襲撃




――ピンポーン。


インターフォンが鳴り、来客を知らせてくる。

誰だろう?まだ九時なんだけど……

少し訝しみながらもモニターに写された人を確認する。


「はーい。どちら様ですか?」

『……深星くん、話がある。』

「はい?」


急に四十代くらいのおじさんが出てきたと思ったら、そんなことを言われた。

いや、おじさんって言うのも失礼か。だって、千雪のお父さんだし、邪険にもできない。


「話ですか?まあいいですけど、海外に行っていたのでは?」

『ああ、それなんだけどね~~、まとまった休みが取れたから帰ってきたのよ~~。』

「あ、春子さん。お久しぶりです。」


こっちの女性は千雪のお母さんの春子さん。

というか、このタイミングでの襲撃は予想してなかった。

って、どうして僕の家知ってるんだろう。風邪を引いた千雪を学校から家まで送った時に千雪の家には行ったけど、僕の家に招いたことはないはず……


『とりあえずお家にいれてくれないかしら。うちの娘もいるでしょう?』

「あ、はい。今行きます。」


何故だろう。顔も体型も千雪に似てるのに、あの笑顔からは悪い予感しか感じない……








ところ変わって我が家のリビング。

そこで、僕と二人は向かい合って座っていた。

隣に座る千雪もこの襲撃は予想していなかったらしく、結構動揺している。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


……千雪のお父さんから滲み出ている怒りの色。

口を開ける雰囲気じゃない。

まあ、千雪のお父さんくらいなら余裕で倒せる(物理的にも社会的にも精神的にも)から、緊張はしないんだけど。


「なあ、これ・・はどういうことか説明しろ。」

「これ、とは?」


だけどまあ、目の前の人からは敵意を感じるので、一応警戒はしておくけど。

……春子さんの方はこの状況を楽しんでるっぽいな。


「だから、なぜうちの娘がこの家に住んでいるのかと聞いている。」


その声には確かに怒気がこもっていた。

だけど、今はそこが問題じゃない。


「…………はい?」


明らかに僕とこの人との間に認識の相違があるのが重要なのだ。


「そもそも、結婚もしていない男女が一つの家に住むなど言語道断!」

「まあ、おっしゃることはわからなくもないし、それがあなたの考えだというなら別にいいんですけど、それよりも今大事なことがあると思うんですよ。」

「大事なこと?」

「はい。双方の認識をしっかりと一致させることです。確認ですが、あなたは千雪がここにいることを今日、もしくはごく最近知ったんですね?」

「ああ。それがどうした。」

「僕は千雪に対して、『両親に連絡を入れるように』と言いました。そして、しっかりと電話で説明したことも確認しています。だよね?千雪。」

「え?う、うん。確かに、お母さんに伝えたよ?」

「……どういうことだ?」


ほら、千雪のお父さんも混乱し始めた。

まあでも、これで大体の流れが読めたぞ。


これは、春子さんに嵌められたということだろう。



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