先輩、声冷たくないですか?
「夜空君、なに頼む?」
「じゃあハンバーグセットで。」
「そっかぁ……じゃあわたしはパンケーキセットにしよっと。」
先輩はそう言うと、店員さんを呼ぶベルを鳴らす。
「はい、注文をどうぞ。」
「ハンバーグセットと、パンケーキセット。あと、ドリンクバーを二人分お願いします。」
先輩が慣れた様子で注文を済ませる。
「注文慣れてるね。よく来るの?」
「うん。お母さんが料理するのめんどくさくなっちゃったときとかにね。あ、じゃあ、わたしが先に飲み物持ってくるね。」
そう言うと先輩は席を立ってドリンクバーのところに向かう。
先輩と一緒にいるのが日常になっちゃってるけどよく考えたらそれがおかしいんだよなぁ……
「深夜?」
そんな声がしたので、そちらを向くと、室内なのに帽子をかぶった男性がこちらを向いていた。
その声に聞き覚えがある僕は、思わず苦笑する。
凄い偶然もあったもんだなぁ……
「ん?涼君どうしたの?友達?」
そう言いながら男性の後ろからひょこっと顔を出したのは、黒い髪を長く伸ばした女の子。
「う、うん。そうだよ。友達の星z……じゃなくて、夜空。」
「こんにちは。深星夜空です。」
僕がそう言いながら頭を下げると、女の子も頭を下げる。
「えっと、私は涼君の彼女の、
「え?涼多の彼女なの?」
「う、うん。」
それを聞いた僕は目を見開いて男性……もとい涼多を見る。
「え?筋金入りの人見知りの涼多が彼女?冗談は画力だけにしなよ。」
「ひどくないか?」
涼多はそう言うと、僕の向かいの席に座る。
それに続いて、牧原さんも向かい側に座った。
「で、深夜は一人か?」
「ん?涼君、名前違うよ?」
「あー、深夜っていうのは歌手の時の名前で……」
「あ、なるほど。って、え?じゃあ、深星さんって星空深夜なの!?」
牧原さんは周りに聞こえない声量なのに驚いた声を出すというなかなか難しそうな技をしてのけた。
「そうですよ。でも誰かの前に立つときには変装しているので、別に顔を隠す必要もないんですよ。」
「あ、なるほど。握手してもらえますか?」
「いいですよ。」
出してきた手に答えるように、僕は右手を出す。
すると、牧原さんはその手を取ってぶんぶんと振ってくる。
「よく聴くんですよ!」
「ありがとうございます。」
隣の涼多が少し寂しそうな顔をしているのを気にしないで牧原さんは僕の手を離さない。
ふと、背筋に何故か寒気を感じ、振り返ると、飲み物を持った先輩がいた。
……気のせい……かな?
「夜空君?なんでいつの間にか人が増えてるの?」
少しいつもよりも声が冷たい気が……
気のせいだと思おう。
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