第3話 久しぶりに見る悪夢は嫌な予感を感じさせる
「それでは、これから平和になるにはどうすればいいか考えて今から配る紙に書いて提出して下さい」
担任の
道徳の授業はつまらない──思っていない偽善を並べて世界が平和になるとでも?
平和になんてなるはずがない、と誰もが分かっているはずなのに真実から目を背け続ける人間に平和を目指す権利があるのだろうか。とうに答えが出た問題をいつまで考えているのだろう。
そんなことを考えている間に周りの人は机に向かって黙々とシャーペンを走らせる。なら、俺もテキトーに書いておこう。
“一人一人が相手に思いやりの気持ちを持つといいと思います„
それから授業をしながらただ時間が過ぎて行く、唯一嬉しかった事と言えば弁当に好物の白菜漬けが入っていたことくらいだ。それからは何事もなくあっという間に下校した。
登校と同じく誰とも会話することのない下校。誰もいない道を歩いていると突然背中に衝撃が走る。
「!?」
「よっ!」
振り返るとそこにいたのは幼馴染みの
「いてぇよ」
「アハハ」と笑う彼女は分かりやすく言うと美人で可愛い。さぞモテモテでリア充な生活を送っているんだろう······。
「で、何だよ」理由もなく背中に激痛をもたらしたのなら呪ってやろうか。何より彼女には得がない。
「いや、最近話してなかったしめっちゃ地味に歩いてたから声かけようと思っただけだよ?」
「あっそ」
おかげで背中が痛い。面倒くさいし理由をつけて早めに帰るか。
「······悪い。これから本買いに行くから先帰るわ」
「えっ」
「えっ?」
驚いて近藤を見ると同じように驚きの視線を向けてくる。反応が不思議で視線を動かさずにいると彼女はみるみる顔を紅潮させる。バッと視線を反らす様子が少し心配になり、帰ろうとしたがもう一度話しかける。
「お前、顔赤いぞ。大丈夫か?熱なら早く帰ったほうがいいぞ」
「ちがう!!もうっ!何でもないっ、帰る!!」そう言って身軽に走って行く姿を見ながら、「あいつ、今日変だな」と心の声を思わずもらして家に向かって歩き出した。
家に帰っても相変わらずすることのない俺は早めに宿題を終わらせた。美鈴が夕飯ができるまで待っててと言うので大人しく部屋のベッドでラノベの続きを読んでいると、唐突に睡魔に襲われた。
「仕方ない、夕飯ができるまで仮眠をとろう」
何処だ?ここ。
見るとFPSで見たことありそうな灰色の町並みが広がっていて、所々の家が燃えている。
「ウワァァァ!!」
燃えている家のほうで男の悲鳴が聞こえる。声のする方を見ると男が一心不乱に走っているが、それだけではない。
「おいおい、何で“アレ„がいるんだよ!?」
走っている男の後ろを見ると昨夜見た夢のあの、“ミイラ„のような生き物がいた。
しかし今回は自分ではなくあの男に集中しているようでこちらへ向かってくる様子はない。しかしよく目を凝らしてみるとあれはただの男ではない。
「あれ、ウチの担任の熊川じゃん」なら納得がいく。
ミイラは久しぶりに見た悪夢のせい、熊川は嫌いな道徳の授業があったせい。
それらの記憶の整理としてそれらが夢に出てきたのなら、辻褄が会う。
様子をしばらく見ているとミイラは熊川に追い付き、口を開いて食べ始める。あまりにグロテスクな光景に思わず吐き気を
そこで目が覚めた。美鈴に呼ばれて夕飯を食べていると流れているニュースに衝撃が走る。
『先ほど、春ノ
美鈴が少し声を小さくして言う。「これ、あゆくんの学校の先生じゃない?」
······知ってる。ついさっき見たところだ──奴に喰われている様子を。
なんだ······この嫌な予感······!
歩夢は持っていたコップを強く握った。
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