第3話 お出かけ
「この女ァ!」
後の四人が殴りかかって来た。
多分バカなことをしたって気づくのにそんなに時間かからなかったと思う。
みんなあたしに向かって拳を振り被りながら走り寄って来た。(蹴ると言う選択肢あるよね)今回は普通の速さだ。でもこいつらどう動くのかバレバレ。
最初の拳を避ける、すると次のが来る。そうやって次々飛んで来る拳を避けながら腹や膝に攻撃。3分後にはあたし以外立っている者はいなかった。
「やっぱ強えな。」
隣に座ると炎樹が苦笑してた。濡らしたハンカチで顔を拭く。鼻血はもう止まってた。デニッシュを受け取って食べた。
「崩れてもうまい。さすがオバチャン」
「髪、結ばねーの?」
「あらしがひゃっへもふぉはひふひゃふはへはふらはほふは(あたしがやってもおかしくなるだけだから頼むわ)」
「ちゃんと飲み込んでから喋りなさい。まあ光栄でございますよ、お嬢様」
芝居掛かった口調で一礼すると背後に回って髪をとかし始めた。良かった。いつもの笑顔だ。
炎樹に髪を結ばせると見違えるように綺麗になる事は孤児院では有名な事だ。おまけに顔の形はいいからモテる。
つまり 炎樹は有名人→おまけにイケメン(さすがハーフ)→だからモテる→男子に嫉妬されて虐められる→あたしが助ける→あたしの圧勝→炎樹に懐かれる→あたしも男子に恨まれる→腹いせに炎樹が虐められる。思いっきり負の連鎖だ。
「できた。ハーフアップのロープ編みをリボンで結んでコテで外ハネにしてみたんだ。」
「おお、うまいうまい。さすが蓮島学院高等部三年生」
さっぱり意味がわからん。でも炎樹が掲げた鏡に移る髪型はとても可愛かった。
ここで蓮島学院?って思ったやつもいるだろう。蓮島学院はこの近くにある無駄にでっかい学校で小学校から大学までおまけに寮もあるんだからすごい。この学校は通常授業をおこなうのは他の学校と変わらない。でもそれは午前中だけで、5・6時間目は、部活に使ういろんな部活や同好会がカテゴリーごとにあってそれぞれすごい。例えば、美術・スポーツ(陸上・水泳・格闘系)・音楽。こういう大会に出る部活では必ず優勝したりするんだ。炎樹は今年の春、高等部のヘアメイク部の三年生、あたしはもちろん剣道部と演劇部、そしてできれば映画研究会に入る新入生だ。
この後授業に使う物を買いに炎樹と出掛けんだ。
「ちゃんと財布とカバン持ったな。」
「おう!」 「それじゃ」
『行って来ます』
今日は快晴で雲一つなかった。買い物日和。
だから、まさかあんなことになるとは思わなかった。
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