第11話 闇を一瞥、刻は来る。

 ーーーーGods guidanceからの帰り道



「レインさん。何で今日、僕のことを誘ったんですか?」


  レインは歩きながら、少し間を置いて、ゆっくりと答える。


「もっと、お前に現実を見てもらいたい。俺の仲間と、社会に……リオンはそろそろ触れていくべきだ。お前だけじゃない。サニもそうだ。……ずっと、俺の元にいることは無理なんだ」


  リオンの足が遅くなる。


「自立しろ、ってことですか?」


「簡潔に言えばそうだ。お前は一度、社会に出てた身だが、経験が足りない。色々な事を知って、もっと〝自分〟の目で、世界を嘱目するべきだ。それと……このままだと、もっとお前達を危険にさらすことになる。俺の近くにいる人たちを、世界はとても許しちゃあくれないんだ。



 ただまあ、俺が一番許さないんだけどな」


  リオンは、自分の魂の奥底が冷えるような、燃えるような、レインの葛藤と混沌に包まれた怒りを受け取った。リオンのまだ知らない、レインの心の深淵の一片が、その最後の一言に潜んでいる。


  リオンは、そんな気がしたーーーー。




  別日、ある一軒家にて。

 

「はい、レインちゃん、頼まれてたモノ」


「ああ、助かる」


  ----レインは今、ある一人のパートナーの家にいる。主婦の家。そのパートナーはとてもふくよかな女性で、仕事は主に物資の入手をこなしている。名前は恭子。年齢は40代前半ぐらいである。

  レインは、恭子から渡された銃をまじまじと見る。


「PSSを使うなんて、今回はよっぽど重要な任務なのね?」


  恭子が聞いた。レインは、「ああ」と答えて頷く。

  PSS。約1000年ほど前に、ソ連で開発されたハンドガン。特殊な弾薬を使っているため、発砲音がほとんどしない。暗殺や、極秘任務などに使われていた。現代の裏社会でも、愛されている銃だ。


「今度、恭子にも資料を送っておく。何かあったら、連絡するから」


「分かったわ」


  その恭子の倉庫に、レインがカチャカチャ銃をいじる音だけが響く。

  恭子が話を切り出した。


「あの子達にも、いずれ真実を伝えるの?」


  レインの手が止まる。


「伝えるかもしれない。タイミングを見計らって」


  そう答えて、レインの手はまた動き始める。銃と弾薬を、自分のリュックに詰めていく。


「あまり……ショックを与えないようにしてね……。あの子たち、あなたのことがよっぽど好きみたいだから」


「……じゃあ、また。」


  レインは話を断ち切った。リュックを背負い、その部屋を去ろうとする。


「次は、私の子供も弟子にしてほしいわ、なんて」


  レインは振り向かずに、


「あなたの息子は勘弁してくれ、もう十分立派だろ?」


  と返し、部屋を出たーーーー。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 プルルルルルル

 ガチャ


 「もしもし~?」


 「スノウ、俺だ。レインだ」


 「わあ! レイン! 久し振りだね! どうしたの? 急に電話なんかして」


 「スノウ、お前にも、今度の任務に出て欲しい。例の、プロミス社についての任務だ……」


 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 5日後ーーーー

 

 PM 11:00

 プロミス社侵入作戦 始動。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る