第2話 目覚めは最悪で意味のない授業はダルい

目が覚めたそこは見慣れている自分の部屋だった。

天井を見ている自分の息が荒いことに多少驚いたが、それ以上に驚いたのは姉──美鈴みすずがすぐ側で俺の顔を覗いていることについてだった。

「姉さん?」なんで俺の部屋にいるの?は省略する。

「あゆくん、大丈夫?」俺は美鈴に歩夢という名前を略されて『あゆくん』と呼ばれている。

「なにが?」

「『なにが?』ってあゆくん、なかなか起きてこないから部屋に来たら、すごいうなされてるんだもん!心配したよぉ~」泣きそうな顔をして抱きついてくる姉を押し戻して先ほどの夢を思い出す。

「ごめんって姉さん。久々に見た夢が悪夢なんて俺もツイてないな······」

本当に変な夢だったけど夢というものは割と起きたら忘れているものだ。などと思いながらベッドから起き上がり時計を見ると、7時30分を指している。顔を洗ってからいくよと美鈴に言って洗面所に顔を洗いに行く。歯磨きをしながら、鏡の自分と目があった。夢というのは寝ている間に脳の記憶を整理する時に見るものだと聞いたことがある。でも夢に出てきた人たちには見覚えがない······いや、実はどこかで会っていたんだろうか。

と思いつつも、たかが夢をいつまでも引きずるつもりは無いのでそれらについて考えることを放棄する。


朝食を済ませて学校へ行こうと玄関で靴を履いていると美鈴が弁当を持ってくる

「はい、お弁当。今日はあゆくんが好きな“アレ„があるよ!気をつけてね」

そう言って渡された弁当を通学に使っているリュックに入れてもう一度振り返る

「行ってきます」


学校へ着くと誰とも話さず靴を履き替え教室へ向かい、席に着いて誰とも話さずカバンに入れていたライトノベルを取り出す。別に特別ライトノベルが好きというわけだはないが、最近はよく読んでいる。かといって周囲にオタクだとか批判されるのは不快なのでブックカバーをつけている。なぜ漫画は良くてライトノベルは駄目なんだろう。


 ホームルームを終え、授業が始まる。「道徳か······」

一番嫌いな教科だ。特に先生が平和だの正義だの、いじめが何だとか、いちいち語り始めるのが腹立たしい。

「平和なんて······どこにもないのに」ボソッと口にしたその囁きに気付く人間は

この教室にはいなかった。

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