第6章 パクリ編

章そのものが台無しパート

6-1. 落語発 著作権経由 個性行

 m(_ _)m



 エ、おはこび、ありがとうございます。


 お初の方は初めまして。

 そうでない方は……お久しぶりでございますナ。


 いやね? アタシなんかがトリで良いのか、なんて、恐縮しちまいますナ。


 汎銀河の彼方からやってきた、かたーい頭の、ポンコツなアタシが、こうして高座にあげて頂いて。またハナシが出来るってんだから。有り難いですよ。


 飛んできましたからね? 異世界から。


 ア、異世界って言っても、転生だとか、転移とかじゃ、ありませんよ?

 『宇宙の果てから来た』ってェ、だけでして。


 ホラ。今の体と技術じゃ届かない、本来なら行けない場所ってサ?

 『異世界』みたいなもんでしょ。ネェ?


 昔の地球の、海を渡ったその先の、新大陸なんかも、かつては異世界『だった』のかも、知れませんわなァ。


 汎銀河の、地球から遠く離れた所に、『ハケデン星』って惑星が在りまして。

 えぇ。いろんな世界が数珠つなぎに繋がった、けったいな星でございます。


 その星じゃ、スポーツが流行りだそうです。


 この地球でもそうだって、聞きましたヨ? 

 オリンピックが4年毎に、どこぞの星の公転周期みたいにやってくるんでしょ?


 他にもネ?

 『AR』とかいう技術を使って、気合い弾を打ち合える、良いスポーツだとか。


 「できたらいいなぁこんなこと」が、技術アートを使って実現してく、良い時代だ。


 結局ね。地球人も宇宙人も、バトルが好きなんですヨ。それが王道。


 ア、そいで。

 ハケデン星っていう『異世界』では、技術が一周回って、アナログこそが面白い、みたいな話になっとります。


 技術があるのに、あえて使わなかったり、技術を台無しにするような、まァそんな遊びですな。


 ウー、地球の物に例えて言うなら、USBケーブル使って、するみたいな、そんな台無しな対戦スポーツってェか、マ、遊びですわな?


 ン、その星に。

 『サカラッティング』というスポーツがございまして。


 どんなスポーツかと言いますと。


 エー、地球人も宇宙人も、基本は同じで、母親への『反抗期』ってものがある。


 あいさつの「おはよう壁ドン」を拒否したりね。


 「ごはんよー」と呼ぶ母親に、「うるせえよ足八本が!」と、暴言吐いたり。


 母親と一緒の空間に居るのは嫌だと、あちこちに、消毒用のニョイニウムを振りまいたり。


 財布から金を盗んだり。


 母親と一緒に歩いてる所を、同級生に見られたくなくて、ウー、郵便ポストに擬態してみたりね?


 とにかく、思春期の男にとって、母親は鬱陶しいんですな。「俺に構うな!」みたいな。


 で。


 エー。その星に、『セリザーノ』という名の、『余命屋』を営んでいる実業家がおりました。


 人の余命を、スマホのオークション『ウリカイ』ってとこで、転売したりして、一旗挙げた人物。すごい額のズイブンを稼いでた。


 ア、あのね? 

 ハケデン星のお金は、円じゃなくって、『ズイブン』って言うんです。

 ズイブンを随分と、稼いだんですな。この実業家が。


 そんなセリザーノ。

 ある日、ちょっとした企画をぶち上げた。


 思春期の男はみんな、母親に反抗して、エネルギーを無駄使いする。もったいない、ってんで、これをスポーツに昇華しようとしたんです。


 例えばね?


 母親の財布から5000ズイブンを盗んだら1ポイント。


 母親から、敢えて離れて歩いた状態で、同級生に偶然出くわしたら1ポイント。その同級生が、片思い中の女子だったら10ポイント。


 マ、そんな感じで、反抗期特有の行動に、ポイントをつけてね?


