第17話 地下

ーーーーーギィ。


ラウディは、立ち入り禁止と書かれた半開きのドアを開けた。広がる薄暗闇の芝生の中央へと、ラウディは物音立てずに進む。地下へは螺旋階段が続いていて、ラウディはそこを降りていった。ラウディの周りから地上の暗さは消えていき、次第に壁や天井の照明が、ラウディの視界を助けてくれていた。

藍色を基とした幾何学模様の壁と、長い廊下が、螺旋階段を降りた先に続いていた。如何にも、秘密の研究所、といった雰囲気が醸し出されている。

ラウディは息を殺して、リオンとスノウを捜し始めた。リオンとスノウの他にも人がいるのを、ラウディは感じ取っていた。

しばらく廊下を進むと、分かれ道が現れた。その分かれ道の先々もまた分岐しており、地下内部は地上のプロミス社とは違って複雑化されていることをラウディは察知する。


(こんなんじゃリオンとスノウを見つけられねえ! どうすれば……)


ラウディは、ハッと気付いたように無線機を手に取る。


(俺はバカか! これで連絡すればすぐに場所が分かるじゃねーか!)


無線機の電源をオンにするも、そこからは砂嵐の音しか流れなかった。益々、ラウディの不安は募っていく。焦燥感に駆られながら、ラウディはまた地下の奥へ奥へと入っていった。

ふと、進む先に人影が見えた。ラウディは身構える。ラウディは最初、プロミス社員かと警戒したが、どうもそのようではないらしい。目を凝らすと、その人影の正体はリオンとスノウであった。2人は床にしゃがみ込み、何かを覗いている。ラウディは背後から近付いて、距離が近くなってから、しゃがんで、床をコンコンと叩いた。

スノウが過敏に反応した。少し遅れて、リオンも後ろを振り返る。リオンは何だかやつれている様子だった。


「お前ら、何してるんだ? ここで」


ラウディが、小声で聞く。


「なんだ、ラウディか……」


スノウの強ばっていた顔がほころぶ。


「ちょっと、これ見て」


スノウ達はこの廊下から、ある一つの部屋を覗いていた。ドアに窓が張ってあり、外から簡単に中の様子を見ることが出来ていた。

ラウディもその部屋を覗いてみる。そこは大きい広間で、大勢の科学者が入り混じっていた。ワラワラと広間を右往左往し、夜中になった今でも何やら仕事をしているようだった。その仕事が、何を中心に回っているのか、広間の中央にある禍々しい球体を見れば容易に想像はつくのであった。


「もしかして、ここが……?」


「多分、プロミス社の計画が進められてる場所なんだろうね……」


世界を滅亡させるという計画の信憑性が、ラウディ達の中で一気に高まっていた。広い地下の、ある広間で密密と仕事をしている人達はラウディ達の目に異常に映り、科学者の統一された髪型も不気味さを感じる程である。この人たちが世界を滅亡させようとしていると言われても、やっぱりね、と誰もが言うのだろう。


パチ……カツ、カツ、カツ……パチ


ラウディに不穏な音が聞こえた。


「足音……か?」


「え?」


「誰か来る! 逃げるぞ!」


そう言いラウディは、リオンとスノウの手を取り、今まで通ってきた廊下へと走った。もう、気付かれても仕方ない、とラウディは考えた。廊下を一直線に走っていく。後ろを一瞬確認したラウディだったが、足音の正体はまだ現れてない。道を曲がり、ラウディにはもうその正体を突き止めることは出来なくなった。


「ハァ……! 外に出るぞ!! もうこの作戦は滅茶苦茶だ!」


「滅茶苦茶!?どうして!」


ラウディの発した〝滅茶苦茶〟という言葉に、スノウは驚きを隠せない。


「順調じゃなかったの!?」


「……ああ、邪魔が入った。警察に知られていたんだ。この計画が。俺らがプロミス社に侵入すること自体がな……!」


それ以上、スノウは言葉が出なかった。今までレインと一緒に仕事をしてきて、失敗らしい失敗は無かったのに、どうして、とスノウは思った。

そして、やがて三人は、また地上に戻っていく……。

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