金銭感覚


「佐藤さん、来月のシフトです。間違いは無いかな?」


シフト表を渡され目を通す…んんんっ?出勤日数15日!?先月までは20日出ていたはずなのに…たったの15日4時間勤務。

他のパートさんのシフトを見ても大体同じくらいだった。


15日×4時間×1000円=6万!?それにプラス交通費の1万5千円で計算しても8万いくかいかないかくらいだ。もう少しお金が欲しいよ。稼ぎたい。

カメレオの遠征が二回重なったのと、飲み会でM市に毎月行ってたので気づけば貯金は100万をきっていた。


これでも月に3回行っていたエステだって月に1回しか行っていないし、美容室だって月1だったのを2カ月に一度にしたりと自分なりに節約をしているつもりだったのに…


遊びたい欲が尽きないのと、水商売で散財する癖がついたまま直せずに昼職を始めたものだから、金銭感覚が狂ったままで…

これは全部自分が招いた結果だ。


もう一つ仕事を増やす?

“K町 高時給バイト”グーグル先生で検索をかけるも…全然出てこない。

そうだよね…うん。わかってた。


んじゃM市に週に1回でもキャバに出勤する?バカバカバカ!あんなに盛大に見送られた手前…水商売には戻りたくは無い。それに水商売をやるなら中途半端にはやりたくない。白か黒。0か100。そうじゃなきゃいけないんだ。


私は仕事終わりにその足で実家に向かった。


『今の仕事全然稼げないんだけど』

「あら、そうなの?シフト入れてもらえないとか?」

『予約が入ってないとそもそも出勤にならないからね』

「そういうことか」


コーヒーを飲みながらお母さんに相談。


『もう一つバイト増やそうと思うんだけど』

「あぁ~そういえば、アンタの近所のコンビニ募集してるよ!そこのオーナーとお母さん知り合いで。いつも誰か働く人いないかって探してるし」

『コンビニか~』


それだけはゴメンだ。そこのコンビニのアルバイト募集の張り紙は見たことがある。

時給750円!そんな安い時給で身を削るなんて、やってられない。


「レジさえ覚えれば楽みたいだけどね」

『コンビニってさ、なんか微妙じゃん』


全国のコンビニ店員さんごめんなさい。けど、そう思っていたのは本心。


「けど週に2回でも良いからってオーナーさんは言っていたよ」

『それまぢで言ってんの?』


人が足りていない企業って最初はそう言うんだよね。いざ働いたら良いように使われるのがオチだ。やはり、エステは二ヶ月に一度、美容室は三ヶ月に一度。節約しよう。


母親とああでもないこうでもないの会話を繰り広げ結局は「まぁやる気があるならオーナーに話しておくから連絡しなさい」と言われた。


その日、家に帰ると年金事務所からの書類と国民健康保険の支払いの紙が届いていた。

恥ずかしい話だが、私は夜職を始めた19歳から今まで年金を払ったことなど一度も無い。


何に使われてるのかも分からないと言うのに国に月に1万5千円を納める意味も分からないし…だから前年度の所得を無しということにして全額免除の申請をし年金の支払いから逃れてきた。

国保は、いつ病院にかかるか分からないから仕方なしに払っているが、毎月7千円は痛い。


やはり、何かしらのバイトはしなきゃいけないのか。


【水商売を辞めた後の究極の落とし穴だと思う…

金銭感覚が水商売の頃と変わらず出費ばかりが増えていくということ。

それだけ水商売と言うのは金銭感覚を狂わせる仕事でもある。


多分この辺で、水商売に戻れる人は戻るんだろう。】

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