B、器用さB、魔力C、運A+。職業、中級職のナイト。スキルポイント3。
【スキル】勇者の可能性、幸運、近接戦闘能力A、盾B、剣術B、片手剣B、両手剣C、双剣C、短剣D。
【アーツ】パリィB、回転斬りB、ブロッキングA、シールドバッシュC、パワースラッシュA、三段突きB。
俺はティアのレベルが予想より高くて驚いていた。そして、ランクの付いていないスキルは固有スキルか。
「ティアさん、固有スキルの勇者の可能性と幸運ってどんなスキルなんですか?」
俺は固有スキルの能力が何なのか気になり、ティアに聞く。
「勇者の可能性は能力値を上げてくれるスキルで、幸運は何か良いことが起きるスキルらしいのですが、詳しい事は自分でも把握していないんです。すみません」
「いえ、大丈夫ですよ。むしろありがとうございます」
いや、勇者の可能性強いだろ。マジで。まぁ、とりあえず、ルキナのでも見るか。
そう思い、次はルキナのステータスを見させて貰う。
ルキナ・ジャック・シュトゥルム。16才。レベル26。筋力B、知力A、俊敏力S、器用さA+、魔力D、運C。職業、中級職のハンター。スキルポイント2。
【スキル】勇者の可能性、魔眼、鷹の目A(観察眼が能力進化したのが鷹の目)、近接戦闘能力C、遠距離戦闘能力A、剣術C、短剣B、弓術A、短弓A、長弓B、ボウガンB、暗殺技術A+、受け流しS、投擲(仮)。
【アーツ】ハイドS、ハイドキルS、パワースラッシュC、パワーショットA、連射A、エアリアルショットB、ミラージュショットA、クラッシュアローC。
ルキナのステータスとスキルを見た俺はもう一度ルキナを見る。いつの間にかルキナの顔に付いている傷に触ると俺の顔を見るルキナ。
「本当に、頑張ってきたんだな……」
「え……」
優しく言うとルキナは驚いてからゆっくりと顔が真っ赤になると、テイアの後ろに隠れた。
そこで俺は自身の行動に気付く。
「あ! すみません! ルキナさん!」
本当に申し訳ないと思い俺は全力で頭を下げた。俺はチラッとルキナの表情を伺うと、
「……」
ジト目で俺の事を睨んでいた。俺は一つ、溜め息を付いてやってしまった。と思う。
そんな光景を見たティアはフフフと笑う。
「薬師さん、ルキナは恥ずかしがってどうして良いのか分からないだけですよ」
「え、いや。だって顔に触れてしまいましたし……」
「普通の冒険者がルキナの顔に触れようとするならルキナは触られない様に後ろに下がりますよ。ね、ルキナ?」
「……」
ティアの後ろに隠れているルキナがコクンと縦に頷いて答えた。すると、顔を赤くしながらティアの隣で寄り添いながら出てきたルキナ。
「……嫌いじゃ、ない……薬師さん、の事……」
「ありがとうございますルキナさん。では、確認が済んだ所で行きましょうか」
「あ! 薬師さんも戦うのでしたら、確認させて貰っても良いですか?」
「それはある。確認する」
俺が出ようとした所で二人に呼び止められ、俺は振り向くと同時に手にステータスカードを出しておいた。
まぁ、聞かれると思っていたからな。準備はしておいた。二人は俺のステータスカードを見る。
真藤勇軌。20才。レベル38。筋力A+、知力S、俊敏力A、器用さSS、魔力A、運D。職業、薬師。スキルポイント0。
【スキル】薬草学SS、ポーション調合SS、医術SS、鷹の目S 、毒耐性SS、魔力暴走耐性SS、魔力回復向上能力B、水魔法B、雷魔法B、氷魔法B、火魔法B、風魔法B、土魔法B、光魔法B、闇魔法S、回復魔法A、武術S、全武器S(全武器をA以上扱える場合、能力進化し、一つに統合される)。
【アーツ】ソウルブレイカーS、死霊召喚A、取り憑きA、幽体離脱A、ドレインA、デスカウントB、アベンジャーファングB、ファントムイレイザーB、ダーク・エンド・ノーチェC、アクアランスA、アクアガードB、バブルボムB、ファイアA、ファイアアローB、バーニングオーラB、ライトニングA、ライトニングスマッシュB、アイシクルアローB、アイスロックB、ウインドカッターB、ウインドブーツS、ロックランスB、グランドバインドB、フォトンB、ライトビームB、ヒールAなど……。
ステータスカードを見た二人は目を丸くしながらゆっくりと俺の顔を見る。
「どうしましたか?」
俺は笑顔で聞くと、
「あ、薬師さんって普通に強いんですね」
「びっくり……」
「まぁ、一人で採取など行ってましたから、これくらいは無いと大変な事になりますからね」
「これなら一応上級冒険者の一部ですよ」
「うん。それにスキルランクが高いから、どれだけ修練したのか分かる」
「そうですね。……んーでも……」
ティアは俺のステータスカードをもう一度見てから何か言いたそうにしている。
「何でスキルポイントが0なんだろう?」
「確かに」
そう言うと二人は俺を見て「なんで?」と言う視線を送ってきた。
「私はもう取るものが無いので、それでポイントが入らないのですよ」
スキルポイントの使用場所はスキルを習得時のみ掛かる。そこからはひたすら修練をしていく事でスキルランクが上がっていく。
「そうですかね? 私なんてまだまだ取るものありますよ! ね、ルキナ」
「うん、私もまだまだ取るものある」
「ですよね、でも私は薬師なので、そういうのは余り必要無いので、大丈夫なんですよ」
俺は笑顔で二人に応え、二人は顔を合わしてから、
「まぁ、薬師さんが大丈夫なら大丈夫だと思います」
「うん、それで良いと思う」
意見がまとまったところで俺は、ステータスカードをしまう。
「では、行きましょうか」
「はい!」
「ん」
俺達はギルドを出てグリーンウルフ討伐へ向かう。
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