13発:ツンだ、ツンだ!

「冒険者レベル『ゼロ』ってどーゆーことですか?みんな、最初はそーなんかな?」


「…いえ、見ました!私もちょっと動揺しておりますっ」


 ――ええッ!?

 初めて、どゆコトー?


「通常、登録したて、それまで特になんらかの功績や修行を積んでない方であっても、最低レベル1はあるんです。

 ですから、私も冒険者レベルは『1』からスタートするもんだと思い込んでおりました。ちょっとコレは“奇蹟的”です!」


 おいおい。

 受付嬢さん、ちょっと興奮しとるやないか!

 そんな珍奇なモノでも目にしたかのような視線で俺を見るなって。

 見るなら、さっきみたいなさげすむような冷たい視線プリ~ズ。


「それにしても、どうしましょう?」


「ナニがですか?」


「普通、最初に冒険職ジョブが選べるのですが、選択肢が何一つ出てこないんです」


「どーゆーことでしょう?」


「ノージョブ、です」


「ノージョブ?」


「はい、無職、です」


 なんてこった!

 まさか、異世界に来てまでニート確定とは、さすがにビックリだぜ!

 ほんと俺は、ニート界の王子様プリンスだ。

 ニトプリ、って呼んでくれても構わん。


「どーすりゃ、その冒険職っての、手に入れられんの?」


「まず、ここをご覧ください」


 タイプライターのような装置上空に浮かぶ光のカーテンのようなデータを覗き込む。


「この冒険者経験値という数値が今、『-1』になってます。

 これをまずは、『0』にすることができれば、冒険者レベルは『1』になるはずです」


 ――なんてこった。

 0からのスタートかと思ってたら、経験値的にはマイナスからのスタートかよ。

 借金背負って、経験値的にマイナスって、俺はどんだけ底辺からのスタートなんだよ。

 幼女神ロリがみが云ってた、異世界転生のエクストラモード、ってのは、こーゆーことなのか?

 転生前の現実世界リアルガチだって、少しは…ほんの少しくれーは、経験値あるはずだぞ。

 なんで現実世界リアルガチよりハードル上がってんだよ。

 ほンと、ゴミ運営だな。

 おい、運営、おまえのことだよ、幼女神ロリがみ


 隣で興味なさそーに、まだ鼻をほじり続ける幼女神ロリがみ

 小指の先についた鼻クソをと眺め、首をかしげる。

 そういやコイツ、本来は実体とか不要なんだっけか?

 転生して実体化、要は受肉じゅにくしたんだわな。

 まぁ、物珍しいのかもな、実体を伴った人の姿ってのがな。


 ――パクッ!

 わわっ!

 コイツ、鼻クソ、喰いやがった!


「こらッ!ハートちゃん様ッ!それ、喰っちゃダメ!」


「えー?なんでデスかー?メシ喰うのにお金かかるんだったら、タダで食べられるもん食べればいいじゃねーデスかー」


「…は、食べ物じゃありません!

 それにさっき、あんだけ沢山喰ったろ!とにかく、そんなマネしちゃ~、あかん!」


 不満げな表情を浮かべる幼女神ロリがみであったが、取り敢えず、云うことは聞いてくれたみたいだ。

 まいったね、こりゃ。

 なんか、子育てみてーになってきたじゃねーか。

 俺の求める神聖不可侵ロリと、なんか違うッ!


 ――さて、と。


 まず、冒険者経験値っつーも得なきゃならん。

 ノージョブ、要は無職のまんまだと、スキルやボーナス、エフェクト、マジックほか、いろいろ使えないものが多すぎて厄介らしい。

 つーことで、まずは冒険者レベルを1にするため、冒険者経験値を1以上獲得し、経験値を0以上にしなくては。

 そのためには……

 どーすりゃいいの?

 教えて、受付嬢のおねーさん♪


「冒険者向けのお仕事を引き受けるのが一番いいです。

 お仕事依頼は、ギルドの酒場にある『お仕事募集掲示板』に掲載された各種お仕事依頼の貼り紙から見付けるか、ヘルワークというお仕事検索専門の情報端末から各種サーチするか、もしくは、ATMで自身の冒険者アカウントにアクセス後、プロフィール設定をしてを公開してお仕事を募る、あるいは、アカウントにあるお便り箱に直球お便りダイレクトメールされるのを待つ、のが通例です」


 むー。

 なんか、めんどくせー、な。

 とは云え、なんもしないワケにもいかねーから、取り敢えず、酒場にあるっちゅー掲示板でも見てくるか。


 怒りのおさまっていない店員に掛け合い、しぶしぶ酒場への出入りを許してもらう。

 何せ、酒場そのものを出禁にされちまったら、掲示板すら見られなくなっちまうから、ここはひたすら平身低頭。


 幼女神ロリがみはどーせ使い物になりゃしねーから、受付前に置いておく。

 ここから動くな、とキツく言い付けたが、守るかどーかあやしーもんなんで、受付嬢にもロリがここからいなくならんよう、見張っておいてもらう約束を取り付け、店員と共に酒場へ向かう。


 お仕事募集掲示板というものは、酒場各処の柱や壁に設置され、確かに数多くの依頼募集貼り紙を目にすることができる。

 飲み食いしてた時にはまったく気付かんかったが、なるほど、こりゃ便利。

 結構な量があるんで、こいつはすぐにでも仕事見付かるな。

 この当たり、現実世界リアルガチより“優しい世界”。

 俺、好きよ、優しい世界。


 ――よっしゃ、探すぜ探すぜぇ~!


 小一時間、探しに探し回った。

 何度も募集の貼り紙を見て回った。

 なのに――

 俺達に見合う募集条件が一つもない・・・だと・・・

 なんてこった!


 いや~……

 初めが肝心だと云うのに……


 ――詰ンだ詰ンだ♪

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る