第15話 雲行き、雨行き。
レイン・ラウディ班
「……で、レイン。ここで情報漁っててもいいけどさ。そろそろ地下の方にも行くんだろ?」
社長室から見つかった様々な書類を手に取りながら、ラウディは言う。
「下にサンダーも向かってるし、俺達も地下に行って大丈夫なのか?」
レインは考える。
サンダーがもし、さっきの〝罠〟で俺達が下へ飛び降りたと思っているのなら、それはレイン達にとって少し厄介であった。そうなればきっと、地下の前の1階で、待ち伏せされるに違いない。地下に入るのは容易ではなくなった。そもそも、サンダーが居ること自体が予想外の出来事だったのだから。破茶滅茶である。もう、レイン達にとってこの任務は中断しても良いくらいだった。
レインは、決断した。
「……ラウディ。お前だけ、地下に行ってこい。今1番、スノウとリオンが危険に晒される可能性がある。守りに行って、脱出重視で地下を探索しろ。俺は……サンダーと戯れてくる」
「……!? おい、正気か!? お前、今日は戦えないんだろ? もし、捕まったりでもしたら……!」
「……」
レインは人差し指を立てて、ラウディの前に突き出した。そして、指を左右に振る。
〝俺を舐めるな。〟
ラウディはそれを見て、少し笑った。
「確かに、そうだな。レイン。俺はお前を信じるよ。……でも、上手くいく……のか? 俺だけ地下に入れることなんて……。サンダーはそれを許すのか……?」
レインはまた数秒悩んだ後、こう言った。
「おそらく……サンダーは下には行かない」
「え……?ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
リオン・スノウ班
リオン達は、プロミス社の中庭、原っぱが広がる場所に立つ。その空間は物静かで、不気味な雰囲気が漂っていた。
薄暗闇の中、スノウが歩き出す。
「ここが中庭……ちょっと待って? 地下への入口は?」
スノウが辺りを見回すが、地下への入口のようなものは見当たらない。
スノウは地面に頬を付け、そして、地面を叩いてみた。
「……響くね」
「……何だって?」
「音が下で響いてる。明らかに、この下に地下がある」
スノウはしゃがみながら、中庭の中央に歩いて行く。リオンはまだ痛む頭を抑えながら、なんとかついていった。
ガッ! ガコンッ!
「あっ! リオン開いたよー! ここだここ! ここが入口だ!」
大きな鉄板の蓋が開いた。スノウはその蓋からひょいと顔を覗かせ、リオンを手招きする。
「おー、すげえな、よく見つけたな」
「えへへー、すごいでしょ……」
途端に、スノウの顔が曇る。
「……? スノウ、どうした?」
「何か、音しなかった? ……上かな?」
リオンには聴こえていなかった。スノウが上を向くのに合わせて、リオンも上を向いてみる。静寂のオブラートに包まれたこの中庭に、不穏な音など1つも届かない。リオンはそう感じていた。
「リオン、もう1回視れる?上の様子」
「なっ……!? これ結構キツいんだぞ? もう俺の身体が持たん……」
「…! 『おじさん』!! 大事な場面だよ!? レイン達が危ないかもしんないじゃん!!」
……ああ、また呼び名が『おじさん』に戻ってる……。確かに、レインさん達にもしものことがあったら、俺も駄々こねてる場合じゃないしな……。
そう考えたリオンはもう一度天井を向き、目を凝らした。
「……!!……うっ……がああぁぁぁ!」
「リオン!」
「ふっ! ふっ! うぅっ!」
リオンの額から汗が吹き出す。目を強く瞑ってもがくのを、スノウは必死に動きを鎮めて落ち着かせる。
「リオン! 大丈夫!? 話せる!? ……何が見えた!?」
「……うぅ……! まだ、レイン達は最上階にいる……! ふぅっ! でも一人……! もう一人……!!ふぅっ! ふぅっ!!」
「……!ーーーー
……そうか…… 」
ーーーーーーーープロミス社 18階 社員休憩広場
「やっぱり来たな」
「レイン。一体なんの真似だ。今回は……」
プロミス社の外、雨が始まる。
雷雲船も、空の海の遠くで、運航を始めた。
「話がしたい……サンダー……」
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