台無しパート

5-5. 私がニョイニウムだ!

 オーイ教授は、地下構内に置かれていたキックボードを引っ掴み、それに乗った。

 ニョイニウムの巨体に近づく。


「オーイ教授! アレに取り付くのは無理です! 危なすぎます!」

 ケイ青年が叫ぶ。


 しかし――。


「やってみなければわからん!」

 叫んだ教授は手を伸ばす。

 ニョイニウムの巨体の足に触れる。




 ∽∉∉⊆Å知っていると思った宇宙に瞬間に知へのさらなる扉すなわちイデア界への扉は∴閉じられる行きたすぎて観察をして本質を顕にする震える!




 オーイ教授の脳に、金属の塊からの、思考の奔流。


 意味不明なその思考には、優秀な生徒搭乗者スチューロットでさえも、混乱したことだろう。


 しかし。オーイ・オチャノミルク教授の驚異的な思考処理能力は、ミックスジュース如く混沌とした思考それぞれの、識別、分離を行い得た。


(この思考は、ソクラテスの『無知の知』。この思考は、プラトンの『イデア論』。この思考はアリストテレスの観察。震えているのは……おそらく、乗っているカナン君だ)


 『人間の世界』という球状領域を外に向かって押し広げる、しか持ち得ないであろう、恣意の――あるいは意志の――力。



 そして、『考える金属』であるニョイニウム知能の器が、問うてくる。



『我は、何者ぞ』



 教授は、答える。



「哲学的ゾンビであれ……と、人間から存在だろう?」



だ』



 ニョイーンと音がして、巨大な人型の金属が震える。

 そして――起こった怒らないでね?――。




 プワーン― その金属は ―モニョニョーン― 巨大なる球となって ―プッカプッカ― 地下空間に浮かび ―グッシュンッ― そして落下した ―

  


 オーイミルクティ― 平皿の上の牛乳に1滴 ―ングニュニュポタン― 滴を垂らした時に ―パシャー馬車ーパシャー― ハイスピードカメラが撮影する ―ンンズォォパッカァァモリッ― 点対称放射状に浮き上がる王冠形状のように ―ズベべべニュオッ― 金属の流体は広がり ―



 タケコノサトセンタンパツーン― ミニスカートの女性であるカナンヒガシノを ―リノリウム― リノリウムの床に ―グヌヌヌヌペッ― ていねいに吐き出し ―



 ニョイトメニヘラン― そして優秀な壮年教授の ―キュッボーンボーン― やや鍛えた中年の体へと凝縮し ―ニュオパツンタイツン― 覆うようにまとわりついて行った ―



 アッタマドゥナッテン― オーイオチャノミルク教授の思考に ―カジョー― 反応し ―


 

 シュパーマリッオシュンッ― その金属の、体積すら、減らしながら ―




「……教授?」

 ケイ青年が言う。


「オーイ……教授?」

 床に倒れたままの少女、カナンが、顔を上げて言う。


 たしかに形状こそ、2人の知る、壮年教授のシルエットだった。しかし――。


 金属は、粘土のように、網タイツのように薄く延び、そして全身タイツのように、教授の、歳の割には引き締まった全身を覆っていた。



 銀の金属色に輝く、人間のサイズ、人間の形。



『「私が我はオーイ教授だニョイニウム」』




 ◆




 その布状に延びた金属を、オーイ教授から引き剥がすのには、司書達の力も借りて数時間かかった。


「「オーイ教授!」」


「ふう……ここは?」


 引き剥がされた金属は、元の形状、元の密度へと、再度成型されていくらしい。つまり、のっぺりとした巨大な人形塊へと。しかしその作業は、オーイ教授たち3人が負うべきタスクではない。



「カナン。教授に迷惑かけすぎだよ。あやまろうよ」

「うん……オーイ教授、ごめんなさい」


 2人は、深々と頭を下げた。

 オーイ教授は「やれやれ」と額の汗をぬぐい、あたりをキョロキョロと状況確認した後、カナンに向かって言った。


「まったく……愚か者。まぁどうやら、人が死ななかったようで良かったな。ニョイニウムに取り込まれた感覚はどうだった? カナン君」


「本当にごめんなさい……小難しい事を沢山言ってきて、哲学の洪水みたいで。『もう無理ー!』って感じでした。人間の乗り物じゃない!」


 オーイの苦笑。


「……私は、ソレに乗って出兵するんだがな?」


「教授はもう、人間を超えてますよー。知能がおかしいもん」


 オーイの微笑。


「……破壊された本棚やキャリーの弁償、カナンにしてもらうかな」


「えー!? むりむりむり! ごめんなさいごめんなさーい!」


 オーイの苦笑。


「しょうがないな。私がフロンデイアに勝てば、戦争も終わり、研究費も潤沢に入るだろうから、それで充当することにするか。カナン君は、今回の体験をレポートにして提出するように。乗る人間によってAIの場合は?、感覚や戦闘能力がどう変わるのか。大事なポイントでもあるからな」


