第4話 黒ずくめの男達に救出される

姉と夕食を食べ終えた歩夢は一足早く入浴し、湯船にかりながら放心していた。

夢で熊川くまがわがミイラに喰われた事と、現実で熊川が亡くなっていた事······それらは偶然に過ぎないはずなのにどうにも落ち着かない。けれどいくら考えても仕方ないので早急に浴室をあとにする。


明日は土曜日なので、まだ学校の用意はしなくてよかった。他にすることもないからベッドに入る。目を閉じてまだ意識があるなか、ふと夢の光景が脳裏をよぎる。

「あんなの······ただの偶然だ」意識が深い暗闇に落ちる。


目を開けると視界いっぱいに緑色が広がっていた。

「ここは、森?」

よく見ると木々の隙間から光が指している。とても綺麗な場所だった。自然を身体中に感じられて穏やかな気持ちになれる。気持ちによく昼寝をするように木陰でそっと──目を閉じようとした瞬間、まただ、誰かの叫び声が聞こえる。


歩夢は即時に飛び起きる。見ると知らない男があのミイラに追われている。

「ああ·····ああああ、ああぁぁぁ!!」

追いつかれた男は肩から喰われている。目の前の光景に体が震えて動かない。

喰い終わったミイラは新たな獲物を探しているのだろう、周囲を探している。

 まずい。目が合った。

ミイラが追いかけてくる。


まずい、まずい、ヤバいヤバいヤバい!?来る······追いつかれる······っ!


バァン!!


「こっちだ!早く来い!」

急に腕を引っ張られて近くの茂みに引きずり込まれた。

「いった······!」

体を丸くしたままゆっくりと目を開けると「···っ!!アンタら、こないだの!?」

そこにいたのは、少し前にミイラを吹っ飛ばした黒い服の男たちだった。

男たちは「黙ってろ」といって俺の口を塞ぎ、辺りを見回している。

そして数秒後に何かを確認してから安堵の息をつき、俺の口から手をどかした。

「お前なあ、いくらビックリした上に多少痛かったとしても、まだ奴らがいるんだから騒ぐなよ······」

3人のなかで一番年をとっているように見えるが、それでもまだ30代といったところか。見たところ物凄くガタイがいい。近くで周囲を見張っている他の男女2人は確実に20代だろう。この男よりは細い、普通の学生っぽい見た目だ。

「アンタ······誰だよ?さっきのデカイ音は?」

起き上がり服についた土や落ち葉を払いながら聞くと、男はその大きな体でポケットを探り、何を取り出すのかと思うと、タバコを手に取って話し始めた。

「奴等は夢喰い──俺たちは“ミーラ„と呼んでいる」

「ミーラって、見た目通りの名前だな」

いくら全身を包帯でおおっていてハロウィンに都会を歩いてそうな見た目でもさすがにそのまんま過ぎやしないだろうか。


 まあいい、奴等のことを全く知らなそうなお前に、良いことを教えてやろう、そう言って男はある写真を取り出す。


───「奴等のいる夢は······現実になるんだぜ······?」


そこに写っていたのは、熊川の遺体だった。

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