先輩、ちょっと待っててください!




「はい。できた。」

「おー!きれいにまくってあるね!やっぱり夜空君って器用だよね。」

「そう?普通な気がするけど。」

「十分器用だよ。」

「そうかな?」

「そうだよ!」

「そっか。」


こういうのって、たぶん本人は自覚がないことがほとんどだと思う。という僕の持論。


「それはいいとして先に遊んでてください。僕は会長から咲を回収しないといけないので。」

「あ、そっか。そうだよね……」


ん?なんで少し寂しそうなんだろう。

意味が解らない。

まあいいけど。


僕は海に向かった先輩とは別の方向……大翔さんと咲を背負った会長のほうへ向かう。

とはいってもそんなに遠くないんだけどね。


「会長。咲を預かりますよ。重いでしょう?」

「お兄ちゃん、女の子に重いは失礼。」

「ふふっ。夜空君って本当にデリカシーがないのにモテるんだよね。不思議だよ。」

「モテてないですから。」


大翔さんの言葉をとりあえず否定しておく。


「「「モテてると思うよ。」」」


そうしたら、何故か三人からつっこみが入った。

いや、本当にモテないんだけどなぁ……


「ま、その話題は置いておいて。咲は僕が持ちますよ。」

「お兄ちゃん……そんな物みたいな言い方しなくてもいいじゃん!」

「ごめん。僕が背負いますよって言えばいい?」

「うん。」

「深星くん……咲ちゃんにHなことしないでよ?」


咲にクレームをつけられたので訂正していると、何故か真剣な顔で会長がそんなことを言ってきた。


「そんなことしませんよ。僕を何だと思ってるんですか?」

「男の子?」

「なんで疑問形なんですか?」


僕は会長のペースがどうも苦手だ。

なんか波長(?)が合わない。


「まあ、からかうのもこの辺にするよ。はい。咲ちゃん渡す。これ以上は私の女としてのプライドが持たなそうだから。」


そう言いながら会長は自分の体のラインを見る。


あ、察し………


「じゃあ受け取ります。」

「だからどうして物扱いなの?」


咲がなんか言ったけどあえて無視することにした。

僕は咲をお姫様抱っこの形にすると、そのまま移動する。

あの二人カップルの邪魔しちゃ悪いしね。


「お兄ちゃん。私のことは放っておいていいよ。」

「ん?なんで?」

「だって、千雪さんと遊んだほうがいいと思うから。」

「ん~~。それはできないな。だって、咲だけ放っておいたら、先輩はきっと気にするだろうし、僕も咲が大事だからね。だって、かわいい妹だし。」

「そんな言い方されたら放っておいてって言いずらいじゃんか……」

「そんな言い方をしてるからね。」


僕は浮き輪を蹴りながら運び、海に浮かべる。

その浮き輪を咲に装着すれば準備完了。

浮かんでいれば手を使ってある程度動けるから、あとはもう少し深いところまで咲を運べば準備完了。


「お兄ちゃん、ありがとう。」

「別に気にしなくていいよ。一人暮らし始めてから全部お母さんに任せちゃってるから、これくらいしないと咲に忘れられちゃいそうだからね。」

「いや、忘れないし。」

「そうだといいね。」


うん。会長との会話の数百倍気が楽だ。

むしろHPが回復する気すらするし。




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