「あんなの、もうわからないですー!」


「そうか? ニョイニウムが、ソクラテス的な発言とか、プラトン的な発言とか、アリストテレス的な発言とか、していたはずなんだが……」


「まったく意味不明でしたよー。『無知のイデアが物自体……』って感じで」


 オーイの失笑。


「3人の個性で、分けられないのか? そうか……。でもそれはいいヒントだ。3つの個性として捉えるのではなく、一つに混ざったフュージョンした新たな人格と捉えて対話する。その方が、あの機動哲学先生モビル・ティーチャーの操縦は、効率的かもしれない」


「もう、おっしゃってることがわかりませんー!」


 オーイの


「まぁいい。複数金属差個性ミックス機体との対話方法は、私が構築していくから。ともあれ、レポートは出してもらうぞ? ……なんなら、そこに居る、ケイ君の助けを借りてもいい」


 オーイ教授は、ケイ青年のカナンに対する恋心に気づいていた。

 さりげないアシスト。



「僕も手伝うから、カナン。僕は、カナンの指導チューターだもんね」

 ケイは、微笑に隠されたオーイ教授の真意など、気付いていないかのように、無垢な表情で喜び、そう言った。


「ケイくんありがと。それは助かるんだけど……。レポート、いつまでに提出すればいいですか? 教授」



 教授は。



 会心の表情を見せた。

 


 微笑や苦笑といった区別すら出来ない程、感情、思考が混ざりあったかのような。


、やっておくように。厳しく採点するからな?」


「先生のその表情、ほんと怖いんですよー?」


「ふん。AIにレポートを書かせたらいかんぞ?」

 自尊心と知性ととで体をいっぱいにした壮年の男は、そう言った。



 その時。



 既に引き剥がされた、ニョイニウムの塊が、小さな問いを発した。



『我は、何者の個性ぞ』




<続く>





(TiPS)

【台無し】

 ものごとがすっかりダメになること。


 今回の台無しは、『幼稚』。

 プッカプッカ― 地下空間に浮かび ―

 

 いやああ擬音とルビを投げないでぇぇ! (泣)

 ほんと、ごめんなさい……。



【AIの中で、個性が混ざる問題】


 AIに、流行りのディープラーニングで、絵を学習させたとします。

 けも○フレンズの絵と、シュタイン○ゲートの絵と、スレイ○ーズの絵を入れた……としましょうか。


 そしてAIに、絵を出力させました。

 そうしたら、手塚治虫先生の絵に酷似した絵が、たまたま出力されちゃった(という仮定)。


 これ、手塚先生の美術の著作権の、侵害になりますか?

 現行法だと、侵害になるには、元の絵に「依拠」してなきゃいけないんだけど……?


 ……そういう謎の問題が、眠っているよ、というお話です。



【成りすまし問題】

 『人間の寄与無しにAIが生成した著作物には、著作権は発生しない』

 ……なーんて話を、5-3.でしました。


 でも。AIを扱う人の人情からすると?


利益権利は欲しい!」

 って、なりそうですよね……。


 そのために取りうる手筋、それは。

 AIに創作物をほぼ自動で生ませて本来は権利発生せずおいて、「これ、俺が作ったから、俺の権利ね義務は誰に?!」と主張すること。


 例えば、絵を他人が見たら、本当に人間が描いたのか、AIが描いたのか、分からないこともあり得るでしょう。


 そうすると……? (ここから先は「7.まとめ」参照)



【次章予告】

 最後の第6章は……。

 結論の無い、そして、書くのが最大級におっかない話をします。


 ズバリ。 


「パクリとは?」


 です。


 等身大でやります。

 では、最終章も、お見逃し



(著者注:この物語は、ですう!!)

(すいませんすいませんすいません)

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