第2話 おかしな事
ここであたしの自己紹介をしよう。あたしは大賀刻。一ヶ月前に15になった。
あたしは5つの誕生日に毛布に包まれて、孤児院の前に置き去りにされた。
それになぜか記憶喪失なのか親の顔すら覚えていない。
じゃあ何故誕生日と名前を知っているかって?
孤児院の先生によると毛布といっしょに名前が彫ってあるペンダントと
『誕生日:1月1日〇〇✖︎✖︎年』と書かれたメモが置いてあったらしい。
全速力で走っていると食堂の扉が見えてきた。なんだか騒がしい。嫌な予感がする。中に入ると予感は的中していた。
「いい加減そいつをくれよ」 「…い、嫌だ」 「ああ?」
図体ばかりデカイやつらが5人、床に倒れてうつ伏せの炎樹を囲んでいた。その中の一人が炎樹の背中を踏んでいた。
炎樹はあたしが孤児院に来た二日後に来たあたしより二つ年上の子だ。一週間以内に二人も来たことは後にも先にもあたし達だけだったようだ。炎樹はハーフなのか髪は赤い。
あたしが自分の銀髪で悩まなくなったのも炎樹が綺麗だと言ってくれたからで…
炎樹は音楽が好きでこの間おこずかいで買ったヘッドホンを誕生日プレゼントにあげたらすっごく喜んでくれた。その時の炎樹の笑顔が可愛くって…ごほん
と、とにかくあたしにとって炎樹は大事な幼馴染みなんだ。
炎樹が足蹴にされているのを見た瞬間に頭の中でブチッと何かが切れた音がした。
「おい」
自分の声が意外と低くてよく響くことに気がついた。
シンとして急に周りがよく見えるようになった。他の子達は小さい子をかばうように隅に避難してテーブルでバリケードを作っていた。食堂の真ん中だけスペースが空いていて炎樹はその真ん中だ。
一歩歩くと目の前にいた子が道を開けた。あたしの顔を見て真っ青になっている。バリケードを乗り越える。でも、あの子以外誰も動こうとしない。むしろ動いたら殺されそうだと思っているようだ。そんなつもりは無いのに。
炎樹がピクリと動いた。顔だけこっちを向くと目の下にアザができていた。唇からも鼻からも血が出ている。
見ていてゾワっとした。少し興奮する。炎樹がいじめられるといつもそう。炎樹が殴られるのは嫌なのに。なんでだろ。
「またテメェか」
炎樹を踏んでいるヤツがこっちを向いた。後ろを指差すと炎樹はわかってくれたみたい。足の間をすり抜けて走って来た。何か握っている。後ろに回り込んで座り込んだ。よく見たらデニッシュを二個握っていた。とっておいてくれたんだ。
あいつらは炎樹を殴った。アイツラハ炎樹ヲナグッタ。アイツラハエンジュヲナグッタ
「そいつも毎回お前に守ってもらって情けねぇな。」
アイツラハエンジュヲナグッタエンジュヲナグッタ エンジュヲナグッタ エンジュヲナグッタナグッタ
「そいつとじゃなくて俺らと遊ぼうぜ。可愛がってやるからよ」
ヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモ
「おい、聞いてんのか」
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
「おい」
「コロス」
次の瞬間殺意が爆発した。肩に置かれた手を掴んで捻りながら後ろにふりかえる。顔面に向かって拳を一発放って何かがおかしいと思った。
確かに鼻を殴った。にしても倒れるには時間がかかり過ぎじゃないか。背後にのけぞってはいるけどスローモーションみたいに遅い。試しに足を払って見たあまり力を入れたわけじゃないのにあっけなく両足は地面を離れた。
瞬きした途端に元に戻った。背中を撃って相手は目を白黒させてる。
「なっ」
時計を見た。さっきから10秒しか経っていない。
1分も経っていたように思えたのに。
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