銃声がなった

KAWAIYUKI

第1話 大事なあの子 4/5

「こっちだよ速く!」

あたしは息を切らしながら”あの子”と走っている。そっち行っちゃダメ

「速くしないと捕まっちゃう」

そっち行ったら死んじゃう。

道路が見えてきた。    嗚呼

「ここまで連中はこないだろ」

それを渡っちゃダメ。

「速く渡ってみんなと合流し…」

「危ない!!」

押しのけられたまだ半分しか渡っていないのに…

私は道路の反対側まで飛ばされた。

振り返ると”あの子”がホッとした顔で立っていた。

次の瞬間…トラックが”あの子”に突っ込んできた。”あの子”の細い身体が飛んだ。赤い液体が辺りに飛び散った。少し顔にかかったけどショックで気にならない。あたり一面血の海だ。トラックも何事も無かったかのように走り去った。”あの子”を見た。身体は血まみれだったけど何処か美しかった。突然闇に包まれた。


あたりは完全な闇だ。光も音も何も無い。

あたししかいない。独りぼっちだ。独リボッチダ。ヒトリボッチダ。

「…っ。」

怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…


「刻、起きろ!」

「…っはぁ、はぁ、はぁ」

またおなじ夢。もう何回目だろう。

「また夢を見たのか」

炎樹が上から覗き込んで額の汗を拭いてくれた。

「また”あの子”がトラックに引かれる夢。でも”誰”だか分からない」

炎樹がまたあの顔をした。この話をするたびにする顔。申し訳ないと思う顔だ。

「炎樹?」

はっとするとまた笑顔になった。ほんわかとした笑顔。あたしが大好きな顔だ。

「速く食堂に行こうぜ。速くしねーとみんなにお菓子取られちまう」

「やっば。急がないと。先行ってて」

急いで着替えて御守りのペンダントを手に取る。

「今日も1日いいことがありますように」

首にかけて食堂に急いだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る