 よりたくさんポイントをゲットした方が勝ちっていう、そういうスポーツです。



 要は、母親に、逆らってるんですな。



 だから競技名は、『サカラッティング』。



 エー、スポーツですから当然、戦う相手、ライバルが居まして。そのライバルも、反抗期の宇宙人男性なわけです。


 母親と戦う事でソレをポイントに変え。

 そのポイントの大小で、ライバルと戦うわけです。


「お前はいったい何と戦ってるんだ?」

 って声が、聞こえてきそうですな。


 部活だとか、トーナメントだとか、全国大会があるのも、ウン、地球のスポーツと同じです。


 でね?

 その星の思春期男性で、『ウォザキ』という子が居た。


 ウォザキはとにかく、『スリーポイント八つ当たり』の名手でして。


 イヤ、すごいんですよ?

 ちょっとイラーッとしたことがあると、もうね。すぐ母親に当たるんです。


 キッチンで洗い物してる、エプロン姿に八本足の母親にね?

 自分の部屋から、大声でののしるわけですヨ。


「おい! プリンも出てこねえのかよ!」

 って、大声で。


 ペナルティエリアの外から、遠距離で八つ当たりするもんだから、そりゃあもう、スリーポイントですわな。地球のバスケットボールと同じだ。


 母親が「はいはい」って受け流してくれるからこそ実現出来る、スーパープレイだったりするわけですがね?


 とにかく『サカラッティング』のポイントが溜まる溜まる。


 名門の大学からスカウトが来て、スポーツ特待生扱いで、晴れて入学。


 いや、もうね。

 反抗期の行動が、親孝行に化けたねェ。


 学費払わなくて良くなったんだから。


 そしたらウォザキは、「俺の力で学費が浮いたんだから、その分のズイブンは俺によこせ」と、まぁ、強欲な事を言い出したりして、またもサカラッティングポイントを稼いでいた。


 ウー、その後、ライバルとの死闘だとか、修行だとか、恋の予感だとか、ライパルと戦って仲良くなるだとか、すったもんだの王道展開の末に、ついにウォザキは、サカラッティングのネ? 全国大会の、なんと決勝まで上り詰めたんですな。


 並み居る強豪の反抗期のを、ドッタバッタと倒しながら。


 決勝戦の相手は、御曹司の息子。

 赤い肌の色した『キャロテー』っていう、反抗期の、思春期さんだった。



「ウォザキくん、がんばって!」

「応援してるぜ!」

「俺を負かしたんだからな、ウォザキ。優勝しなかったら許さんぞ」


 そんな声援を背中に受けながら、精力的にウォザキは取り組んだ。


「よおし! いける! このまま全国制覇だ!」


 そんな威勢の良い言葉が飛び出すほど、頑張って母親に反抗し、優勝まで王手をかけたという時に。



 ウォザキの自宅に、来たんですな。

 が。



 その中身は……ってーとね?

 こんな感じだったんです。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ウォザキ氏に告ぐ。


 あなたのサカラッティング活動は


カーリング』という著作物の


 著作権侵害に当たります。


 即刻、活動を停止するように


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ってな警告だ。


 ウーン。


 異世界どころか……異次元の方向から、やって来たねェ?



m(_ _)m






(TIPS)

【台無し】

 ものごとがすっかりダメになること。


 第6章自体が、この『だいなし物語』を、だいなしに。


 あああ! だいなしを投げないでHow?ええぇぇ!


 『サカラッティング』ね。


 ……。

 

 この中二病スポーツが大トリな時点で、だいなしでしょう……(泣)



【この章の世界観】

 拙作『汎銀河特許庁へようこそ!』の語り部にお越し頂きました。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884121561


 特許と宇宙を落語で煮込んで、各話を落語の一席に仕立てた、明後日の方向に飛んでいくです。



【上演権(現世日本)】 

 上演権という権利があります。著22条。


 「公に」上演することを独占する権利であることと、非営利かつ無料の上演には権利が及ばない(38条)ことが、ポイントです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る