第5話 ミイラならぬミーラは夢と現実を喰らう
「なっ······!?」
写真を見せられた歩夢は驚愕した。
男が取り出した写真──そこに写っていたのは、そこに写っていた熊川の遺体は欠けていた。
そして欠けていた場所を見て再度驚く。
そこは夕飯の前に仮眠をとった時、夢に出てきた熊川がミーラに喰われた場所だった。
「君は見覚えがあるんじゃないか?調べてみるとこの男は、君のクラスの担任、ましてや君は一度、我々と夢の中で会ったことがある。それほどに君はミーラに縁がある。そんな時に起きたこの事件。君が知ってても不思議じゃないだろう?」
男は俺に顔を近付け、語気を強め迫力が増す。
「おーっとそうだった。自己紹介なんていつぶりかな。俺の名前は
そう言って秋本は腰に巻いたベルトから銃を取り出した。本物だろうか。だとしたら、この男は少年の前で堂々と銃刀法違反を犯しているのだ。
「ミーラを······殺す?そもそも
二人は周囲を警戒しているが状況は見知らぬ黒ずくめの男達に囲まれていることに他ならないため、自分の心がそのまま行動に表れるかのように小さく体操座りをした。
「今言ったばかりだろ?奴等はミーラ。夢と、そして現実を喰らう。そして俺たちは、ミーラから君らを守る正義のヒーローさ」
タバコを吹かしながら得意げに秋本は言った。するとそこに見張っていた残りの連中の片方の男が話に割って入ってきた。
「正義のヒーローだなんて言わないでください。僕たちは自分のしたいことをしているだけ。それは正義じゃなくて都合でしょう?」
男はこちらに目を向けることなく、最後に「あとタバコ消してください」と言った。ミーラはタバコの臭いに反応するほど、嗅覚が発達しているのだろうか?秋本は「やれやれ」とため息をついてタバコの火を消した。
「アイツはウチの指揮官みたいなもんだ。名前は
仲良く、という言葉に疑問を抱いたが、それはきっとあまり警戒しないでやってくれ、という意味だろう。と俺は勝手に納得した。
その頃の俺はこの先に起きることを知らないのだから。
それからしばらくその場の無音は続いたが、秋本は急に何かを決心したように話し始めた。
「さて、ここからが本題だ。水月歩夢、俺たちと一緒に奴等······ミーラと戦ってはくれないだろうか」
それは先ほどまでの秋本とは顔つき、声音、様々なものが違っていた。しかしそれ以上に今の俺には状況が理解出来ていない。
「もちろんすぐに返事をくれとは言わない。君も自分のことや周りのこと、それらのことを深く考えてから決めてほしい」
じゃあな、と立ち上がりどこかへ歩いて行く三人の後ろ姿を見ていると、徐々に視界がぼやけてくる。
気が付くとそこは、元の自分の部屋だった。
夢想戦線 蘇来 斗武 @TOM0225
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