珍しい態度の……




「ただいまー!」


わたしはいつも通り学校を終えて、夜空君と二人っきりで住んでる家に帰ってくる。

いつもは高校から二人で帰るんだけど、今日は夜空君に用事があるとかで一人で帰ることになった。


「あれ?夜空君?」


返事がない。

あれ?普段ならすぐに返事が来るんだけどな?


「夜空君?」


わたしはまずリビングを見て、そこにいないことを確認する。

じゃあ、部屋にいるのかな?

わたしは階段を上がると夜空君の部屋をノックする。

すると、少し間があった後でガチャリと扉が開いた。


「あぁ、千雪?」


心なしかいつもよりトーンが低い声に、わたしは首を傾げる。

あれ?どうしたんだろ?


「うん。家に帰ってもリビングに夜空君いなかったから、どうしたのかなぁって思ったんだけど……」

「ああ、そうだよね。ごめん、今日はあんまり千雪と話したりする気分じゃないから、咲の家に行ってくれるとありがたいな。」


夜空君は一方的にそう言うと、 部屋のドアを閉めてしまう。


……え?









「ということがあって……」


あのあと、わたしは大きなショックを受けつつも、言われた通りに咲ちゃんの家にお邪魔していた。

そして、来た理由を聞かれたので、ことの経緯を説明する。


「つ、ついに嫌われちゃった!?ど、ど、どうしたらいいと思う!?」

「お、落ち着いてください千雪さん。」


でも、でも!!

夜空君に嫌われたら、わたし生きていけない!


「や、やっぱりかわいくないから!?そ、それとも家事スキルが夜空君より低いから!?」

「一回落ち着いてください!」

「で、でも……」

「大丈夫です、千雪さんは何も悪くないです。だいたい理由は分かってます。」


え?さっきの話で分かったの!?

さすが夜空君の妹!


「何?なに!?」

「たぶん、お兄ちゃんは風邪ひいてます。」


……え?

か、風邪?

どういうこと?え?風邪で?え?


「か、風邪?」

「はい、恐らく風邪です。お兄ちゃん、昔から風邪ひくと声のトーンが下がるんです。」

「じゃあ、わたしをこっちに来させたのは?」

「風邪をうつしたくなかったのかと……」


え?ほ、本当に?

本当に、わたし嫌われたわけじゃないんだよね?


……あれ?風邪?

ということは……


「咲ちゃん、ありがと!わたし夜空君を看病してくる!」

「たぶん、お兄ちゃん拒否しますよ?」

「大丈夫!夜空君には粘れば勝てる!」」

「それは千雪さんだけな気もしますけど……まぁ、お兄ちゃんは心配なので頑張ってください。」

「うん、頑張る!お邪魔しました!」


わたしはそう言うと、急いで咲ちゃんの家を出る。









「夜空君!」


わたしはそう声を出しながら夜空君の部屋に入る。

すると、ベッドに横になっていた夜空君は驚いた様子で上半身を起こす。


「ち、千雪?なんでここに……」

「隙あり!」


わたしは、抵抗される前に夜空君に接近して、額に手を当てる。

って、熱い!!完全に熱あるじゃんこれ!!


「やっぱり、咲ちゃんの言った通り!」

「いやいや、これぐらい寝とけば治るよ。それより、千雪にうつしちゃ悪いよ」

「わたしが風邪ひいたら夜空君が看病してくれるでしょ?」

「そりゃぁするけど……」

「じゃあ、いいの!ほらほら、病人には看病される義務があるんだから、大人しく寝ててよ。」


抵抗して起き上がろうとする夜空君の肩を押して、無理矢理ベッドに寝かせる。


「いやいや、僕は大丈夫だから、ね?」

「ダメ!」


そんな感じの押し問答が10分くらい続いたけど、結局わたしが押し切って看病することになった。


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