第16話 レインVSサンダー

「話?……話だと……?」


 サンダーは眉をひそめる。レインのその言葉に強い抵抗心を持っていた。


「お前と話すことなど何も無い」


「まあまあ、ちょっと付き合ってくれよ」


 レインは、今にも爆発しそうな彼の繊細な心を、ゆっくりとなだめていく。


「警察は……分かっててやっているのか?」


「……何をだ」


「プロミス社が裏でやっている事さ」


「……何の話か分からないな」


「ああ、言い方が悪かった。プロミス社が〝地下〟でやっている事さ」


「……」


 外の空が暗雲に染まっていく。月に照らされていた2人がいる広場も、照応して映り変わる。サンダーの顔も、また然り。


「どこでそれを知った……?」


 サンダーは声を荒らげる。


「サンダー。重要なのはそこじゃない。……警察も、計画を把握してるんだな……?」


 サンダーは、「ふう」と強く息をついてから、


「警察がその話を信じるとでも? まさかレイン、今回お前はその〝地下〟のことのためだけに、ここに来たというのか?」


「……そうだ」


 バヂヂヂュンッ!!


 サンダーは床に放電し、レインを威嚇する。その行動には、レインに対する怒りと、失望の念が混じっていた。


「おいおい、俺は本気だぞ? サンダー」


「そうか。本気で結構。後は署で談笑しようじゃないか……!」


 ダッ!


 サンダーが走り出す。周りの暗闇に紛れながら、レインに近付いて行く。


 バシュンッ!!


 サンダーの電撃は外れた。レインはいつの間にか、サンダーの真後ろに佇んでいた。

 外で雷鳴が轟き始める。


「もう一つ聞きたいんだが」


 背中を向けるサンダーに、レインは話を続ける。


「〝リオン〟って、知ってるか……?」


「……? 知らんな、誰だそれは」


「俺の大事な仲間さ。今、この地下に潜入している」


「……ほう、貴重な情報どうもありがとう。レイン、とうとう仲間を……見捨てたかっ!!」


 ズドドオオォォォン!!


 サンダーは振り向きざまに稲妻を走らせた。レインの声がする方へ放ったつもりが、それはまたもや外れてしまう。


「こっちだ」


 サンダーの真横へ、レインはまた一瞬にして移動していた。サンダーはまたすかさず放電する。


 シュ、バンッッ!!


 レインはサンダーの電撃を、広場にある円形テーブルを立てて盾にして防いだ。だが、それはその場しのぎにしか過ぎない。そのテーブルはあと一発、サンダーの攻撃に耐えられるか危ういほどであった。


「小癪な……」


 サンダーは、レインのその悪あがきに拍子抜けしていた。そしてまた容赦なく、その円に自分の手をかざしていく。


 バシュッ……!


 突然、サンダーの電撃が左に逸れる。サンダーは少し困惑した。それから、サンダーの電光だけが頼りなほど暗くなったその広場で、レインはテーブルの盾から抜け出して走り出した。サンダーは即座に反応して、また電撃を放つ。だが、当たらない。サンダーは明らかな異変を感じ始めた。

 レインはサンダーの周りを、円を描くように動きながら、徐々に距離を詰めていった。サンダーも反応する。反応までは、出来ている。それ以上の手応えというものを、サンダーは得ることが出来ない……。


 ザザッ!……カチャ……!


「ゲームオーバーだな、サンダー」


 レインはサンダーの背後を取り、銃口を突き付けた。サンダーはそのままゆっくりと、両手を開いて上に挙げる。


「一応聞くが、どういうトリックだ……?」


 サンダーがレインに聞く。


「……PSS……発砲音がしない銃さ。お前の電撃は全て、俺が撃った銃弾に向かって逸れていたんだよ」


「ふ……ふはは!」


 サンダーは笑った。とてもわざとらしい、乾いた笑いだった。


「あー…………正解で良かったよ」


 サンダーが挙げた両手の人差し指が曲がる。何かがその指に、引き付けられていく。


 ヒュンッ! ヒュヒュンッ!!

 バスッッッ……!!!


「……!?」


 レインに激痛が走った。

 サンダーは後ろを振り返り、レインの顔を覗く。


「私が気付かないとでも思ったか。最近甘いな、レイン」


 磁力。サンダーの電気を帯びたレインの銃弾が、磁力によって急速にサンダーの指に引き付けられた。その線上に、レインは立ってしまっていた……。


「終わりだ」


 サンダーは紫色に輝く電気玉を

 大きく振りかざした。

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