GENERATION 青と竜(ドラゴン)

第8話 【ACT〇】予期せぬ発端

 「今度という今度こそ許さん!」若き青年貴族エンヴェルは相手の胸倉を掴んで怒鳴った。「ウトガルド島に行くことは禁じられておるだろう! なのにお主はまたそこへ行き、おまけに今度は有り金全てを無くして――」

胸倉を掴まれた、青年セルゲイはため息を吐きながら、

「ごめんよ。 でもポーカーの相手が悪かったんだ、レ……何とかとかいう優男だったんだけど――すげえ相手で」

「ええい、許さん! 叔父上に今度こそ言ってやる!」

その発言を聞いた途端、セルゲイの顔色が変わった。

「え、ちょ、それは待った! 悪かったから許してくれ!」

「二度と行かぬと約束するか?」

「……」

五分ほど、たっぷり黙ってからセルゲイは言った。

「……分かったよ、約束する。 もう二度と行かないから、親父にチクるのだけは止めてくれ」

ねちねちねちねちと何日もしつこく嫌味を言われるのは、嫌であった。

「よし、信じるぞ!」

無邪気にエンヴェルは笑って――ふと表情を変えた。

「どうしたんだ?」

「呼んでおる……」

彼の眼は、既にセルゲイを見てはいない。どこか遠くを見つめていた。

海の上、ぽつんと浮かぶ小型船を発進させる。セルゲイは、その航路先にイルカの群れを見つけた。

「おい、あれ!」

「あれだ。 呼んでおったのは」

船は速度を緩めて、群れに近付いた。

――その中央には、若い男が浮かんでいた。

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