先輩、なんで抓ったの?
「ああ、紹介するね。男のほうが僕の知り合いで歌手の小海涼多。で、その隣にいる女の子が、涼多の彼女である牧原風花さんです。で、この人は学校の先輩である秋川千雪です。」
「あ、歌手仲間の人なんだね。こんにちは。秋川千雪です。」
「ど、どうも。小海涼多と言います。」
「牧原風花です。お似合いのカップルですね!」
「「え?」」
僕と席についた先輩の声が重なる。
あ、そうか。傍から見ればそう見えるのか。
「いえ。違いますよ。僕と千雪は付き合ってるわけじゃないです。って痛っ!」
何故か先輩に腕を抓られた。
そして、それを見ている二人はにやにやしている。
「あーあ。甘い歌を創るくせにこういうことには鈍いから……」
「あー。なるほど。千雪さん、頑張ってくださいね。」
その言葉を聞いた先輩は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「? 千雪、どうしたの?耳まで赤いけど、風邪?病院行く?」
「ち、違うから!大丈夫だから!」
「じゃあ良いけど、駄目そうになったら言ってね。」
「だから大丈夫から、ね?」
先輩はそう言うと、顔を上げてニコリと笑う。
そしてそれを見て今度はため息を吐く二人。
「涼君もだいぶ酷かったけど、これはアウトだね。」
「深夜はこういうやつだからな。」
なんか僕を貶す発言ばかりな気が……
「いや、それはないよ。僕が涼多より酷い?有り得ないでしょ。」
「いや、その言い方!」
「客観的に見て、今売れているアーティストランキング一位の僕と、三位の君。どっちが上?」
「深夜の才能は認めるけど!言い方!傷つくから!」
「へぇ……どうでもいい情報をありがとう。」
「酷い!」
やっぱり涼多をからかうと面白いなぁ!
「違います!」
急に意義を唱えてきたのは、牧原さんだ。
「確かに、涼君のほうが客観的に見て売れてないですし、深星さんのほうが顔もいいですし、ヘタレですし、スペック低いですけど!」
「風花、俺のHPもうないから。」
「でも!私からすれば涼君が一位ですっ!」
おお!
なにその惚気話。
お腹いっぱいです。はい。
「なるほど、確かに。そんなに必死になれるということは、牧原さんはすごく涼多のことが好きなんですね?」
「はいっ!世界で一番好きです!!!」
「え?」
牧原さんが叫ぶように言ったその言葉に、涼多が反応して顔を赤くする。
少しして自分の言ったことに気が付いた牧原さんは「わ、忘れてください!」と言いながら、真っ赤になった顔を隠しながら俯く。
「まあ、恋人同士なんですから、今までで一番の声量で近くの人に聞かれれてもいいじゃないですか。恋人同士なんだからっ!」
向かい側の二人が同時に投げてきたおしぼりを右手で払いながらそう言うと、二人は悔しそうな顔をする。
「わ、忘れてくれ……」
「うう……恥ずかしい……」
「こ、こちら、注文のパンケーキです……ご、ごゆっくりどうぞ~。」
途中で来た店員さんが優しい笑顔を浮かべていたことで、二人はまた俯いてしまった。
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