夢占蜂呪

@Ophidian

悪夢


 何かが振動するような音がする。

 ブーン、と低い音を響かせ、それが近づいてくる。

 槍を持った兵士達。不快な音を響かせ、無数の兵士が私を取り囲む。

 目を塞がれ、視界は暗闇に覆われる。

 彼らは私をどこかへと連れていく。


 助けて。


 気が付くと私は宙に浮かんでいた。周りに兵士はおらず、もう音はしない。

 私は地上よりはるかに高い場所に浮いているらしく、目下に山などが見える。なんとなく見覚えがあり、私の実家の辺りだと思った。

 不思議と不安は感じない。

 穏やかな気持ちで辺りを眺めることができた。


 ふと、誰かの視線を感じて振り返る。

 黒い着物を着た子供が私と同じ高さに浮いている。少女だったが、線の細い体型、大きな目、長い髪ははどことなくお母さんに似ていた。

 その子は悲しそうな顔をして私を見つめていた。私はどうしていいのかわからず戸惑った。

 彼女はただ私を見つめていた。

 やがて少女の顔が変化し始める。彼女の顔が少女から大人の女へ、そして徐々に皺ができていく。髪には白いものが混ざり始める。

 早送りの映像を見せられているように、目の前で少女が急速に老いていく。

 その変化にも関わらず、彼女の目は私を捉えたままだ。


 自分の手に違和感を感じた。

 私の手は細く痩せて枯木のようになっていく。

 脇に垂れる自分の髪の毛が徐々に白くなっていくのが見える。

 私もこの少女のように急速に老化していることを悟った。

 私の体が取り返しのつかない状態へと変化している。


 誰か!助けて!


 目の前の老婆は、じっと私を見つめていた。




 起きると自分の部屋だった。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。頭と背中にじっとり不快な汗が張り付いていた。

「また、この夢・・・」

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