心も外も雨模様
2017年の夏は少し変だった…
もちろん暑いけど、雨が多くは無かっただろうか?
天気予報を見れば、どの地域も降雨のようだった。洗濯物が乾かないから、勘弁してよね。
せっかくの休日も雨のせいで何もやる気が起きず…
『コーヒー煎れるけど飲む?』
「あぁ、もらう」
私はキッチンに立って、お湯を沸かしていた。
…~♪~…
私のスマホの着信音が居間から聞こえてくる。
『電話、誰から?』
居間にいる一樹に聞くと…「香織ちゃんからだ」と言われ慌てて電話に出た。
何故なら、8月前半にRussoに体験入店に行くと言っていたから、その報告だと思って。
けど…電話に出ると香織ちゃんは大泣きしている様子だった。
『ちょ…どうしたの?』
「龍…っ、龍弥く、んが…」
『龍弥がどうしたの?』
少しばかり心臓の音が高まる。何があったって言うのよ。
「ウチの…っ、けいたっ、い。かっ、てに見て…っ」
途切れ途切れだけど、その言葉だけで全部理解することが出来た。
『まぢ?香織ちゃん今何処に居るの?』
「今っ、自分の家にいてっ…ぐすっ。龍弥君怒って、ひっく、K町に帰りましたっ…」
『LINE見られたの?』
「はいっ…お姉さんっ、の内容と、ぐっす…お客さんっ…との、LINE…ぅ」
心でため息が漏れてしまう。いや、多少の責任を持つつもりだったけど。
バレるの早すぎない?爪が甘すぎるんだって。
『そっか。わかった…とりあえず落ち着きなよ』
泣き続ける彼女に自分もどうしたら良いのか分からずに、ただただその後も宥めた。
どうやら龍弥は、香織ちゃんがキャバで働いていたことも私と裏で手を組んでいたことも全てを知ったらしい。
裏で手を組んだと言っても、別に悪いことを犯したわけではないんだけども。
龍弥は水商売を頑なに嫌がっているらしい…
電話がきれた瞬間に『はーっ』と大きなため息が出るくらいに一瞬で神経がすり減った気がする。
「バレたのか?」
一樹もまた心配そうにしていた。
『バレたみたいだよ』
「龍弥、今頃落ち込んでるだろうな」
『落ち込んでるも何も…養えない男に彼女の仕事を、とやかく言う権利もないでしょ?』
この間も同じことを言ったが、私はこの考えがズレてるとは思ってない。むしろ正論。
「んなこと言ったって、高3のアイツが理解できると思うか?」
『まぁ…話してみないと分かんないけど』
「どっちの肩を持つわけ?」
『どっちの肩って…あたしは香織ちゃんかな。龍弥が理解するべきだと思うもん』
「んじゃ俺は龍弥の肩持つよ。
そうしないと、アイツが惨めだろ?」
一樹の龍弥に対する優しさが、私の心の奥をツーンとさせた。
おそらく、この後姉弟喧嘩になる可能性は高い。責められることも十分に予測が出来る。
そんなことを考えると…すでに胸が重いよ。
ただでさえ外が雨で憂鬱な気分だと言うのにさ。
最近ようやく色々と落ち着き始めたと思っていた矢先のことだった。
頭の中で危険信号がカンカン鳴っている。
【水商売に悪い印象がある人を説得させることなんて、実際に出来るんだろうか。
何度も言うけども水商売で働くことは悪いことでも罪でもないんだよ。】
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