第11話 消失

「どう?何か思い出した」

花瓶のイチイの枝をいじりながら木乃は聞いてきた。見ているとどんどん実が出来ていく。

「ああ」  「じゃあ思い出した事を言ってごらん。」

「あたしの名前は、大賀刻。5歳に記來おばさんがみんなに秘密で孤児院に炎樹と匿われるまで『百鬼夜行』に居た。コードネームは”座敷童子”時を操る能力」

「俺たちと俺らの担当はわかるか」

雷が心配そうに聞いてきた。

「慶塚雷”雷獣”電気を操る。空韻恵土”山彦”大地を操る。ワーカホリック(拷問中毒者)」  「酷い」

「波内氷華”雪女”氷を操る。波内水愛”猫又”水を操る。李沢薬”毒蜘蛛”毒を操る。美しい暗殺者たち」  「よくわかってるじゃないか」  「嬉しいなあ」

「う、美しいってそ、そんな」  「氷華は綺麗だよ」

風輝が微笑んで言った。よく恥ずかしげもなく言えたな。尊敬するよ

「う、え、そ、あ」  可愛い。

「お前ら外でやれよ な?」  瞬間が扉を指して言った。

「大賀瞬間”犬神”空間を操る。七瀬木乃”夜雀”草木を操る。七瀬闇”温羅”闇を操る。陸田風輝”鎌鼬”風を操る。ハッキング担当」 「そうそう」

「利安炎樹”火車”炎を操る。…それと」なんでだろ

”あの子”のことが思い出せない。

「…思い出せないのね。」  「…」

記來おばさんが引き出しの中から何か取り出した。

勿忘草の栞だ。裏にプリクラが貼ってある。

『Best friends forever 亜里素+刻 』そこにはあたしとあの子が肩を組んで並んでいた。二人とも笑顔だ。

「あの子が握っていたのよ。」  「’私を忘れないで’か」

「’真実の愛’’真実の恋’でもある」  木乃が悲しそうに言った。

「あの子は君のことが大好きだったよ。」

「そっか。そっか…」

あたしは静かに泣いた。

親友を亡くした事がかなしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る