第4話 目覚めれば……

正直、前世の私は良くやってたと思う。

仕事頑張って、二次元を唯一心の支えに生きていたようなものだ。


目を覚ましてぜーんぶ思い出した。


そして現実は変わらず、病室に私は横たわっている。


「……」


これからどうしよ……。


冷や汗がとめどなく流れる。


「雪!見舞いに来たぜよ!」


そこへ秋人お兄ちゃんがコンビニのビニール袋片手にやって来た。


「お前の好きなもの買うてきたが、どれが食いたい?」


中にはフルーツゼリー数個と飲み物。


「……桃がいいな…」


「桃じゃな!」


満面の笑みで頷き、いそいそと用意をする秋人お兄ちゃん。


不意に私は聞いてみた。


「お兄ちゃん、私の高校どこだっけ?」


「?『探偵学園』じゃよ。ハッ、まさか病気で記憶が!?い、医者を……」


「や、大丈夫だから!落ち着いて!」


慌て出す秋人お兄ちゃんを止め、頭の中で淡い期待が崩れる音を聴いた。


「なんじゃ、この世の終わりみたいな顔して」


いや、実際に終わりそうなんですよ……。


「ほれ、俺に話してみんしゃい」


ニッコリ笑う秋人お兄ちゃんの優しさが胸を温かくする。


「……うん、あのさ。もし、もしもだよ?物語が進む事によって、誰かの人生が変わっちゃって死んじゃったらどうする?物語を止めれないかな?」


私の質問に悩むお兄ちゃん。

イケメンなので眉間にシワを寄せてても様になる……。


「前に読んどった小説の話か?……そうじゃな、俺は物語が進みそいつの運命はどうしようもなく決まっているのは仕方ないと思う」


そう……だよね。

『佐倉雪』はこの乙女ゲームでは必ず死ぬ運命にあるんだもんね……。


「けどな、『選択肢』は変えられるじゃろ?」


……え。


思わぬ事に思考が止まる。


「物語には必ず選択しなければならない事がある。なら、間違えないようにすれば、そいつが不幸なことにはならんじゃろ」


お、お兄様ぁ!

まさに目からウロコ!


「お、お兄ちゃんありがとう!」


精一杯のお礼を込めて微笑むと、恥ずかしそうにハニカミ、頷く。


「なんやよく分からんが、お前の悩みを解決できたようじゃな」


「うん!」


「よし、それくらい元気なら来月の入学式には間に合うな!」


「え?」


「それじゃ、兄ちゃんは大学があるけ、行くぜよ」


「は、え、ちょっと待ってぇ!」


私の手はお兄ちゃんに届かず空を切った。


……まさかまだ、入学してないとは!


「また高校生をやるんかい!」


流石に恥ずかしいぞ……制服。

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