第10話 行かないで

「データ取ったよ。」  「よしここから出るぞ」  「イエッサー」

「サーと呼ぶなよ」  「はいマダム」  「マダムも止めろ」  「は〜い」

あたしと”あの子”は山奥の研究所のデータベースに侵入していた。

ここは生物兵器や化学兵器を研究していて、記來おばさん(ボス)にデータを取ってこいとお使いを頼まれた。礼儀だから一応予告状を出したけどホントに”ありがたいお出迎え”が来てくれるとは思わなかった。おかげであたり一面に血の海だ。まあこいつらは世界征服とか考えているからいいんだよね。

「まったく汚れちまったな。洗ってやるから一緒に風呂入ろ」

「うん」あの子はあたしの髪を触りながら言った。その髪には乾いた血がこびりついていた。”あの子”はなぜかあたし以外には冷たく当たる。私は妹にそっくりだから優しいそうで。


ダンダンダン 

突然”あの子”はあたしの後ろをセミオートの散弾銃で撃った。どさっと何かが落ちる音。後ろを見ると頭が半分欠けた研究員が38口径を持って倒れていた。壁には銃痕が三つ分と血と脳漿が混じった液体と脳が少々。

「気をぬくな。」「にしても生きてたとはね。念のためにもっ回撃っとく?」「ああ頼む」

データベースに倒れている死体の頭に50口径拳銃で数弾ずつ打ち込む。耳に仕込んだスピーカーから炎樹の声が聞こえた。

『お前ら無事か〜』「ああ」『よし。データは?』「取れたよ。」

『ほんじゃ退散しますか』「了〜解〜。」


『あいつらがサツ呼んでなくて良かったな。呼んでた場合お前らだけで相手できてたかどうか』

「かなり真っ黒だし、呼ばないと言う瞬間の予想当たったね」

「…傭兵ならどうだ」  『はあ?』

”あの子”の言う通りだった。

ここは研究所の敷地のあたりが見渡せる所。そして周りは傭兵に囲まれていた。

『悪りー。よく見てなかった』  「誰でも失敗することはあるよ」

「甘やかし過ぎだろ。」  「援護をお願いね」  『本当にごめん』


その後の事はあまり憶えていない。途中で炎樹が参戦して、相手の弾を避けて撃って避けて撃って…気が付いたら全員倒していた。

立っているのはあたしと炎樹と”あの子”だけが立っていた。

「なんとかなったみたいだな」  「どこがだよバーカ」  「まあまあ」


こっちだー。

まだまだ傭兵がいそうだったから近くの森に逃げ込んだ。


その後は…まあ、夢の通りになった。

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