第6話 「新しい仲間」
メンバーは全員で五人が好ましい。そう思い、俺はパーティー募集も予て貼り付けて貰った。
新しいクエストが貼られ、それを確認しにくる冒険者達。その中の数人が俺とティアの元へ来る。
「薬師のアンちゃん良いかい?」
「はい。とりあえず、座りましょうか」
「おう、そうだな」
そう言って俺とティアと見た目がゴツイ男冒険者の三人で窓際のテーブルに座る。
「とりあえず、報酬金の事とその他の事だ」
まぁ、まずはそこよな。実際俺は報酬金の事は余り書いていなかったからだ。
「薬草採取に5人ってのは多い方が多く取れるってのは間違いねぇな?」
「はい」
「なら、何でクエストレベルが薬草採取なんかで43なんだ?」
「マンドラゴラを手に入れに行くからです」
「マン……!? マンドラゴラだと……!」
俺の発言を聞いた冒険者は勢い良く立ち上がり、その勢いで椅子を倒す。
今の話を聞いて居た他の冒険者達も俺達の近くから離れ、パーティーの元へ戻った。
「すまねぇ、アンちゃん。今回のはナシで良いか?」
「ええ、構いません。むしろ難しいクエストを出していると思ってますから」
笑顔で言う俺に男冒険者はヘッと笑い、
「わかってて出してんだから、アンちゃんは鬼畜よな」
「すみません」
「んじゃ、また違うクエストがあってそれが俺達に見合っているなら受けるわ」
「はい、その時はよろしくお願いします」
男が去り、居なくなっていく中、全身灰色のローブで身を包んだ人が俺達の元へ来た。
俺を見てからティアを見て片手を上げて、
「や」
とティアに挨拶をしてきた。
「ティアさん、知り合いですか?」
「……その声、その挨拶もしかしてルキナ?」
そう言ってフードを取ると、茶髪で顔に少し傷のある女の子だった。
「良く分かったね」
見た目がふんわりしていて、淡々と話すルキナ。嬉しくなったのかティアはルキナの前に立つ。
「忘れませんよ。ルキナとは一緒に訓練した仲ですから」
「ありがと」
俺の目の前で二人だけの空間が出来上がっており、ただ見ている事しか出来なかった。
それに気付いたティアは俺の前にルキナを立たせる。
「紹介しますね。私と同じ勇者なんです」
「ルキナ・ジャック・シュトゥルム。よろしく」
ルキナが俺の方をずっと見ている。まぁ、俺もルキナの事をずっと見ていたんだけどね。
俺はルキナの目を真剣に見つめてみた。すると、
「……どうしたの?」
首を横に傾げながら俺に言うルキナ。見つめすぎたか、と思う俺。
「いや、すみません。結構渡り歩いて来んだな。と思いまして」
「――! ……私は盗賊で一応弓矢も使える。パーティーに入れて貰いたくて話を掛けに来た」
俺の発言に一瞬驚いた表情を浮かべたが、直ぐに平常になったのか、いつもと変わらぬ表情で話してきた。俺は一応概要を説明しようとした。
「大丈夫。内容はさっき聞いてた」
「じゃあ、パーティーに参加って事で良いですか?」
「うん、大丈夫」
「では、よろしくお願いします」
俺はルキナに一礼をしてから手を差し伸べ、握手を求めた。ルキナは俺の手を取り、握手を交わした。そんなルキナにティアは抱きつく。
「これで一緒ですね! 頑張りましょう! えいえいおー!」
「おー」
ティアがノリノリでやっているのに対し、一応乗っているのかやんわりとした感じで「おー」と言っていた。
「勇軌! ちょっと待って!」
突然背後から声を掛けられ、俺は後ろへ振り向く。
「どうしたんですか、フィー」
「私もパーティーに入れて貰たいんですけど」
「はい」
「待ってて貰えませんか?」
「ふむ、どのくらいですか? 流石に二日以内には決めて行動しようとしたので」
「あ、それなら大丈夫です。明日にはパーティーには入れます」
「なるほど」
俺はここで断る理由もない。だが、
「待つのは構いませんが、人数が集まった場合は分かっていますね?」
「はい、それは構いません。むしろ、あのクエストを受ける人なんてそうそういな――って、ルキナァ!?」
俺の横にいたルキナにやっと気付いたフィー。驚くフィーにルキナが近づく。
「や」
「ヤ、ヤァ……ドウシタノカナ……?」
「久々に見たから」
「フ、フーン。ソウナンダー」
「うん」
何故フィーがルキナに対してあんだけ棒読みというか、苦手オーラMAXで話しているのか俺には分からない。そんなフィーの目の前を虫が飛ぶ。
その瞬間、フィーの目の前にいた虫が真っ二つに切れ、フィーの前髪もほんの少しきられた。
「はわ、ハワワワワ……!」
ヘナヘナと地面に膝を付けて完全に腰が抜けた状態になっていた。そんなフィーにルキナは手を差しのべる。
「大丈夫?」
「危ないでしょうがぁあああああ!」
「フィー、虫嫌い」
「そうだけどッ」
「私が守る」
ルキナはダガーを両手に持って戦闘態勢をしながらフィーに言った。それを見たフィーは深くため息を着く。
「はぁ……ありがと……」
「うん」
俺はなんでフィーがルキナを苦手なのか今ので良くわかった気がする。
ルキナの極端な行動がフィーは苦手。だから、あんな感じなのか。
そしてこの短時間で一気にやつれたフィーは俺等を背にして、何処かへ向かう。
「どこ行くの? フィー」
「んー? 今のパーティーに戻ってクエスト受けてくるから、明日にはパーティーに参加するように頑張ってくるのよ……」
「そう、じゃあ行ってらっしゃい」
一気にやつれたフィーに手を振るルキナ。この子は完全に無自覚であの行動なんだよなぁ……・。
フィーが今のパーティーに戻り、外へ出ていった。
「フィー大丈夫かな。かなり疲れてた」
ルキナ、君のせいだよ? 無自覚だからこそ、気づいてないからあれだけど。気づいてあげて?
「本当に疲れてましたね、フィー。何故でしょう?」
「いや、むしろ見て分からなかったのか?」
「え?」
「ん? なんですか?」
おっといけないいけない、砕けて話してしまった。一応お客さんお客さん。敬語敬語。じゃないと、
「今砕けました?」
ほらね、かなり絡んでくる。
「さぁて! 一旦二人のレベルとステータス。戦闘を見たいのでクエスト受けますかぁ!」
俺は誤魔化す為に、立ち上がり簡単なクエストを受ける為にクエストボードへ向かった。
クエストボードに着くと俺に遅れてティアとルキナがやってくる。
今現在クエストボードにあるクエストは俺のクエスト除いて、レベル5の近くの森にいるグリーンウルフ10匹の討伐。レベル17の少し歩いた所の廃墟に住むゴブリン達の討伐。レベル8の森に住むグレムリン三体討伐。レベル35の近くの森に現れたウェアウルフ5体の討伐。レベル40の機動要塞タイタスの偵察。レベル45のクラーケンの討伐。
他にも色々あるが、きりがなくなる。はっきり言えばお遣いクエストが多い。
さて、どれを選ぼうかな。と俺は思うと、
「グリーンウルフなんてどうでしょう?」
ティアが一枚のクエストに指を差しながら言う。
「確かに、それならお手ごろで良いですね」
俺はそういうとクエスト表を取り、受付に持っていく。
「すみません、このクエスト良いですか?」
「はい。……では、受注しましたのでお気を付けて行ってきて下さい」
「ありがとうございます」
俺はクエストの準備に取り掛かった。
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