どれが正解?
八月も後半になると東北地方は、早めの秋の匂いが漂う。
あれから一樹は“結婚”を匂わせる言葉は言ってこない。私を悩ませることを言わずに居てくれてるのか…けど、別に私は一樹と今の関係を続けることに違和感など感じていなかった。
ましてや二つ仕事をしていると、自分にとっての優先順位一位に仕事が来てしまう。
私は変なところで真面目なのかもしれない…
結婚するまでの二人の時間を大事にしたいし、間違ってもデキ婚はしたくなかった。
もちろん大人なので、夜の営みはするけども。
そんな、ある日母親から電話がかかってきた。
何かあったのかな?…なんて思いながら電話に出ると…
「エミが子供出来たってよ」と短刀直入に母が放った。
エミとは私より6つ下の従姉妹だ。
自分とは間逆で子供の頃から頭がよく運動も出来て、高卒だと言うのに大企業に就職した。
それはそれは私のような出来損ないとは比べ物にならないくらいに祖父母から可愛がられているわけで…
そのエミに子供が出来たと聞いて率直な気持ちは“で?”だったかな。
『おめでとう。デキ婚?』
「うーん…そうみたい。おまけに相手は今ニートなんだって」
『頭悪っ』
ここで性格の悪さがうっかり出てしまう。
「そんなこと言わないの」
『まぁ良かったじゃん』
なんて口先では言うけど、頭の良いはずのエミがろくでもない男を選ぶなんてね…
頭の悪さに電話越しで口角が上がってしまう。
「あんた達は、いつ結婚すんのよ?」
『うちら?うちらは、焦って結婚する理由も無いし。エミが子供出来たならわざわざこっちが急いでひ孫見せる必要も無くなったしラッキーだね』
…ぶっちゃけ、子作りなんて考えてもいないし、周りが“子供作りなよ”なんて言ったってその気持ちが一切ブレることはないだろう。
「あっそ。まぁそういうことだから、結婚を考えてるならエミ達とは時期をズラしなさいよ。今は、おじいちゃんもおばあちゃんもエミのことでいっぱいいっぱいだから」
お母さんが言わんとしてることは伝わる
…要は、今孫が一気に結婚したら祖父母が金銭面で大変だからってことだろ。そんなの知らないし…。関係ない。
そもそも“結婚”は焦らされてするものでもないし、自分達と周りが納得して初めて成立するものだと思ってる。
デキ婚に反対はしないけど良いものだとは思ってない…賛否両論あるだろうから、ハッキリ言ってどうでもいい。
ただね…若さの勢いだけで計画性も無しに子供が出来たから結婚しまーすって人と、若くてもちゃんと順序を追って結婚した人と、“どっちを祝いたくなるか?って聞かれたら…
“若くてもちゃんと順序を守った方”を私は盛大に祝うだろう。
『あたし達は結婚したい時にするよ。別にエミとかじいさんばあさんのことは、どうでも良い』
「アンタは子供とか考えてないの?」
『結婚してないのに子供?それおかしいでしょ。妊娠って普通は結婚してから考えるものだよ』
「そうね…けど、そろそろ考えてもおかしくないでしょ?」
『何?
触発されて孫の顔でも見たくなった?』
「お母さんは、いつだってそれを望んでるよ」
…私のお母さんも、祖母も、そしてエミの母親も、今回エミを含めて身内は20代前半でデキ婚をしている。
だから結婚に対する一般的な考え方とは少し違う。
若いうちに子供を作ることが偉いとでも思ってるようだ。そのくせ、苦労してる背中しか見せないくせにね。
私は若いうちに人生の経験値を上げることの方が重要だと思ってるわけで…
結局のところ“自分が一番好き”だから今は“子育て”がハンデでしかないんだ。
それにデキ婚でその後離婚して苦労してるシングルマザーを水商売時代に腐るほど見てきたし。
『んじゃ、とりあえず姪っ子の子供でも可愛がってあげてよ。
結婚は考えてても子供は考えてないから』
キッパリと言い切るとお母さんは受話器の向こうで“わかった”と呟いた。何処か寂しそうに。
まぁ~驚いたな…エミがデキ婚か。
同じ女として思うことは…あの若さならまだ色々できただろうし、男を選べるだけの時間はまだまだあっただろう。
しかも相手はニートだなんて、お腹に宿ってる子供が気の毒で仕方ない。
けどこれで…祖父母や周りの口うるさい親戚は“美咲ちゃんはまだなの?”とかチャチャを入れてくるんだろうな。
※筆者はデキ婚に対して否定的な気持ちはありません。エミがただたんに嫌いなだけなので、あしからず。
【幸せの掴み方は千差万別。
何事も年齢に縛られる必要なんてない。
早くに子供を作ることを望むならそれでも良いだろう。独身で趣味や仕事にお金や時間を使うことも良いだろう。所詮人生なんてものは一度しかないもの】
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