先輩、敬語禁止はつらいです!




「お兄ちゃんいつの間にこんな買い物してたの?」

「半年くらい前に買ったんだけど、言ってなかった………か。言おうと思ったら試験勉強で忙しそうだったから結局言うタイミング逃してたんだった。」


咲を車椅子に乗せながらそんな会話をする。


「よ、夜空君?なんで別荘をそんな気軽に買えちゃうの?」

「僕が『星空深夜』だからですよ。」

「『星空深夜』ってそんなお金もらってたの!?」

「千雪さん、お兄ちゃんの収入舐めない方が良いですよ。今お兄ちゃんが住んでる家も、『あ、この物件いいね。買おう!』って買っちゃってるんですから。」

「夜空君すごいんだね。」

「先輩の財布からもいくらかお金をもらってますしね。」


あ、そう言えば敬語禁止だった?

ま、何も言われないし別にいいか。


「じゃ、まずは入りましょうか。」


僕は鍵を使って門を開けると、自分の分の荷物をもって中に入る。

こういう時は僕から入らないと誰も入らないからなぁ……


玄関に着くと、僕は鍵を開けて中に入る。


「お、おじゃましまーす。」


何故か緊張した様子で先輩が入ってきて、それに続いて他の人も入ってくる。


「わぁ……夜空君すごい………」

「お兄ちゃん、本当に何買ってるの………」

「おお!」


先輩と会長は感嘆の声を、咲は呆れたような声を上げる。


玄関は白を基調として、邪魔にならない程度の調度品。城のような階段と、リビングへと続く高級感のある扉がある。

西洋風の作りなので、靴は脱がずに中に入る。


「あ、そう言えば部屋はどうしますか?男女で分けてもいいですし、各自一部屋ずつでもいいですよ。」

「「「男女で!」」」

「僕はどっちでもいいかなぁ。」


女子三人は男女。大翔さんはどっちでもいい。

で、もう一人は?


「あ、俺もどっちでもいいぜ。」

「じゃあ、男女で分けましょう。部屋に案内するのでついてきてください。」








「あれ?夜空君どうしたの?」


夜、みんなで騒いでいるところを抜け出して外で涼んでいると、先輩が後ろから声をかけてきた。


「先輩こそどうしたんですか?」

「だめだよ。敬語も先輩呼びも禁止!昼はわざとスルーしたけど、二人の時はぜったいだよ。」

「……うん。で、どうしたの?」


やっぱり敬語じゃないと慣れないな。

違和感がある。


「夜空君が見えなかったから、涼むついでに探しに。で、夜空君は?」

「………少し星を見たくなったからでs……かな?」


危ない。つい敬語を使いそうになった。


「そっかぁ……うん。確かに綺麗だもんね。」


そう言いながら先輩は僕の横に来て、テラスの手すりに体重を預ける。


暫く沈黙が続く。


「夜空君。一個聞いてもいい?」

「うん。」

「夜空君って、わたしのことどう思ってるの?」

「どう?とは?」

「色々あるじゃん。すきーとかきらいーとか迷惑だ―とか。」


ああ、そう言う感じか。

………なんだろうな。


「まあ、嫌いではないですし、好きなんだと思うよ。かわいいと思うし。」

「うーん。そうなんだけど、そうじゃないっていうか……」


何でだろう。珍しく先輩の歯切れが悪い。



「それ以上は無駄だ。」


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